国民民主党代表の玉木雄一郎氏は、7月29日の定例会見で、自民党の両院議員懇談会に言及し、「どのような形になるのか早く決めていただかないと、政権とどのように向き合っていいのかも分からない」と、自民党の早期の方向性決定を強く求めた。「対決より解決」の姿勢を維持しつつ、特にガソリンの暫定税率廃止について「年内実現」を目指し、政策議論を牽引する意向を示した。
自民党に早期の「方向性決定」を要求:政治空白への懸念
会見冒頭、玉木代表は自民党の両院議員懇談会について言及し、石破総理の意思表示と、それに対する厳しい意見があったことを指摘した。森山幹事長の退任意向にも触れつつ、自民党に対し「どのような形になるのか早く決めていただかないと、我々野党としても、どなたとどういう政権の形になるのか見定めないと、政権とどのように向き合っていいのかも分からない」と、早期の方向性決定を強く要求した。
国民民主党の基本姿勢については、「対決より解決の姿勢を維持しつつ、政策本位で与党、また他の野党にも向き合ってまいりたい」と改めて表明した。
ガソリン減税の「年内実現」を主導:国民に「政治が変わった」実感を提供
特に、玉木代表が会見で最も力を込めて語ったのが、ガソリンの暫定税率廃止の必要性だ。この問題は「昨年12月から廃止ということを自公とも決めている内容」であり、年内実現を目指して政策議論を牽引していく意向を示した。
記者からのガソリン減税に関する質問に対し、玉木代表は、野党各党の政策責任者会議で11月1日からの廃止と8月の臨時国会での法案提出・審議・採決・成立で一致したことを肯定的に評価した。「参議院選挙の成果を国民の皆さんに実感いただくためにも、早期に実現をすることが必要だと思いますので、積極的に我々としても取り組んでいきたいし推進していきたい」と強調した。
国民民主党は、岸田政権下でのトリガー条項発動に関する協議経験を踏まえ、「新トリガー法案というものを作って補助金と組み合わせながら、現場に影響を与えない形で実現する具体的な法策を国民民主として取りまとめていた」と説明する。他党が「単に一気に下げる」という主張であったのに対し、国民民主党は「補助金とも組み合わせながら、ガソリンスタンドやあるいは徴税事務のコストや手間ということをかけないような、かなり現実的な案を提示してきた」と述べ、現場の混乱を避ける具体的な対策を持つ唯一の党であると自負を示した。
一部の識者から「急にまたドンと下げると現場に混乱が生じる」という指摘があることに対し、過去の民主党政権時代の混乱を踏まえ、「万全の対策で今回は臨むことができる」と自信を見せた。「国民民主党に従ってやれば、この2つの目的(税金が下がる・現場に影響を与えない)が達成可能」であり、今後「国民民主党が指導的な役割を果たしてききたい」と、主導的役割への意欲を表明した。
物価高騰対策:給付金は「年内に間に合うのか?」所得税控除額引き上げを推奨
与党(自公)の給付金に関する動きについて質問されると、玉木代表は「年内に間に合うのか」と疑問を呈した。特に、自治体経由の郵送方式では「手間も時間もかかって年内給付は間に合わない」と指摘し、給付時期の明確化を求め、「もし遅いんだったらやめた方がいい」と厳しい見方を示した。
国民民主党が主張する物価高騰対策としては、所得税の控除額引き上げと年末調整での還付を挙げ、「事務手続きとしても税制の簡素化という観点においても優れている」と強調。「これより早い方法があれば教えてもらいたい」と、そのスピード感をアピールした。
消費税減税については、法改正が必要であり、「早くても来年4月」「来年秋」といった与野党の見解があることから、「今年物価高騰対策として間に合わすとすれば、我々国民民主党が主張している所得税・住民税の控除額を引き上げて年末調整で返す」方法が最も現実的であるとの認識を示した。
野党連携と「年収の壁」問題:最重点項目は「ガソリン減税」と「所得税控除」
自民党の体制立て直しを巡る発言に関連し、ガソリン減税以外の政策での野党連携について質問されると、玉木代表は「12月に結んだ3党の合意をちゃんと果たしてほしい」と、ガソリン暫定税率廃止と所得税控除額引き上げの2点が党にとっての「最重点項目」であることを強調した。
給付金についても、「年内に国民の皆さんに還元する方法として、所得税の控除額のさらなる引き上げやあるいは規則をもっとシンプルにする」ことについて野党間で合意形成を進めたいと述べた。
消費税減税については、「食料品だけとか、全部下げるとか、あるいは1年だとか2年だとか…同じ消費税減税と言っても幅がありますし」と、各党間の主張の相違を指摘。しかし、「景気動向はどうなるのか」といった点を踏まえつつ、政策責任者レベルでの「一定の合意」を目指す考えを示した。
「年収の壁」に関しては、「103万円の壁から178万円の壁」への引き上げは説得力があったと述べ、実現に向けては「各野党の皆さんも、年内に具体的に国民の皆さんの懐に還元する方法を真面目に考えたらいい」と、他野党にも早急な検討を促した。
所得税・住民税の控除額引き上げによる年末調整での還付が「現実的に年内に現実的にできること」であり、もう一つは公金受け取り口座登録者へのデジタル給付が挙げられるが、後者は「政治的には厳しい」との見方を示した。公明党も「控除額のさらなる引き上げについては選挙のマニフェストの中に書いていた」として、公明党への働きかけも視野に入れていることを明かした。
財源論は「全く問題ない」:空室税導入の経緯
財源論については、「全く問題ないと思ってます」と断言した。ガソリン暫定税率廃止に必要な財源は「政府の発表で言うと上ぶれだけでも3.5兆円ぐらいある」「地方税も1.1兆円上ぶれてますから」と述べ、十分な財源があることを強調した。「財源にいては示せと言われれば今言ったようなことも十分示せますし、財務省も財源は多分心配してないじゃないですか」と述べ、財源論は「乗り越えている」との認識を示した。むしろ「実務上の円滑な実施」と「有権者にガソリン減税が実現したと実感いただくこと」に注力するとした。
消費税減税の優先順位については、実質賃金がマイナスであり物価上昇が3%を超えている状況において、「下げるべきであるという立場」は変わらないと述べた。しかし、他野党との合意形成の必要性も指摘し、最も早い物価高騰対策としては「所得税の控除額などを引き上げることによって、年末調整でお戻しする」ことが最短であると改めて強調した。
「参政党を意識して政策を右に広げた」という報道について質問されると、玉木代表は「そんな事実はありませんね」と強く否定した。空室税(当期空室税)の導入経緯については、都議会選挙直前に「都内で適切な値段で住宅にアクセスすることが極めて難しくなってる」という声が多く寄せられたことを受け、手取りを増やす4番目の柱として住宅確保政策の一環として検討を始めたと説明。その後、参議院選挙の公約にも全国版の政策として入れたと述べた。
また、外国人土地取得規制法やスパイ防止法の制定議論についても、国民民主党は「2020年の結党以来、自分の国は自分で守るっていうことを政策の大きな柱に掲げている」と述べ、以前から取り組んできた政策であり、参政党の台頭とは直接関係ないことを強調した。
自民党の体制立て直しへの注文と党運営の課題
自民党が選挙結果について1ヶ月も議論していることについて、記者から「国民に対する裏切りだと思うんですけど」「1ヶ月も必要なんですか」と厳しい指摘が出ると、玉木代表は「おっしゃる通りだと思います」と同意した。
「スピード感に欠けている。で、そのこと自体が政治空白を作っていると思われても仕方ない」と述べ、自民党に対し「早く落ち着いていただきたい」と、早期の意思決定を強く求めた。
党役員人事については、次の衆議院選挙に向けた「候補者擁立などをできるだけ早期に整えていきたい」こと、相対的に「西日本が弱い」ことや地方組織の強化、SNS対策の強化などを挙げ、「強化をしていかなければいけない」と述べ、今後必要な人事に着手していく意向を示した。
最後に、横浜市議補選について、「参議院選挙の勢いをそのままになんとか一席取りたい」と、必勝への意欲を表明した。
玉木雄一郎代表の会見からは、国民民主党が「対決より解決」の姿勢を明確にし、具体的な政策実現に主導的な役割を果たす強い意欲が感じられる。特に、ガソリン減税の「年内実現」へのこだわりは、国民に「政治が変わった」という実感を提供するための重要な一手と位置づけられている。自民党の「政治空白」への厳しい指摘と、国民民主党が提唱する物価高対策の優位性を訴える姿は、今後の政局における国民民主党の存在感を高めるものとなるだろう。はたして、玉木代表が掲げる「大型選挙ごとに比例の総得票数を2割ずつ増やしていく」という目標は達成されるのだろうか――。そして、国民民主党は、日本の政治にどのような「解決」をもたらすことになるのだろうか。
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