ジャーナリストの須田慎一郎氏が、参議院選挙での大敗を受けて激化する自民党内の権力闘争に迫る。石破総裁へのリコール運動が始まる中、森山幹事長が「わかったようなわからないような詭弁」を用いて時間稼ぎを図り、石破おろし勢を翻弄している現状を詳細に解説する。
骨抜きにされた両院議員総会
参議院選挙での大敗を受け、自民党内では石破総裁の早期辞任を求める声が噴出した。党則第6条に基づく総裁選の前倒しを議題とするため、石破おろし勢はリコール運動の署名活動を開始した。しかし、8月8日に開催予定だった両院議員総会は、森山浩司幹事長を中心とする執行部の戦略により、その目的が果たされることはなかった。
須田氏によると、森山幹事長は「『両院議員総会では総裁の身分に関するものは決定できない』という、わかったようなわからないような詭弁」を用いて、リコールを議題とすることを認めなかった。これは、執行部が「強権を発動して、その議案を採決することを認めない」という姿勢を貫いた結果だという。この巧妙な時間稼ぎにより、石破総裁を守るための策が講じられた。
結果、両院議員総会で成果が出ないと悟った石破おろし勢は、「もう署名集めを再開している」状況だ。
「政治と金」が石破おろしを鈍らせる
新たな署名活動は、両院議員の半数以上および47都道府県の党員の半数以上の賛成があれば総裁選を前倒しできるという、党則第6条4項に基づいている。しかし、この活動の成否は不透明な状況だ。
7月28日に開催された両院議員懇談会では、65%もの議員が「石総やめるべし」と発言していたにもかかわらず、時間が経つにつれて議員たちの態度は変化している。須田氏によると、議員たちは「執行部に弓を引いてしまうと、後でどんな嫌がらせを受けるか分からない」と懸念し、冷静になりつつある。
さらに、萩生田光一氏の政治資金収支報告書記載問題を巡る検察審査会の「起訴相当」判断や、朝日新聞へのリーク報道が、議員たちの心理に大きな影響を与えている。多くの議員が「政治と金の問題で自分がターゲットにされてしまうのではないか」と恐れ、「震え上がっちゃった」状況だ。
この政治資金問題を巡る報道が、石破おろしへの積極的な動きを鈍化させていると須田氏は指摘する。
森山幹事長の自信と「終わる」自民党
森山幹事長の側近である三反園訓氏は、両院議員総会について「不満を持ってる連中が話をするだけだ。ガス抜きでしかないよ。あんなの怖くも何ともない」と嘲笑し、執行部が引き続き動きを封じ込められるという自信を見せている。
一部では、森山幹事長が参議院選挙の総括結果が出た段階(8月末)で辞任する可能性が指摘されている。森山幹事長がいなくなれば、「政権運営が成り立たない」ため、石破総裁も辞職するという見方がある。このため、一部の議員は、今すぐ行動を起こさず、「どうせ8月末で辞めるんだから」と静観する姿勢を見せているという。
しかし、須田氏は「老練な」森山幹事長の戦略に石破おろし勢が翻弄されていると見る。石破おろしを仕掛ける側に対し、「本気を出せ」と檄を飛ばす。もし署名活動が不調に終わり、あるいは途中で空中分解するような事態になれば、「本当に自民党終わります」と、自民党の深刻な危機を予見する。
はたして、石破おろし勢は森山幹事長の巧みな戦略を打ち破り、党の危機を救うことができるだろうか――。
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