ジャーナリストの須田慎一郎氏が、8月1日に行われた「石破辞めるなデモ」の現場に足を運び、その実態を報告する。厳戒態勢の自民党本部前で繰り広げられたデモの参加者たちの素顔、そしてその背後に隠された政治的目的について考察する。
デモの実態と参加者の素顔
8月1日の午後7時、東京・平河町の自民党本部前で「石破辞めるなデモ」が行われた。須田氏はこの現場に直接足を運んだが、それは「デモ」というよりも、移動を伴わない「スタンディング」、つまり意思表示といった状況だった。自民党本部前へのデモ隊の侵入を許可しないという、警察の「厳戒態勢」が敷かれていたからだ。
須田氏は「割とマスクもサングラスも帽子もしない、この素顔で行ったため」に悪目立ちしたと語り、針のむしろのような状況にいたという。
デモの参加者について、須田氏は当初「左派リベラル」が中心だと予想していた。だが、現場では意外な声も聞かれた。ある参加者は、自分は保守だが、左派リベラルだけでなく保守派もデモに参加していることを強調し、「石破総理総裁こそが真性の保守なんだと、本当の保守なんだ」と力説したという。
しかし、須田氏の肌感覚では、主催者を含め「大部分が左派リベラルだったのではないか」というのが実態だ。その割合は「9割以上」に達するのではないかという印象だった。
突出したコールから見えた「別の政治的目的」
デモでは、冒頭10分程度、「コール」と呼ばれる声出しが繰り返された。その内容は、「排外主義者に負けるな石破」や「差別で票を取る政治家はいらない」といったものだった。
須田氏は、今回の参院選や東京都議会議員選挙では外国人問題が主要な争点の一つに浮上し、有権者の投票行動に大きな影響を与えたことを指摘する。そうした背景から、「『日本人ファースト』を打ち出していた参政党が大躍進を遂げた」。この動きに危機感を抱いた左派リベラル勢力が、今回のデモのコールを主導したのだろう。
しかし、須田氏はそのコールに強い違和感を覚えたという。「排外主義者に負けるな石破」というメッセージは、外国人問題で慎重な発信をしながらも政策的なアピールをしていた自民党に対し、言うべき内容なのだろうか。また、「差別で票を取る政治家がいらない」という主張も、自民党に向けるには的外れな感が否めない。
これらの点から、須田氏は今回の活動が「果たして本当に『石破辞めるなデモ』と呼んでいいのかどうか」と疑問を呈する。参加者の本当の目的は、単に石破首相に辞めないでほしいという願いだけでなく、その主張の裏に「別の政治的目的」があったのではないかと推測する。
保守系ジャーナリストの存在が「強烈な違和感」
デモの現場では、須田氏のような保守系ジャーナリストの存在は珍しかったようだ。かつて須田氏と面識があったというマスコミ関係者からは、「珍しいですね、保守系ジャーナリストがこんなところにいるのは」と声をかけられたという。
そのマスコミ関係者の目には、取材に来ているNHKや他の新聞社といったメディアが「リベラル左派のメディア」に映っていたのだろうと須田氏は推測する。自分たちを応援し、味方であるメディアが取材に来ているという意識がある中で、須田氏のような立場の者がいることは「強烈な違和感があった」に違いない。
現場には多くの警察官が動員されており、機動隊も含む「厳戒態勢」だったが、デモ自体の雰囲気は「緩い」ものだったようだ。主催者側からも「過激な行動言動は控えてほしい」と繰り返し呼びかけられていたという。
しかし、須田氏は「NHKニュースでトップニュースに取り上げられたぐらいの大きな扱い」をされたことに疑問を呈する。この手のデモが、政治的な目的をもって大きく報じられた可能性もあるのではないかと示唆している。
そして、昨日お伝えした「80年談話は断念」というニュースを受けて、デモを主催したグループは「シュンとしてしまった」のではないかと須田氏は推測する。自民党の分断を図るための一環としてこのデモを盛り上げようとしていたのではないかと、改めてその政治的意図を指摘する。
一見すると石破政権を擁護するデモの裏には、はたしてどのような思惑が隠されていたのだろうか――
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