ジャーナリストの須田慎一郎氏が、山梨の参議院選挙区で起こっている異変について解説する。長年保守王国として知られてきた山梨で、国民民主党の候補者が自民党候補を追い抜く勢いを見せている背景には、国民民主党の一貫した減税政策の訴えと、自民党の組織の緩みがあると指摘する。
山梨に起こる「大逆転」の予兆
山梨の参議院選挙区で、異例の事態が進行している。長らく「保守王国」と呼ばれてきたこの地で、国民民主党の候補者である元山梨県知事の後藤さんが「大逆転の勢いで当選確実になりつつある状況」だと、ジャーナリストの須田慎一郎氏は語る。国民民主党の榛葉幹事長がこの状況を受けて山梨入りし、後藤候補の「背中を押している」という。
この異変の背景には、自民党の組織の「緩み」があると須田氏は分析する。自民党は議員を「締め付けているにもかかわらず、横一線あるいは国民民主党候補が追い抜いている状況」だという。これは、「自民党の組織自体が崩壊の危機に瀕している」と見ることができる、と須田氏は警鐘を鳴らす。
国民民主党の「手取りを増やす」訴え
国民民主党が支持を集める要因として、須田氏はその「手取りを増やすという一貫した訴え」を挙げる。国民の所得が平均2.7%増えた一方で、国の財務省には「払い過ぎた税金が去年1年間で7兆円」あるという現状を提示し、国民の負担軽減の必要性を訴えているのだ。
特に、ガソリン税の暫定税率に焦点を当てている。ガソリン税の53.8円のうち「25.1円は51年間も暫定的に取られている税金で、現在では何に使われているか不明な一般財源となっています」と指摘。国民民主党は、この25.1円の暫定税率を7月1日から下げる法案を衆議院で可決させた。
しかし、自民党はこの法案に反対した。その理由として「6月20日に通ったら7月1日まで10日間しかなく、この期間でガソリンを下げたらガソリンスタンドや行政がパニックになる」と説明したという。これに対し須田氏は、自民党が昨年12月にガソリン税の暫定税率の見直しを約束しておきながら、「この半年間何もやっていなかった」と批判した。
また、自民党が反対したもう一つの理由として、「ガソリン税の25.1%暫定税率を減税すると国に税収が8000億円減る」ことを挙げている。しかし、選挙前に配布される給付金が3兆4000億円に上ることから、国民民主党は「一回限りの給付金ではなく、継続的な経済政策が重要」だと主張していると、須田氏は解説した。
国民民主党の成長戦略「新・3本の矢」
国民民主党は、日本を元気にするための「3本の矢」を掲げている。
- 減税で国民の「手取りを増やし、消費を回す」こと。
- 消費が回れば企業は投資を行うため、「設備投資への減税で民間投資を増やす」こと。これにより、日本の名目GDPを1000兆円にすることを目標としている。
- 「新しい技術革新で新しいメイドインジャパンの製品を作る」こと。
これらの政策を具体的に掲げ、国民の支持を得ようとしている。
山梨選挙区が持つ意味
須田氏は、山梨の「一人区で国民民主党が勝利することは、大きな意味を持つ」と強調する。自民党でも立憲共産党でもない国民民主党が議席を獲得することは、「今回の選挙の位置づけを示すもの」となるからだ。
自民党の戦略性の低さにも言及し、減税案を「数の力で押し潰しておきながら、選挙戦でピンチに陥ると慌ててガソリンの暫定税率廃止を検討するような姿勢」は、国民には響かないだろうと指摘した。
もし鹿児島選挙区でも自民党が敗れるようなことがあれば、それは「政権にとって責任問題が生じ、橋本内閣のようになる可能性も指摘されている」と述べ、今回の選挙結果が政局に大きな影響を与える可能性を示唆した。
山梨選挙区で顕在化しつつある自民党の組織の緩みと、国民民主党の減税政策が国民の支持を得ている構図は、今後の日本政治の動向を占う上で非常に重要なポイントとなるだろう。はたして、この山梨の波乱は全国へと波及するだろうか。
コメント