VisualPolitikが分析する、ウクライナ戦争における中国の「両面作戦」

国際政治

VisualPolitikが、YouTube動画で、ロシアによるウクライナ侵攻の陰で、中国がいかに「大きな利益を得ている第三の主要なプレーヤー」であるかを詳細に分析した。平和を唱えながら裏でロシアを支援する中国の「両面作戦」と、そこから得られる3つの勝利について解説する。

「戦争」と認めない中国のしたたかな戦略

中国は、ウクライナで起こっていることを公式には「戦争」とは呼ばず、「ウクライナ問題」または「ウクライナ危機」と表現する。中国共産党の公式見解は平和を提唱しているように聞こえるが、その実態は大きく乖離しているとVisualPolitikは指摘する。

中国は、この戦争がすぐに終わることを望んでいない。実際、EUに対して「ロシアがウクライナ戦争に負けることを望んでいない」と伝えている。

その背景には、外交的には「平和的な仲介者」のイメージを保ちながらも、ロシアを崩壊させない程度に支援するという「両面作戦」がある。中国は、この戦争を通じて、戦略的、経済的、イデオロギー的な3つの面で勝利を収めているのだ。

1. 戦略的優位性:米国を欧州に釘付けにする

中国がウクライナ戦争から得ている最大の戦略的利益は、米国を欧州に釘付けにすることだ。米国がウクライナ問題に時間と資金を費やすことで、中国は「インド太平洋地域での中国封じ込めへの注意がそらされ」ることを狙っている。ウクライナに費やされる資金は、アジア太平洋地域への米軍増強には使われない。

また、中国はウクライナでの戦争を「大規模な実弾ラボ」として利用している。将来の台湾紛争に備え、サイバー攻撃、ドローン、兵站の重要性、経済制裁の影響と回避方法などを研究しているのだ。

さらに、戦争が長引くほどロシアは弱体化し、中国にとって「従順なパートナー」となり、中央アジアでの競争相手ではなくなる。モスクワが中国の輸入と買い手に依存すれば、中国はロシアの行動に影響力を持つことができる。

2. 経済的利益:安価な資源と市場の独占

経済面では、中国はロシアとの貿易を急増させ、大きな利益を得ている。2023年には前年比26%増加し、2024年には過去最高を記録した。

欧州がロシアの石油・ガス輸入を停止したため、中国は「大幅な割引価格で石油を購入」できている。これにより、中国の産業競争力はさらに高まっている。

また、2024年にはロシアの全輸入の38%が中国からであり、侵攻前の月間40億ドル未満から90億ドル以上へと輸出額が急増した。中国は、車両、家電、半導体、そして軍事転用可能な「デュアルユース品を含むあらゆるもの」をロシアに供給し、欧州に代わる主要サプライヤーとしての地位を確立した。

3. イデオロギー的勝利:西側秩序の衰退と権威主義モデルの台頭

中国にとって、この紛争は西側自由主義秩序が衰退し、「権威主義的モデルが21世紀をリードする実行可能な代替案」であることを証明する機会だ。

中国は、西側の制裁に耐え、中国の支援によって立ち直るロシアの姿を見せることで、権威主義的な国々に対し「中国が頼りになる存在」であることを示している。また、グローバルサウス諸国に対し、人権について説教することなく経済援助を提供することで、中国の権威主義モデルの優位性をアピールしている。

戦争は、中国が外部の脅威を理由に「国民の忠誠心を高め、軍事支出を増やし、人民解放軍の近代化を加速させる」ことを正当化する機会も与えている。

中国が目指す「ハイブリッド平和」という危険な罠

中国は、ロシアの決定的勝利も、完全な敗北も望んでいない。ロシアが勝ちすぎれば中国のライバルとして復活し、負けすぎれば西側が主導権を握り、中国の同盟国を失うからだ。

中国が目指すのは「ハイブリッド平和」と呼ばれる状態だ。これは、ロシアが弱体化したままウクライナ領土を保持し、ウクライナが崩壊せず、欧州と米国が長年にわたりウクライナに忙殺され続けるという状況を意味する。

VisualPolitikは、このハイブリッド平和は中国の観点からすれば完璧だが、ウクライナ、米国、そして欧州にとっては「非常に危険な罠」だと警鐘を鳴らす。

VisualPolitikが分析する、ウクライナ戦争における中国の「両面作戦」

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