麗澤大学国際学部教授の佐々木類氏が、参議院選挙の情勢を分析し、都議選の結果が参院選に与える影響について解説した。自民党と公明党の都議選での大敗が参院選でも繰り返される可能性を指摘し、「自民党選挙9年起き敗北の法則」というジンクスを提示。一方で、国民民主党や参政党の伸長、都民ファーストの会の議席維持にも言及した。野党の攻勢と自民党の苦戦が予測される中で、蓮舫氏擁立の是非や、維新の会の低迷、国民民主党の課題など、各党の動向を読み解く。
都議選の衝撃:自公大敗と野党の伸長
参議院議員選挙が公示され、本格的な戦いが始まる中、佐々木氏はまず都議選の結果を振り返る。自民党が「大敗」し、公明党も9年連続全員当選を逃し「8年止まり」で、「公明党もまかなり影がさしてきた」と述べた。与党全体として「大敗」だったと総括する。
一方で、勢いをつけた政党として「国民民主党」を挙げた。議席がなかったところから「9議席」を獲得したことは「なかなかあの勢いを感じさせます」と評価する。また、立憲民主党も15から17議席に増やしたが、これは「自民公明の適質だったんではないかな」とし、「これを持って立民に勢いがあるとは言えない」と冷静な見方を示した。
さらに、国政政党として初めて議席を獲得した「参政党」にも言及した。0から3議席獲得は「かなり検討したと言える」とし、「演説一生懸命やったのが功を奏した」と分析した。また、自民党の保守層が「愛想をつかした結果その反自民の受け皿になった」とも指摘する。
都民ファーストの会については、自民公明の失速により「都議会第1等にはなりました」が、「知事政党っていうのは強い」と小池百合子都知事の影響力を強調した。保守層から見た都民ファーストの支持維持の理解できない部分については、「小池都政という中でね、やっぱりそれなりに利権の分配に預かっている人たちっていうのが、むしろそういう人って表に出てこないんですよ」と述べ、そういった層の支持が背景にある可能性を示唆した。
都議選の結果が示す「参院選敗北の法則」
佐々木氏は、かねてから都議選と参院選は「かなりの相関係高い」と指摘している。過去の例として、1965年と1989年の都議選で革新勢力が大きく伸ばした直後の参院選でも同様の傾向が見られたことを挙げた。逆に1977年の都議選で自民党が勢力を伸ばした際には、直後の参院選でも「大勝ちしてる」と解説する。
今回の都議選で自民党が「大敗したっていうのは大きな流れ」であり、「国政選挙の3戦で自民党が勝つと言える根拠がない」と断言。「むしろそれを探す方ね難しい」と、自民党にとって厳しい参院選を予測した。
さらに、自民党の「9年起き敗北の法則」というジンクスについても言及した。これは「9年起きにあの自民党が負けてる傾向がありまして」と述べ、例外は2016年であるものの、「今回その2025年っていうのは当たり年」だと指摘した。
過去の具体例として、2025年から9年遡った2016年は例外的に勝利したものの、その前の2007年には「安倍第1次政権大敗しまして」、2ヶ月後の退陣を余儀なくされた。さらにその9年前の1998年には橋本政権が「大敗してその日のうちに橋本さんが総理大臣を辞任する」事態になった。そして1989年には「社会党が圧勝する」結果となったという。1980年の大平政権時も、本来は負けるところをダブル選挙中の総理急逝により勝利したものの、「基本的にはこの3戦は負けて負けていただろう」とし、「自民党にとってはあの悪夢が蘇ってきた」というジンクスがあると語った。
各党の動向と選挙後の展望
参院選が本格化する中で、各党の動きにも言及した。野党は「減税をみんな口走ってるんでね、ちょっと争点ぼかしというかですね、違いがちょっとよくわからなくなってくる」と指摘した。
自民党については、小泉進次郎農水大臣の入閣による「新効果」も期待されたが、「都議選ではそれほど反映されてなかった」とし、「小泉効果も期待できず残敗必死なんではないかと見られております」と厳しい見通しを示した。
立憲民主党に関しては、野田代表が内閣不信任案をあえて提出しなかったことに対し、選挙後に「自民公明との連立大連立を模索してるんじゃないのかということに対する嫌感」が立民内部や有権者の中にあると述べた。特に蓮舫氏を擁立したことについては、「禁じて」「よく毒まんじゅうみたいなものを担ぎ出したなと」と厳しく批判した。蓮舫氏自身が都知事選出馬時に「渡り鳥になりたくないからもう国には戻らないって言ってそれでこれですからね」と、過去の発言との矛盾を指摘した。
都知事選で話題となった石丸氏の新しい政党「再生の道」については「全員落選」に終わったと述べ、「石丸さん自身はね都議選に候補を要立することが目標だったなどという苦しい弁解してました」と語った。石丸氏の狙いは国政ではなく「3年後の都知事選」にあるとし、「第2位の小池さんを狙ってですね、都民ファーストもそうだったように自分の派閥を作りたい」狙いがあったと分析した。しかし、「同じところに2人も3人も立てたりね、これはねちょっと無理筋」だとし、公約もなく「何をやりたいのか全く分からなかった」と批判した。
維新の会は「相変わらず低迷してますね」と述べ、「元々橋本党ですからね。大阪付近では強いかもしれませんけど、なかなか国民政党にはなりきれてないんじゃないでしょうかね」と見解を示した。
国民民主党については、山尾志織氏の一件を「自爆テロ」と呼び、「ここまで国民民主を壊すかと言われてるぐらいですからね」と厳しい評価を下した。また、減税を巡る「指示率をかなり下げてますのでね」と述べ、国政選挙でその傾向が反映されるかについては「読みきれないところはありまして」と見通しが不透明だとした。自民の受け皿としては「参政党とか日本保守党なんていうのも、あの北村弁護士が立候補するっていうんでびっくりしましたけど。そういったところに分散する可能性はあります」と述べた。
佐々木類氏は、都議選での自民・公明の大敗を、参院選における与党の苦戦を予兆するものと捉えている。過去の都議選と参院選の相関関係、そして自民党に9年周期で訪れる「敗北の法則」に当てはまることを根拠に、参院選でも自民党の「惨敗必死」を予測した。一方で国民民主党や賛成党の伸長を指摘し、野党の議席が増える可能性を示唆。しかし、立憲民主党の戦略の曖昧さや蓮舫氏の擁立に対する批判、維新の低迷、国民民主党の課題など、各党が抱える問題も浮き彫りにされた。はたして佐々木氏の予測通り、日本の政治に大きな変動が訪れることになるだろうか。
コメント