政治家の鈴木邦和氏が、YouTubeチャンネル「選挙ドットコムちゃんねる」で参院選京都選挙区の情勢を徹底分析した。大阪に次ぐ注目選挙区である京都は、毎回激戦が繰り広げられる。鈴木氏は、自民党の西田昌司氏、共産党の倉林明子氏ら現職に加え、日本維新の会の新妻秀規氏など新人候補の動向、そして「無所属」の二之湯真士氏の存在が、京都の選挙戦を一層混沌とさせていると解説する。
京都のことは京都で決めよ──複雑に絡み合う思惑
京都は「大阪に次ぐ注目選挙区」であり、毎回激しい戦いが繰り広げられている。前回2022年の参院選では、立憲民主党の福山哲郎氏と日本維新の会の井上氏が最後まで接戦を展開した。この時、立憲民主党は「京都のことは京都で決めよ」と大阪を意識したPRを展開し、維新の勝利を阻んだ過去がある。
京都の選挙区を語る上で避けて通れないのが、立憲民主党と共産党の複雑な関係性だ。鈴木氏は「京都に関してはね立憲と共産と関係性ちょっと全国と違ったりとかぐちゃぐちゃしている」と指摘する。2022年には共産党が福山氏への票を流したと見られており、共産党の票が2019年の24万票から2022年には13万票に減少したことからもその影響が伺える。共産党が京都で議席を維持できるかどうかが、今回の選挙でも大きな注目点である。
主要候補者の横顔と強み・課題
今回の京都選挙区では、多種多様な候補者が立候補を予定しており、それぞれにユニークな背景と強み、そして課題を抱えている。
自民党・西田昌司氏は現職で3期目を務める。父も元参議院議員という世襲候補であり、税理士としての実績を持つ。YouTubeチャンネルでは19万人以上の登録者を誇り、「かなり積極財政派で、言いたいことをとにかくぶちまけるるっていうタイプの方になっております」と、その高い発信力が際立つ。しかし、最近の公明党に関する発言で炎上し、公明党の支援が鈍化する可能性を指摘された。また、裏金問題の対象者でもあるが、西田氏自身は選挙前に政治資金収支報告書を提出しており、他の議員とは状況が異なると解説された。
共産党・倉林明子氏も現職で2期目。元看護師であり、京都市議会議員を5期務めた経験を持つ。「倉林さんは個人票を持ってる」「人柄がいいっていうとこもあったりして」と、その人柄と個人的な票の強さが強調された。
立憲民主党・山本一博氏は元衆議院議員で、前職の福山哲郎元議員の長年の秘書を務めた。京都の信用金庫勤務経験があり、公約として食料品ゼロや文化芸術振興を掲げる。「京都で生まれ京都でさして京都のために京都の皆さんために」という地元愛を前面に出す。しかし、衆院選で2連敗している点が課題である。
日本維新の会・新妻秀規氏は関西テレビの有名アナウンサーとして、「報道ランナー」のキャスターを務めていたことから高い知名度を誇る。鈴木氏は「2022年だったら多分勝ってます」と、そのポテンシャルを高く評価する。京都市左京区出身であることから、同郷の前原誠司氏(国民民主党)や村山祥栄氏(全国比例)との相乗効果も期待される。一方で、維新の支持率低下と京都での維新の弱さが課題となる。
国民民主党・酒井庸行氏は元京都府警勤務で、京都府議会議員を4期務めた民主党系の流れを汲む候補。2024年に国民民主党を離党してからの公認であるため、「離党した人が今回国民公認として出しているっていうとこが気になっていて」と、党内の支持がまとまるかどうかが不透明である。また、元は山井和則氏(立憲民主党)の秘書であり、山井氏が現在山本氏を応援しているという複雑な人間関係も指摘された。
れいわ新選組・西郷みなこ氏は教育研究者で3人の子どもの母。「消費税廃止」を強く訴え、安保関連法に反対するママの会など、市民運動での実績を持ちリベラル系の票を削りに来る可能性が示唆された。
参政党・谷口雅子氏は元々参政党を応援しており、「農業はこの国守り」を訴える。20年間勤めた会社を辞め、2023年に京都の亀岡に移住して農業を始めたという異色の経歴を持つ。「農業始めるっていうのは相当覚悟ないとできないと思います」と、その覚悟が評価された。米問題など、農業に関する政策が時流に合っている点、そして参政党の支持率が上がっている点が強みである。
NHKから国民を守る党・木村仁氏はAIエンジニアで、「京都の文化遺産をAIで守る」「動物の命をAIで守る」といったユニークな公約を掲げる。
無所属・二之湯真士氏は、父が元国家公安委員長で元参議院議員という政治家一家の出身。自身も元京都市議会議員(自民党)である。西田昌司氏とは因縁があり、「西田さんの票を削りに行くっていう」ことを目指している。「北陸新幹線」問題に焦点を当てており、特に西田氏が進めるルートに対し反対の立場を取る。京都仏教会など、北陸新幹線に反対する勢力からの支持も得ており、無所属ながらも票を獲得する可能性が指摘された。
混迷を深める主要な争点と選挙結果の予測
京都選挙区の主要な争点は、多岐にわたる。特に「北陸新幹線問題」は京都で「かなり注目され」ており、「どこのルートで通るのか、地下水の問題、そしてお金のことだったりとか 」と、地下水への影響や文化遺産の保護に対する懸念が根強い。京都仏教会も「反対してる」状況である。
また、保守票の分裂とリベラル票の競合も深刻だ。西田氏の票は維新、国民、参政党、二之湯氏によって「全員食い合ってる」状況にあり、一方で共産党と立憲民主党、れいわ新選組の間でも票の食い合いが予想される。候補者同士の複雑な関係性が票の行方をさらに不透明にしている。
公明党の組織票の行方も注目される。西田氏の発言問題もあり、公明党が特定の候補に組織的に票を流すかは不透明だが、「自民党以外にはないですね」と、自民党以外への組織票は考えにくいと見られている。候補者が乱立しているため、前回と同じ投票率であれば当選ラインは下がると予想される。
鈴木氏は、今回の京都選挙区の展開を「安泰の候補いない」「本当にわかんない」と表現し、自民党の西田氏も「全然安泰ではない」と断言する。「真ん中ポジションも左も全員食い合ってる」と、乱立による票の分散が顕著であることを指摘した。当選者の組み合わせは、「保守系が食い合って共産党と立憲が行くとか」「あるいは逆に共産立系両方落ちて自民と維新が行くとか、維新と国民が行くとかそれもありえる」と、あらゆる可能性が考えられる。
しかし、その中でも「西田さんがちょっと有利かなってのは思うんですよね」と、野党乱立パターンで自民党が勝つことは選挙でよく起こる現象だと解説する。一方で、「2人目は特にわかんないですね」と、2人目の当選者については全く予測ができない状況であると述べた。日本維新の会の新妻氏については、「まだ知られてないと思うんですよ。で終盤出ていることが伝わって後半の伸びるのかなあ」と、選挙戦の終盤にかけて知名度を上げて後伸びする可能性を指摘した。
参院選京都選挙区は、候補者乱立による票の分散、各党・候補間の複雑な関係性、そして主要な争点への有権者の反応によって、全く予測不可能な展開となるだろう。はたして「京都のことは京都で決めよ」の精神が今回も発揮され、激戦を制するのはどの候補者なのだろうか。
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