元産経新聞記者の佐々木類氏が、「デイリーWiLL」のYouTube動画で、トランプ前大統領が石破茂首相に突きつけるであろう「退陣」勧告について深掘りした。日米交渉の難しさ、特にトランプ氏が求める「大きな判断」ができない日本の政治を批判し、現在の石破政権が安倍晋三元首相の「貯金」を食いつぶしていると警鐘を鳴らした。さらに、名古屋からのフェンタニル密輸問題に日本政府が動かないことで、アメリカが日本を「敵団」と見なす可能性にも言及。日本の外交と安全保障の危機的状況を訴えた。
トランプの「ディール」は「大きな判断」:経済担当大臣では荷が重い
佐々木類氏は、トランプ前大統領が日米交渉で求めているのは、単なる「取引」ではなく「大きな判断」だと強調した。日本の経済担当大臣が「いってどうにかなる話じゃない」と述べ、細かな経済問題や貿易問題に落とし込むだけでは「譲るものも譲れないみたいな話になってくる」と指摘した。
過去の日米交渉の例として、1955年の日米交渉で、田中角栄が通産大臣として日本の繊維産業を犠牲にする代わりに補助金を渡し、それが沖縄返還に繋がった「糸で縄を買う」という「大きな判断」があったことを挙げた。これに対し、現在の石破政権下の交渉は「押しもしないし引きもしない」と批判した。佐々木氏は、石破首相の政治評論家的な姿勢が首相になっても抜けていないと感じており、消費税減税や外国人増加問題について「自分で意見言ってない」ことを問題視した。
トランプ氏の外交は「遊びが9割」のアドリブの世界であり、日曜討論の1分半で語るような「石破じゃ通用しない」と述べ、石破首相が「前方米した時にビビっちゃって逃げちゃった」と、トランプ氏に「やられちゃった」可能性を示唆した。
日本の危機:フェンタニル密輸問題とG7の顔
佐々木氏は、名古屋からメキシコ経由でアメリカに密輸され、年間7万人から12万人ものアメリカ国民の死者を出しているフェンタニル問題に焦点を当てた。アメリカが「自国民が殺された時は断固とする」国であると強調し、日本がこの問題に「放置してるとなったらね、これはアメリカ団結して日本叩きに行きますよ」と警鐘を鳴らした。
さらに、「G7の顔してるくせにあっちの側の存在だったのかと」という印象をアメリカに与えかねないと指摘。日本が中露のような「独裁国家」と「よろしくやろうとしてんのかと」見られれば、「我々の敵になっちゃったらですね、アングロサクソン恐ろしいですよ」と述べ、特にトランプ政権では「ばっさり行く可能性あるんでね」と強い危機感を示した。
日経新聞の調査報道がこの問題を特集したのは、「日本政府が動かなかったから。もうアメリカがしびれを切らして日本のメディアにやらせてんじゃないか」という見方もあるとした。
安倍政権の「貯金」食いつぶしと大胆な外交戦略の不在
佐々木氏は、現在の自民党が安倍晋三元首相の「レガシーを食いつぶしてるな」と厳しく批判した。今回の参院選で自民党が議席を減らすことは「確実」だと見ている。
外交戦略においては、交渉の初期段階で安全保障と貿易交渉を「切り分けるって言っちゃった」石破政権の判断を「悪手」だと断じた。「なんでムザムザと自らのカードを捨てるようなことをするのか」と疑問を呈し、交渉においては「最初に手の内を見せるバカはいない」と述べた。
また、高橋洋一氏が提唱する「第7艦隊ね、もう半分買っちゃえばいいんじゃないか」というような大胆な提案を評価した。これは単に商品として買うのではなく、ホストネーションサポートを含めた「対米協力費」を増額することであり、それが日本の安全保障に資するならば「一石二鳥三鳥かもしれません」と述べた。
首脳会談は「役人の書いたペーパーレベルで終わり」ではなく、「6割は役人の書いたシナリオ通り」だが、「後の4割は車のハンドルの遊びと一緒でね、そこで体力が問われる」と、首脳同士の「アドリブ力」の重要性を強調した。
佐々木類氏の分析は、現在の日本の政治、特に外交において、指導層に「大きな判断」ができる覚悟と能力が欠如していることを浮き彫りにした。トランプ政権との交渉、そしてフェンタニル問題に代表される安全保障上の危機に対し、日本がどのような対応を見せるのか、その動向が今後の日本の国際的地位を左右するだろう。
はたして、石破政権は安倍氏の「貯金」を食い尽くすことなく、この難局を乗り越えることができるだろうか――。国民は、指導者たちの「評論家」的な姿勢ではなく、国益をかけた「大きな判断」と「アドリブ力」を求めているのではないだろうか。今後の日本の針路に注目が集まる。
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