ジャーナリスト須田慎一郎が分析する参院選後の政局──自民党内の路線対立と国民生活の行方

ジャーナリスト須田慎一郎が分析する参院選後の政局──自民党内の路線対立と国民生活の行方 最新ニュース
ジャーナリスト須田慎一郎が分析する参院選後の政局──自民党内の路線対立と国民生活の行方

ジャーナリストの須田慎一郎氏が、参議院選挙後の日本政治の深層を分析する。自公連立の過半数割れが「折り込み済み」とされる中、新たな政権の枠組みを巡る自民党内の「壮絶な路線対立」に焦点を当てる。緊縮財政路線と積極財政路線のせめぎ合いが、国民の生活にどのような影響をもたらすのか、その行方を徹底解説する。

参院選後の永田町の焦点:自公過半数割れ後の政権運営

ジャーナリストの須田慎一郎氏は、現在の永田町における最大の注目点は、参議院選挙の結果そのものではなく、自民党・公明党(自公)が過半数割れすることが「折り込み済み」であることを前提とした、その後の政権運営のあり方にあると指摘する。衆議院に続き参議院でも自公が過半数割れする状況では、自公だけで国会運営を継続することは事実上不可能となるため、「自民公明プラスアルファ」という新たな政権の枠組みが模索されているという。

一方、非自公の野党による連立政権発足の可能性は「ほぼ全ての国会議員がそこはないだろうと見立て」ていると須田氏は語る。その理由として、主要野党三党(立憲民主党、日本維新の会、国民民主党)間の「仲が悪い」こと、政策協定や首班指名の協議が「整わないだろう」という見方が支配的であると解説する。

自民党内の激しい路線対立:緊縮か、積極か

最も現実的なシナリオとして、「比較第1党である自民党が中心になって、元々連立パートナーである公明党と一緒になって、そこにプラスアルファでどっかの現野党と手を組む」という見方が有力視されている。しかし、この連立相手の選定を巡って、自民党内で「壮絶な、あるいは強烈な路線対立」が起こると須田氏は予測する。

緊縮財政路線と「自公立憲大連立」の可能性

現在の石破体制(石破総理、森山幹事長ライン)においては、「立憲民主党と組むんじゃないかという動きが加速」していると須田氏は指摘する。これは、昨今の通常国会で成立した年金改革関連法案が背景にある。この法案は、厚生年金の積立金を基礎年金に充当し、将来的な不足を補うもので、将来的に年間2.5兆円から3兆円の国庫負担が生じる。この不足分は「消費税で賄うものとする」と消費税法に規定されており、現在の消費税収では賄えないため、この法案の成立は「将来的に消費税の増税を織り込んだ」ことを意味すると須田氏は分析する。

この年金改革関連法案の衆院通過には自公のみでは不可能であり、立憲民主党が賛成したことで成立した。須田氏は、「この案を自公に飲ませたのは立憲民主党」であるとし、この流れから「将来消費税増税を進めていくというのは、自公立の合意事項であるはず」と分析する。これは、財政再建を最優先し、国債発行に頼らず増税によって財政の安定化を図る「緊縮財政路線」であると位置づけられる。石破総理総裁が続投するならば、この緊縮財政路線が継続されることを意味すると須田氏は指摘する。

しかし、この緊縮財政路線は自民党内で「コンセンサスが得られているわけではありません」と須田氏は強調する。

積極財政路線と自民党内の反発

自民党内には「積極財政派の議員も多数いる」と須田氏は語る。具体例として、今年5月8日に「参議院選挙を睨んで消費税減税を選挙公約に盛り込むべきではないのか」と主張する議員グループが、森山幹事長に提言書を提出したことを挙げた。この提言書には「100名弱」の議員が署名しており、当時の自民党国会議員数306名の約3分の1に当たる。しかし、森山幹事長が「私は消費税を守るんだ」という「強い意思のもとに、これを握りつぶした」という。

参議院選挙での自民党の大敗を受け、この積極財政派の議員は「民意として路線転換を求めているんだ」という大義名分のもとに、「おそらく参議院選挙後に決起をするはず」と須田氏は予測する。

国民民主党と日本維新の会が握るキャスティングボート

立憲民主党が「緊縮財政路線」であるため、積極財政路線を主張する自民党議員グループは立憲民主党との連携を「絶対的に許されない」と考えている。そこで、積極財政路線を鮮明に掲げている「国民民主党」との連携を主張する議員が自民党内に「相当数いる」と須田氏は指摘する。「少なくともミニマムででも100名弱います。表に出てきませんが、裏側にはまだかなりの数の議員がいる」とも語る。

この積極財政路線を推し進める議員グループは石破氏を支持せず、別の人物を担ぎ上げると見られている。「高市さんの声も上がってますが、他の方々の名前も上がっております」。

財政政策の選択が国民生活に与える影響

須田氏は、自民党が「立憲民主党と組むのか、果たして国民民主党と組むのか、場合によっては日本維新の会と組むのかによって、財政政策は根底から変わってくる」と強調する。「全く真逆の政策が選択される」とし、その結果として「国民生活はどちらの方がプラスになるのか」を注視する必要があるとしている。

立憲民主党の選挙公約にあった「消費税減税」も、「食料品の8%を0%に、これたった1年」であり、「1年経ったら元の水準に戻ってしまいます」と指摘し、「これは偽装消費税減税だった」と批判する。実態は緊縮財政路線であり、だからこそ森山・石破ラインは「財務省がついてますから」立憲民主党と手を結ぼうとする、と須田氏は述べる。

価値観とイデオロギーの対立も政局に影響

自民党の保守派議員の中には、立憲民主党との連携に対し「立憲民主党の枝野さんや蓮舫さんや辻元さんと手を組めるはずがないだろうと。国家観が全く違う。皇室に対する捉え方も全く違う。歴史観も違う。価値観も違う。そこで手を組むことは亡国なんだ」という強い反発があることも言及されており、政策だけでなく「イデオロギー対立的な要素」も政局の動向に影響を与えるとしている。

参議院選挙後の自民党内の「党内政局」は、「相当強い」危機感を持って動くと須田慎一郎氏は予測する。この党内政局の動きによって、どの党が連立パートナーとして選ばれるかが決まり、その選択が日本の財政政策の方向性を「根底から」変えることになる。この選択は、国民の生活に直接的な影響を与えるため、今後の動向を注意深く見守る必要がある。はたして、自民党は国民生活を豊かにする「積極財政」の道を選ぶのだろうか?

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