2025年7月31日午前、日本の政治地図に大きな変化をもたらした参議院選挙の総括が、ジャーナリストの山口敬之氏によって語られた。今回の選挙は、有権者の明確な意思表示がかつてないほど鮮明に表れたものであり、日本政治の新たな潮流を示唆しているという。
有権者の意思表示:自民・公明の退潮と「日本人ファースト」の台頭
山口氏は、今回の参議院選挙が、日本の有権者が何に不満を持ち、何を期待しているかが「ここまで綺麗に出た選挙」は過去に例がないほど明確に示されたと分析する。
自民党は3年前の参院選と比較して550万票、公明党も同様に大きく票を減らしたという。しかし、通常自民党が減らした票は立憲民主党に流れるはずが、立憲民主党も400万票減らしており、その現象は起きなかった。特に、公明党が75万票減らしたことについて、これまで明確に公明党を支持していた創価学会員のうち75万人が票を入れなかったと指摘する。学会員の中には、創価学会幹部が中国寄りの発言をすることに不満を抱き、「参政党に投票した人も少なくない」と述べられた。
自民党から離れた有権者や、本来スイングするはずだった無党派層は立憲民主党には流れず、「ほとんどが参政党か日本保守党に投票した」と分析された。これにより、参政党は全国比例で立憲民主党を上回り第2党となった。
この現象は、いわゆる「無党派層の保守化」と総括されており、無党派層が「新しい保守勢力が合流して欲しい」という明確な意思を示したと説明する。「日本人ファースト」を掲げる参政党が有権者に響いた主な理由は、単に外国人嫌いというよりは、「今の与党政権、あるいは永田町全体が日本人のためにこの国家を運営していない」という不満があったためだという。ウクライナへの支援やLGBT法の制定など、「アメリカの言うなり」になっていることへの反発が背景にあると述べられた。埼玉県川口市で賛成党が特に多くの票を得たことは、クルド人問題など、特定の地域における外国人に起因する問題への有権者の「恐怖」が投票行動に影響した一例として挙げられた。
一方で、共産党や社民党の票が壊滅的に減少し、れいわ新選組も横ばいにとどまるなど、全体的に左派勢力が低迷した。今回の日本の動きは、ドイツの「ドイツのための選択肢」、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、フランスの国民連合、イギリスの改革党、ハンガリー、オランダ、北欧諸国など、「私たちの国のことを最初に考えてよ」と主張する政党が台頭し、議会で第1党になる勢いを見せている「世界的な潮流」と一致しているという。日本はグローバリズムへの反作用という点で、やや遅れて参政党が出現した流れであるとされた。
自民党の変質と「55年体制」の終焉
今回の参院選で自民党が敗北したにもかかわらず、石破首相が辞任しないのは、「政治と金」の問題のせいにすることで、国民の真意(日本人ファースト)を歪曲し、「もし今総裁選を行えば高市早苗氏が勝ってしまうのを避けるため」だと分析する。
自民党の現執行部(森山裕氏、菅義偉氏ら)は、去年の総裁選から、「高市氏を総理にしたくない」という目的を持って動いてきたという。そのために、今回の参院選では自民党の支持率が下がるようなことを森山氏が言い続け、安倍派に近かった保守系の政治家(中尾氏、杉田氏、和田政宗氏など)を「意図的に落選させるよう動いた」と指摘する。これは、「自民党の議席数を極大化することを目的とせず、特定の政治家を落選させることを目的とした『戦後最初の選挙』」であると述べられた。
自民党は「保守政党」を名乗っていたが、現執行部によって「日本をリベラル化して保守政治家を落とす」方向へ変質してしまったため、「日本からいわゆる与党の保守政党が『なくなった』」と断言された。これは、かつて社会党と自民党の対立軸だった「55年体制」が完全に終わりを告げたことを意味するという。
参政党に課せられた重い責任
与党の保守政党がなくなった今、国民が求めているのは「ちゃんとした保守」であり、「日本という国家の形と日本という社会と日本人のために国家を守り強くする」政党だと山口氏は語る。そのため、賛成党は、もはや「まともな考えを持っている人、党派を超えて合流していくのが責務」であり、「55年体制が完全に終わりを告げた先に、どういう政治的な軸ができるのかの、ある種の責任者になった」と非常に重い使命を負っていると述べられた。
これまではアマチュアでよかった、ゲリラでよかった部分もあるが、これからは「この国を導いていく主人公」であってほしいという国民の期待が、比例票で自民党に次ぐ第2位という結果に表れているという。今後、メディアからの「極右」といった攻撃も激しくなることが予想されるが、それに臆することなく、与えられた責務を全うすることへの強い期待が示された。
今回の参議院選挙は、単なる票の増減にとどまらず、日本政治の根底からの変革を予感させるものだった。自民党の「保守」としての変質、そして「日本人ファースト」を掲げる新しい勢力の台頭は、今後の日本の政治のあり方を大きく左右するだろう。はたして、賛成党は国民が託した「重い責任」を果たし、「この国を導いていく主人公」となれるのだろうか――。その動向は、私達の未来に直結している。
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