ジャーナリストの須田慎一郎氏が、2025年7月9日時点の参議院選挙序盤戦の状況を分析。参政党の躍進の最大の要因は「複数区」での強さと「メディア露出」にあると解説する。特に、これまで組織力不足から議席獲得が困難とされてきた複数区での勢いは注目に値すると語る。
参議院選挙の鍵は「複数区」にあり
今回の参議院選挙で最も注目すべきは「複数区」だと、ジャーナリストの須田慎一郎氏は語る。複数区とは、一つの選挙区から2人以上の当選者が出る選挙区のことであり、「今回の参議院選挙の鍵を握っている」と指摘する。
これまでの選挙報道では、自民党と野党が議席を争う「1人区」に焦点が集まりがちだった。しかし、参政党や国民民主党といった中小政党が、全国比例だけでなく複数区でも議席を獲得する勢いを見せているという。
参政党、大阪での「驚異的な」躍進
特に大阪選挙区での参政党の動きは「驚き」だと須田氏は強調する。定数4の大阪選挙区は、これまで日本維新の会が圧倒的な強さを誇り、自民党、公明党が議席を分け合う構図が長年続いてきた。しかし、情勢調査では「参政党がここに食い込んでるんではないか」という結果が複数出始めているという。
過去に新興政党や少数政党が複数区で議席を獲得する例はほとんどなく、組織力のない政党にとって複数区での議席確保は非常に困難であるとされている。それにもかかわらず、日本維新の会の地盤である大阪で参政党が食い込んでいる現状は、まさに「驚愕的」なのだ。
都議選での躍進が確信に
須田氏は、参政党が複数区での手応えを感じ始めたのは、参議院選挙に先立って行われた東京都議会議員選挙の結果であると語る。神谷代表は「東京都議会議員選挙だった」と即答したという。都議選では、当初議席獲得が難しいと見られていた参政党が3議席を獲得する躍進を見せた。
特に驚きなのは、公明党の支持母体である創価学会の聖地とされる大田区の選挙区で、公明党が2議席を落とし、代わりに参政党が1議席を獲得したことである。須田氏はこれを見て「新旧交代は確実に起こっているんではないか」と感じたという。この都議選の結果を受けて、神谷代表は「参議院の複数区でもいけるぞ」と確信を得たそうだ。
「オールドメディア」露出が躍進を後押し
参政党の躍進の最大の理由として、須田氏が挙げるのが「情報発信力の強化」、特に「メディア露出」である。これまでの参政党は、SNSやYouTubeを中心としたネット戦略で支持を拡大してきたというイメージが強い。しかし、ネットを見ない高齢者層にはその主張が届かないという限界があった。
しかし、今回の参議院選挙では状況が一変した。国会議員の所属数が5名以上というメディアの基準により、これまで党首討論会に呼ばれなかった参政党が、梅村みずほ氏の加入によりこの条件を満たし、「テレビに登場することができるようになった」ことが大きいと須田氏は指摘する。神谷代表もこの点を認め、「自分たちの主張が届かなかった層にテレビを介して届くようになった。そのことによって支持支援が広がっているんではないか」という見立てを立てていると語る。
須田氏も「テレビに登場することができるようになったということが参政党の躍進に繋がっているんではないか」と同意する。参政党の躍進をSNSやYouTubeのみに帰結する見方は、「全く的外れな評論になってしまう」と警鐘を鳴らす。
皮肉な構図と今後の展望
現在、オールドメディア、特に左派リベラル陣営は、参政党に対して批判を強めている。しかし須田氏は、この批判的な報道もまた、参政党のメディア露出に繋がり、結果的に有権者への政策浸透を助けているという「非常に皮肉な展開」になっていると分析する。「オールドメディアが参政党の躍進を支えている」構図がそこにはあるのだ。
今後、参政党への批判はさらに加速していくと須田氏は予想する。各方面に分散していた批判の矛先が、「参政党へ向けて一点集中のような形になってきている」と述べる。7月8日付けの「赤旗」が社会面トップで参政党に関する確執疑惑を掲載していることを例に挙げ、「こういった批判だとか攻撃というのが今後加速度的に拡大してくる」と予言する。
参政党がこれらの批判にどう立ち向かい、複数区での議席を確保しきるのか。「参政党の進化が問われていく」選挙戦が今後も続いていくことだろう。
参政党が、これまで組織力に勝る大手政党が独占してきた複数区で躍進する背景には、東京都議会議員選挙での確かな手応えと、梅村みずほ氏の加入による「オールドメディア」への露出増があったのだ。皮肉なことに、参政党への批判的な報道が、結果として彼らの政策を有権者に届ける一助となっているという構図は興味深い。今後の選挙戦で、参政党がこの勢いを維持し、加速する批判にどう対応していくのか、その「進化」が問われることになるだろう。
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