政治ジャーナリストの青山和弘氏が、2022年参議院選挙の投票日が3連休の中日という異例の日程になった背景と、若者の投票行動について深く掘り下げた。氏によると、この日程設定は投票率低下を招く可能性が高いと指摘する。若者の政治への無関心や「自分1人が行っても、みたいな思い」が、期日前投票の周知不足と相まって、投票率に影を落としている実態が明らかになった。
異例の「3連休中日」投票はなぜ実現したのか?
2022年7月10日、参議院選挙の投開票は3連休の中日に行われた。1952年以降、国政選挙でこのような日程が組まれるのは「補欠選挙を除くと初めて」のことであり、SNSでは「投票率を下げて組織票で勝つため投票日の選定が古速すぎる」といった批判が噴出した。
政治ジャーナリストの青山和弘氏は、この異例の日程設定の背景には、公職選挙法の規定と与党内の政治的力学があったと解説する。「選挙は公職選挙法で、国会閉会から24日以降30日以内って決まってる」ため、国会の閉会日が選挙日程を決定づける。通常国会は150日間と決まっており、召集日と延長の有無がカギを握るという。
今回、通常国会の延長がなかったため、結果的に3連休の中日しか選択肢がなかったと林官房長官は説明している。しかし、青山氏は「どうしても日曜日にしなきゃいけないってことはないので」と、月曜日の祝日に投票日をずらすという選択肢があったにもかかわらず、それがほとんど検討されなかったことを厳しく批判する。「投票率を上げるというのはこれ絶対的な善行なので、やはり検討すべきだったんだけれども、これについてはほとんど検討されなかった」と、政府の怠慢を指摘した。
若者の政治離れと「投票しても変わらない」という諦め
街頭インタビューでは、若者から政治への関心の低さや、投票行動に対する諦めの声が多く聞かれた。「自分は全く興味がない」「自分1人が行っても、みたいな思い」といった無関心に加え、「投票したところで何かが変わるのかって思ってるところはあります」という、政治への期待値の低さが浮き彫りになった。
また、3連休という日程が若者の投票行動に影響を与えていることも明らかになった。「すでに3連休で予定が入ってしまってて行く余裕がないので、ちょっと今回は見送ります」「休日使ってまで投票する意味があるのかって思っちゃうところはあります」といった声は、投票行為自体の優先順位が低い現状を示している。さらに、期日前投票の存在を知らない若者もおり、「へえ、知らなかったです」「使ったことあります?使わない、知らなかったです」といった反応が見られた。
青山氏は、このような若者の現状認識が投票率低下に直結すると分析する。「今回の参院戦でより多くの民を反映させるにはどうしたらいいのだろうか?」という問いに対し、氏は「期日前投票っていうのがかなり大きく」なってきており、その存在を「周知させるっていうのは1つ大事」だと述べる。しかし、それだけでは根本的な解決にはならず、「いずれにしても投票率にプラスすってことはない」と認識している。
公明党の強い主張と組織票の行方
この異例の日程には、公明党の強い主張が影響していたと青山氏は明かす。公明党は「東京都議会議員選挙が6月の下旬って大体決まってましたので、ここからできるだけ離したいっていうことを強く主張した」という。その理由として、創価学会が東京都に本部や多くの学会員を抱えているため、都議選に全力を注ぎたいという意図があった。選挙日程が近いと「力が分散しちゃう」ため、「なるべく離してほしいという中で、招集日を遅らせた」結果、今回の3連休の日程かそれ以降しか選択肢がなくなったのだ。
投票率が下がることで有利になるのは、3連休であっても必ず選挙に行く支援者を多く抱える「組織型」の勢力であると青山氏は指摘する。具体的には、「創価学会公明党」の他、「労働組合とかを傘下に持っている立憲民主党とか、国民民主党とか、あとやはり選挙に熱心な支持者が多い共産党とか」が有利になるという。ふわっとした個人に支援される小政党よりも、組織票を持つ勢力が優位に立つ構図が浮かび上がる。
2022年参議院選挙の投票日設定は、公職選挙法の制約と公明党の政治的力学が複雑に絡み合った結果であった。しかし、祝日に投票日をずらすといった代替案がほとんど検討されなかったことは、「怠慢」と批判された。若者の政治への無関心や、投票しても何も変わらないという諦めは根深く、期日前投票の更なる周知だけでは、投票率向上には限界がある。民主主義の健全性にとって不可欠な投票率の向上には、日程設定のような技術的な問題だけでなく、有権者の政治参加意識を高めるための抜本的な努力が不可欠のようだ。
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