ジャーナリストの山岡鉄秀氏が、松田政策研究所のニコニコ生配信で、今回の参議院選挙を「国民運動」として発展した参政党の躍進と「戦後レジーム」の終着点に達した自民党の現状という視点から分析した。参政党の躍進を「民主主義の新しい形態」と評価し、その背景には地道な努力と「日本をなんとかしたい」という党員の純粋な動機があると指摘した。
参政党の歴史的躍進と「国民運動」
今回の参議院選挙は、日本の政治における歴史的なターニングポイントとして捉えられていると、ジャーナリストの山岡鉄秀氏は語る。
参政党は当初「一つの国民運動」として始まり、日本の自立と日本に対する誇りを取り戻すことを目指していたという。今回の選挙で14人の当選者を出し、国会議員18人の勢力となり、「草の根で始まったものが永田町を動かしていく」という「民主主義の新しい形態」を実現しつつあると山岡氏は評価する。
「日本人ファースト」のスローガンが多くの国民の胸に響き、国民の不安や「日本を軸にした政治」への期待が高まったことが、躍進の要因の一つと見ている。参政党は理念や政策を早くから打ち出し、基本をぶらさずに活動してきた。特に地方に力を入れ、280以上の支部と150人の地方議員を擁し、全ての選挙区に候補者を立てたことが、躍進の大きな要因となったという。「地方が選択肢をちゃんと与えた」「地道な努力の積み重ねが大きい」と評価する。
さらに、「日本をなんとかしたい」「日本は危ない」という危機感から動く党員の「純粋さ」が周囲に伝わり、有権者の心に響いたと分析する。また、若者の政治的関心の高まりにもつながった可能性が指摘された。
自民党の現状と「戦後政治の終焉」
自民党の現状は「戦後レジーム」の一つの終着点に達したと山岡氏は分析する。今回の敗北にもかかわらず、石破氏が続投を表明し、麻生氏もこれを止められなかったことは、自民党が「自浄作用を失ったに等しい」状況であることを示しているという。「機能しなくなった臓器」あるいは「有毒な産業廃棄物状態」と比喩され、国に害を及ぼす存在となっていると警鐘を鳴らす。
自民党はこれまで冷戦構造の中で「戦後アメリカのレジーム」を維持する役割を担ってきた。しかし、安倍氏の死後、特に岸田政権はバイデン民主党に追随し、同時に中国にも平身低頭する「全方向土下座外交」を展開したことで、世界の潮流(トランプ政権以降の右旋回)とは逆の方向に行っており、もはや自力で元の保守路線に戻ることができない状態であると指摘する。
安倍氏の死後、安倍派(清和会)が徹底的に潰され、力のある保守的な人物が排除されたことで、自民党内の保守的な要素が破壊され、左へ大きくシフトしてしまったという。本来であれば表に出ないような石破茂、村上誠一郎、河野太郎といった人物が「自民党内の産業廃棄物であったはずの人が中心に来てしまった」と述べた。
自民党は「分配型政治をやって全ての国民の要望に答えるデパート」のようになり、「一体どんな国家を目指すのか」というところが曖昧になっていると山岡氏は語る。元々自主憲法制定のために作られた党であるにもかかわらず、その方向性が見えなくなっていることが指摘される。今回の選挙では、国民が「メディアに騙されてるばかりではなくて自分たちの頭で考え始めてる」ことが明らかになったという。自民党政権が行き詰まっていることや、世界の流れと逆行していることを意識し始めている国民が3〜4割に達していると推測する。
公明党の勢力低下と「戦後政治の終わり」
公明党も勢力を弱めており、これもまた「戦後政治の終わり」を示す兆候と山岡氏は見る。創価学会員の一部が公明党への支持をやめたことが、議席減少の要因の一つと推測された。「外面切り替え」問題、特に外国人に対する国際運転免許証切り替えの緩和措置が「中国に忖度したとしか言いようがない」と批判され、これが国民の不満を増大させたと指摘する。
これは「行き過ぎた中国優遇」として、創価学会内部からの反発も生んでいるという。自民党と公明党の連立政権が「野合」と形容され、その終焉が近づいていることが明確になったと述べた。
参政党躍進の「ラッキー」な側面と今後の課題
参政党の躍進には、地道な努力だけでなく、いくつかの「ラッキー」な要素も重なったと山岡氏は分析する。石破政権の「信じられない失態」が、有権者の不満を高めたことや、玉木雄一郎氏率いる国民民主党が「豪快なオウンゴールシュート」を連続して放ち、有権者が「本当に居場所を失った」状況になったことなどが挙げられた。
「外国人問題」が急速に焦点化し、多くの国民が「おかしいな」「日本が日本でなくなってる場所がどんどん増えている」と感じ始めたことも、参政党がさらに支持を拡大する要因となった。特に、外国人問題が顕著な川口市での得票が最高だったことが強調された。
選挙直前に現職議員が5人になったことで、テレビの討論番組に呼ばれる機会が増え、これまでネットを使わない層、特に地方の有権者に参政党の存在が届くきっかけとなったという。梅村みずほ氏の加入も絶妙なタイミングだったと評された。
参政党はこれまで国政選挙の小選挙区や地方選挙での当選が困難とされてきたが、今回は地方選挙で7人の当選者を出した。茨城や東京ブロックでの躍進も特筆すべき点として挙げられ、これにより「国政政党の確固たる位置」を確立し、「盤石たる基盤」を築いたと評価した。
今後の課題として、「極右政党」レッテル貼りの懸念を指摘。参政党はドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」と同様に「極右政党」と位置づけられ、主要政党からの「防火壁(ファイアウォール)」構築の対象となる可能性が指摘されている。メディアも既にそのような「レッテル貼り」を行っているという。
参政党の主張は「常識的」であり、「排外主義でもなんでもない」と反論する一方で、意図が十分に伝わっていない部分もあるため、今後は発言機会を増やし、政策の真意を正確に説明することで、国民の理解を深めることが重要課題となると山岡氏は語る。これは「世論にどれだけ支持されているか」に直結するため、非常に重要である。
国会議員18人という規模になったことで、より成熟した組織運営への移行が求められていると指摘。現状では神谷氏に攻撃が集中しているが、今後は集団指導体制を導入し、役割分担を進めることで、攻撃を分散し、組織としての信頼感を高める必要があると提言する。新しい議員が多数当選した今、この課題に取り組むことが「飛躍の地盤」となるという。今後、参政党の議員一人ひとりが「めちゃくちゃ攻撃される」ことが予想されており、それに対する「覚悟」が求められている。
今回の政治状況は、本来であれば冷戦構造が終結した1990年代前半に起きるべきだった転換が、日米安保に固執することで遅れてしまった結果であると山岡氏は指摘する。アメリカが大きく変化しているにもかかわらず、その流れを掴めずに自民党が「自ら終焉を迎えた」ことが、今回の選挙ではっきりと見えた、と総括した。
山岡鉄秀氏の分析からは、今回の参議院選挙が日本の政治における大きな転換点であったことが強く感じられる。参政党の躍進は、国民の既存政治への不満と、日本本来の姿を取り戻したいという切実な願いが結実した「国民運動」の成果だと言えるだろう。一方で、自民党は「戦後レジーム」の終着点に達し、その「機能不全」が露呈した。公明党の勢力低下もまた、戦後政治の終焉を告げる兆候なのかもしれない。参政党が今後直面する「極右政党」レッテル貼りの困難や、組織運営の成熟化といった課題を乗り越え、真に国民の声を反映する勢力となることができるか、日本の政治の未来は、まさにこれからが正念場となるだろう。
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