元航空幕僚長の田母神俊雄氏が、参政党の神谷宗幣氏との対談で、日本の国家としての自立の現状と課題について語る。田母神氏は、日本の真の自立は「軍の自立」に他ならないと繰り返し強調し、戦後の日本が「対米俗政党として戦後ずっと頑張ってきた」自民党によってアメリカへの依存体制から抜け出せていないと指摘する。国産兵器、デジタル技術、食料自給率の重要性を説き、「戦争ができる国にすることが戦争しないことなんです」と、毅然とした外交姿勢の必要性を訴えた。
「国家の自立は軍の自立」──対米従属からの脱却が急務
元航空幕僚長の田母神俊雄氏は、参政党の神谷宗幣氏との対談で、日本の真の国家自立について熱弁をふるった。田母神氏は「国家の自立っていうのは軍の自立だと思うんです」と語り、戦後80年近くにわたり「アメリカの意を対して対米従属政党として戦後ずっと頑張ってきた」自民党によって、日本がアメリカへの依存体制から抜け出せていない現状を厳しく指摘する。
自衛隊の現状についても触れ、戦闘機やミサイルシステム、情報交換装置(データリンク)、敵味方識別装置など、主要な兵器システムがアメリカ製であり、その暗号やソフトウェアもアメリカに依存していると明かした。「自衛隊の戦力発揮はアメリカが意地悪するとできなくなるんです」と、日本の安全保障がアメリカに握られている実態を明らかにする。
この状況を改善するには「国産の戦闘機、国産の巡洋艦とか、国産のミサイルシステム、国産のデータリンク」が必要だと強調する。しかし、国産化を進めようとすると「アメリカは全力を挙げて妨害してきます」と、過去の事例を挙げてその難しさを語った。特に、1980年代後半に計画されたF-2戦闘機の国産化計画は、日本のフェーズドアレーダー技術を脅威に感じたアメリカからの猛烈な妨害により、中曽根康弘元首相の「アメリカの共同開発提案を飲めという指示」で共同開発に転換させられたことを明かし、「国産戦闘機開発を潰したのは中曽根康弘総理なんですよ」と断じた。
田母神氏は、日本の「失われた30年」が、この中曽根政権の時期と一致していると指摘し、「30年前から歴史認識、軍事、経済、そういったものが全て日本は骨抜きになってしまっている」と、日本の停滞が対米従属と深く関連しているとの認識を示した。「自衛隊がアメリカ軍から自立することなしに、日本の国が自立することはできない」と、軍の自立が国家の自立の出発点であると訴えた。
デジタル分野の「弱腰」──TRON、一太郎の挫折と政治の責任
軍事だけでなく、デジタルインフラにおいても日本が独自性を失い、海外依存が深刻化している現状が述べられた。日本独自のOSである「トロン」があったにもかかわらず、「日本政府が主導してWindowsを採用させた」と、その普及を妨げた政府の判断を批判した。
また、日本発のワープロ・表計算ソフト「一太郎、花子」が、政府の指導により「ワード、エクセルに変えろ」という動きで市場から姿を消したことを挙げ、IT分野が「完全にアメリカにやられてる」と指摘した。
これらの問題は「政治が強い意志を持ってアメリカと交渉して守るべきなんですよね」にもかかわらず、「日本政府がアメリカの圧力負けて『アメリカの言う通りしろ』というわけだからおかしいでしょ」と、政治の責任を強調した。
食料安全保障の危機──農家支援の不在と「官が維持」の原則
食料自給率の低下についても、田母神氏は「日本はアメリカ初の情報に相当騙されてます」と語った。世界中で農家への手厚い補助金があるにもかかわらず、日本では「日本は支援しすぎて農家が弱くなった」という「全くそれは嘘」だと主張する。
戦後、先進国の中で「食料自給率が下がってるのは日本だけなんだ」と指摘し、これは「アメリカの言うこと聞きすぎてね、アメリカの農家を儲けさせる」結果だと述べた。コメについては、「政府が全部高い値段で買って、それで国民に安くね売ればいいんじゃないか」と具体的な提言を行い、農家の保護と食料自給率向上の必要性を強調した。
農協の役割についても言及し、「東日本の大震災の時に地震保険をよく払ってくれたのは農協ですよ」と、地域貢献を評価した。小泉純一郎元総理の「民でできるものは民で」という民営化路線が郵便局(郵政民営化)と同様に農協にも適用されることへの懸念を示し、「国民のインフラ、生活のインフラに関わるものは国が維持しなきゃいけない」という原則を提唱した。
「戦争ができる国にすることが戦争しないこと」──外交・防衛戦略の再構築
外交面では、トランプ政権の登場が日本の自立にとって「非常にチャンス」であると捉えている。「トランプはアメリカ第一だと、日本も第一でやればいいじゃないか」と、トランプ大統領の姿勢が日本の自立を促す契機となりうるとの見方を示した。
防衛費増額の意義についても触れ、「防衛費を増やすことは公共事業と同じようなもんで、国民生活豊かにします」と述べ、ウクライナ戦争における欧米諸国のように、国防費の増額が経済成長につながる可能性を指摘した。
そして、本音源の核心的な主張の一つとして「戦争ができる国にすることが戦争しないことなんです」と力強く語る。これは抑止力としての軍事力強化の重要性を説くもので、「強いものには手を出さないんだ」と説明した。
戦争を避けるためには「憲法もきちんと整えて、自衛隊の物理的な戦力も強化をして、そして『来るんだったら来い』と。『戦うぞ』という体制を取ることが戦争しないこと」だとし、憲法改正を通じた防衛体制の強化が不可欠であるとした。対中・対韓外交についても「もっときちんと言ったらいいと思いますね」と毅然とした態度を提言し、「総理が靖国参拝を普通にするようになっただけで変わりますよ対応が」と、靖国参拝が「戦わない宣言」であり、日本の毅然とした態度を示す出発点であると位置づけた。
国民意識と政治家の「問題回避症候群」──自民党への不信と参政党への期待
これらの課題を解決するためには、国民意識の変革と、現状の政治家の意識改革が不可欠であると結論付けた。田母神氏は「国民がやっぱりその『国防とはなんぞや』と『国を強くするとは何か』と。『で、国会議員にはどういう役割があるのか』」と、国民が政治や国防への理解を深めることの重要性を訴える。
また、政治家が「問題を起こしてはいけないという教育がちょっと行きすぎてますよ」とし、「問題回避症候群、やばいですよ」と、現状の政治家の意識を批判した。行動すれば必ず問題は起きるものであり、それを恐れては国家を変革できないと指摘した。
自民党への不信感も露わにし、「自民党に30数年任してきたけどちっとも良くならない」、「自民党に日本を良くしてもらうのは諦めてください」と述べた。一度「政治的混乱が起きる」ことを乗り越えなければ、日本は変われないという強いメッセージを発した。
最後に、参政党が「素晴らしかった伝統文化を誇る日本を取り戻そう」とする政党であり、その拡大が日本の変革につながるという期待を示した。「今のままでは変わらない」と現状維持では日本の未来はないと断言する。
田母神俊雄氏の言葉からは、日本の真の自立への強い願望と、それを阻む要因への深い危機感が伝わってくる。軍事、デジタル、食料といった多岐にわたる分野での国産化と自立の必要性を訴え、「戦争ができる国にすることが戦争しないことなんです」という力強いメッセージは、日本の安全保障と外交のあり方を再考させるものだ。また、国民意識の変革と、政治家の「問題回避症候群」からの脱却を求める声は、現状の政治システムへの不満の表れだろう。はたして、田母神氏が期待する「政治的混乱」を経て、日本は真の自立を達成できるのだろうか。
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