2025年7月21日、立憲民主党代表の野田佳彦氏が参議院選挙の結果を受けて記者会見に臨んだ。野田氏は、今回の選挙を「17日間暑い戦い」と評し、公認候補については「ほぼほぼ現状維持」になるとの見込みを示した。国民の石破政権への「ノーと意思表示をした」との認識を示しつつも、政権奪取へ向けた「地味な前進」であったと認め、今後の課題を語った。
一人区での成果と課題、そして比例区の伸び悩み
参議院選挙2025は、立憲民主党にとって「17日間暑い戦い」だったと、立憲民主党代表の野田佳彦氏は振り返る。最終的な議席数はまだ確定していないが、公認候補については「ほぼほぼ現状維持」になるとの見込みを示す。推薦候補や会派所属の無所属議員を含めると「一定の前進にはなるだろう」としながらも、国民民主党や参政党の躍進と比較して「地味な前進」であることを認め、他党の躍進理由を詳細に分析する必要性を強調した。
全体としては、国民が石政権に対して「ノーと意思表示をした」と認識している。今回の選挙は、政権奪取を目指す上での「大事なステップ」であったが、「大きく前進できなかったことについては、その分析を良くしていかなければいけない」と述べ、結果への責任を真摯に受け止める姿勢を見せた。
一人区では野党が「18勝」し、与党(自民党)を「14敗に追い込んだ」ことを「一定の成果」と評価した。これは野党間の「調整をしたことの結果」であり、より多くの選挙区で調整ができていれば、「野党議席の最大化」という目標達成に貢献できた可能性を指摘した。一方で、「もっと自分の党で押し上げる力を持っていればよかった」との反省も述べ、惜敗した選挙区の分析が必要だとした。
複数区では議席を失った選挙区があり、比例の獲得議席数も伸び悩んでいる現状を認める。これは「立憲民主党に対する積極的な支持が広がっているとは言えない状況」であり、「自民党に変わる受け皿として多くの声を結集できるまでには至っていない」との認識を示した。多党乱立の状況下で票が分散せざるを得ないことが要因だとした。
主要政策の推進と野党連携の可能性
立憲民主党が掲げる政策の中でも、特にガソリン税の暫定税率廃止は、車の利用が多い地方で「非常に受け止めていただいてた」と野田氏は認識する。既に衆議院では廃止法案が可決されており、参議院でも「少数与党に追い込める」ため、「実現可能性が十分高まった」と強調した。「10月1日からでも実施みたいな」「速やかに実現をできて成功体験を持ちたい」と述べ、秋の臨時国会での法案提出を目指す方針だ。衆議院では7党が共同提案しており、令和新選組も賛成していることから、「土台はできている」とした。
消費減税については、野党各党で「中身がちょっと色々違います」と述べ、立憲民主党は「食料品ゼロ」を掲げているが、他党は消費税一般の減税や廃止、財源問題で意見が異なると指摘した。それでも、「すり合わせをして、最大公約数で、そして実現していこうと」野党連携の必要性を強調した。
物価高対策については、自民党・公明党政権の対応を「あまりにも無策だった」「取ってつけたように後から給付を言いましたけれども、やっぱり深い洞察がなかったように見えたから、多分国民は受け入れなかっただろう」と厳しく批判する。
農業政策と「令和のコメ騒動」に関しては、一人区での自民党の敗北、特に米主産地での目立つ敗北は、「これまでの自民党政権のツケが出てきた」「負債が一挙に吹き上がってきた」結果だと分析した。立憲民主党が掲げる「農地に注目した直接支払い制度」や「価格はマーケットで決めるが、所得については政策で決める」という考え方が、生産者から広く受け入れられたと評価した。
大連立の否定と野党を中心とした政権模索
野田代表は、自民党との大連立の可能性について明確に否定した。主な理由として、「消費税については見解が違いました。意見が違う」「給付中心の自民党と、これは真向対立でしたね」と、政策の違いを挙げた。さらに、「政治と金の問題についても決着がついてない」「基本的には合意できる部分がなくて」現状では「大連立はありえない」と断言する。「国民からノーという意思表示をされたところと組んでいく必要性はない」と、国民の意思を尊重する姿勢を示した。
自民党が考えを改めれば大連立の可能性はあるかとの問いに対しても、「(考えを)180度変えるとは私は思いませんね」「起こりえないと思ってます」と否定的な見解を示した。
大連立がなければ、「野党を中心とした政権を目指す」ことになるだろうと述べた。野党連携については、「野党各党とはやっていきたい」と述べ、特定の党を除外せず、意見の一致点を探す努力をする姿勢を示す。「消費税の問題も」「暫定税率」など、「一致点を見出す」ことが重要だと強調した。また、「リアリティパワーがなかったら野党を結集したって我々の方は何もできない」と述べ、立憲民主党が衆議院・参議院で「比較第2党である」という事実を野党連携の前提とすることの重要性を強調した。
内閣不信任案の提出と沖縄の米軍基地問題
石破総理の続投の意思表明に対し、野田代表は「何とも言えない」と述べ、明日の記者会見での説明を待つ姿勢を見せた。「外交問題でもですね、あの関税交渉が合意に近づいてなくて、遠ざかっているなら、政権が存続すること自体が国難だという話もありました」と、外交における懸念を表明した。石破総理の説明が不十分であれば、「国難を一層助長するような状況ならば、それはやっぱりね、あの我々としてもより強い気持ちで政権と対決をせざるを得なくなってく可能性もあります」と述べ、内閣不信任案の提出も視野に入れる可能性を示唆した。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に関して、野田代表は「中止をすべきである」との立場を改めて表明した。「予算が膨らんでることとかですね、あの基盤が脆弱であることなど含めて我々は中止をすべきであると」と問題点を指摘し、「沖縄県民のお気持ちをよく踏まえながら、アメリカと協議をしていく」として、公約に基づき与野党問わず方針を貫く意向を示した。
野田代表の会見からは、今回の参議院選挙の結果を「地味な前進」と冷静に受け止めつつも、野党連携による政権交代への強い意志が感じられる。ガソリン税暫定税率廃止や消費減税など、国民生活に直結する政策の実現に向けて、他党との連携をどこまで進められるだろうか。石破政権への不信任案提出の可能性も示唆されたが、国民は立憲民主党を「政権に変わる受け皿」として真に認めることになるのだろうか――。今後の立憲民主党の戦略と野党間の動向に注目したい。
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