社民党副党首の大椿裕子氏が、参院選に向けた党のテーマ「社民党が変わる社民党リブート2025」を掲げて公約を説明した。大椿氏は、物価高や雇用不安、そして「排外主義がうずまいている」現状に対し、食料品消費税ゼロや最低賃金引き上げ、脱原発、軍事費削減といった政策を訴えた。結党以来の「平和自由平等共生」という立場を貫きながら、多様性を尊重し、国民の暮らしを守る社会の再起動を目指すと強調した。
変わらない社民党の哲学──ブレずに暮らしに寄り添う
大椿氏は、今回の参院選が「今までいなかった参議院選挙になっています」と述べ、排外主義が蔓延する現状に危機感を表明した。その中で、社民党は「ブレずに変わる」という姿勢を示し、これまでの「平和自由平等共生」という基本方針をしっかりと守りつつ、「新たに違う私たち社民党の姿を見せていく」と語った。
具体的な政策として、まず物価高への対応を最重要課題に掲げた。国民の暮らしを守るため、「食料品消費税ゼロ即実現物価から生活を守る」と断言。その財源については、「企業の内部留保への課税で調達」できると説明した。企業の内部留保に1%課税すれば、「食料品の消費税をゼロにする財源約5兆円を確保することができます」と、具体的な数字を挙げて実現可能性を訴えた。
働く人を守る──社会保険料半減と最低賃金引き上げ
大椿氏は、国民の暮らしを圧迫している社会保険料についても言及。労使で半々となっている社会保険料の負担を「労働者1/4、使用者が3/4」に変更することを提案した。中小企業への負担増分は国費で補填することで、年収500万円の人であれば「社会保険料負担が約30万円、38万円軽くなる」というメリットがあると説明した。
また、国民が減税を求める背景には「やっぱり賃金がめちゃくちゃ安いということ」があると指摘し、「最低賃金1500円」の引き上げの重要性を強調した。今の最低賃金では「人がまともに暮らしている最低賃金になっていない」とし、大幅な引き上げを政府に求めた。
さらに、日本の労働者の約4割を占める非正規雇用者の7割が女性であることに触れ、非正規雇用の拡大は日本の「性別役割分業の上にそれを土台にして肥大化してきた」ものだと分析。雇用の安定と正当な賃金の実現を訴えた。
命を守る「安全保障」──脱原発と食料自給
社民党の代名詞とも言えるのが脱原発政策だ。大椿氏は「地震大国に原発はいらない」と断言し、福島原発事故を忘れることなくと強い意志を示した。
また、真の安全保障とは何かという問いに対し、「ミサイルより米を」というスローガンで食料自給率を高めることが何より大事だと訴えた。
そして、近年の防衛費の急増についても厳しく批判。過去最大の「8.7兆円」にまで膨れ上がった防衛予算は、「皆さんが納めた税金の多くが防衛費、軍事費に使われている」状況であり、これを「看過することができません」と述べた。社民党は「税金は軍拡ではなく暮らしに」という立場を貫き、福祉や医療、教育、農業にこそ予算を付けるべきだと主張した。
排外主義との徹底抗戦──「敵を間違えないで欲しい」
大椿氏は、今回の選挙で「外国人に対するえ規制」を公約として掲げる政党が増えていることに「暗澹たる思いです」と述べ、排外主義の蔓延に強い懸念を示した。
しかし、国民の生活が苦しいのは「外国人やマイノリティのせいじゃない」と断言。その根本原因は、「自民党政権が30年間にわたって非正労働者を増やし続け賃金を上げてこなかった労働政策の誤り」にあると指摘した。「敵を間違えないで欲しい」と訴え、外国人ではなく、日本の政治を変えるべきだと呼びかけた。
多様性社会の実現を目指し、「あらゆる差別を禁止する法律作りましょう」と提案。また、国会での憲法改正の議論に対し、「しっかりと憲法を生かした政治を実現していくこと」が社民党のぶれない立場だと述べた。
社民党副党首・大椿裕子氏の訴えは、物価高や雇用不安といった国民の生活苦の根本原因を、政治の構造的な問題にあると指摘し、その矛先を排外主義に向けるべきではないと強く主張するものだった。彼女自身も非正規労働者として解雇された経験を持つという言葉は、その訴えに重みを与えている。
はたして、社民党が掲げる「ブレずに変わる」という旗は、多様な価値観が求められる現代において、国民の共感を呼ぶことができるだろうか――。
コメント