経済データの政治化は米国を「バナナ共和国」に変えるのか?Mallen Bakerが警鐘を鳴らす

国際政治

トランプ前大統領が労働統計局(BLS)の雇用統計を「不正操作されている」と主張し、BLS委員長を解任した。経済データの客観性が揺らぎ始めた米国で、ジャーナリストのMallen Baker氏は「バナナ共和国」化への懸念を表明した。

「不正操作された」雇用統計の裏側

2024年、トランプ前大統領は労働省の雇用統計発表後、データが弱かったことを理由に、BLS委員長のエリカ・マッキンター氏を解任した。トランプ氏はマッキンター氏を「バイデン任命者」と呼んだが、彼女は超党派で承認された人物である。

トランプ氏のこの行動に対し、Mallen Baker氏は「統計局長を解雇する。なぜなら、それが助けになるからだ」と皮肉を込めて述べる。

BLSが発表した最新の雇用統計は、以前にトランプ氏が称賛していた速報値から大幅に下方修正された。特に、5月と6月の雇用増加数が激減し、7月の速報値も予想を下回った。

トランプ氏が推進する関税政策にもかかわらず、「製造業の雇用、卸売業や小売業の雇用も減少している」ことが示されている。

トランプ氏の行動は、データの客観性が失われ、大統領の意向に沿って「修正」される懸念を示唆している。そうなれば、企業や投資家は信頼できるデータなしに投資判断を下すことになり、「統計はコインを投げるのと同じくらい信頼性がなくなる」とBaker氏は指摘する。

「バナナ共和国」化への警鐘

Mallen Baker氏は、トランプ氏の対応が、悪いニュースを公にすることを許さない「権威主義国家」の特徴と酷似していると警鐘を鳴らす。

指導者たちが経済データを政治化し、データインフラに対する国民の信頼を破壊してきた国々では、その結果は悲惨なものだった」という、二人の元BLS長官が率いるグループ「Friends of BLS」の声明を引用した。

元統計システムの責任者であるデイビッド・ウィルコックス氏も、「委員長の解雇は、米国の統計システムの整合性にとって深刻な打撃となるだろう」と述べている。これにより、「客観性が大統領を喜ばせることなのか、それとも米国経済で何が起こっているかについて可能な限り最良の全体像を提示することなのか、という疑問を提起するだろう」。

そして、Mallen Baker氏は「一度その地点に到達すれば、民主主義は民主主義であることをやめ、単なる民主主義ごっこになる」と結論付けた。経済データの客観性が失われることが、民主主義の根幹を揺るがすという深刻な懸念を表明したのだ。

抵抗する専門家たちと将来への期待

しかし、唯一の「良いニュース」として、BLSには2,000人以上の専門職の職員がいるとMallen Baker氏は指摘する。彼らは「高い程度の誠実さ」を持ってデータの収集と分析を行っているため、将来の数値を「あからさまに操作することは、予想されるよりも困難になるだろう」。

元長官のウィリアム・ビーチ氏は、「もし圧力が大きくなりすぎれば、人々は数字を操作するよりも辞職を選ぶだろう」と述べ、内部からの抵抗が期待できるとした。

Baker氏は、後任者が「実際に資格があり、経験豊富だが、より共和党寄りの人物」であればまだ良いと語る。しかし、「トランプが2020年の選挙に勝利したと信じ、公の場でトランプへの忠誠を公言することに経験がある人物」であれば、「米国が『バナナ共和国』の状態に陥る瞬間が訪れるだろう」と警告する。

経済データの客観性と信頼性は、民主主義国家の健全性にとって不可欠である。データの政治化は、経済的な意思決定の混乱だけでなく、政府に対する国民の信頼喪失と、最終的には民主主義の基盤を揺るがす深刻な結果を招く可能性がある。

はたして、米国の民主主義は、この未曾有の危機を乗り越えられるのだろうか――。

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