政治学者の及川幸久氏が、YouTubeチャンネル「THE CORE」で、トランプ前大統領とプーチン大統領の関係の現状について解説する。西側メディアが報じる両者の「友好関係は破綻」という報道に対し、及川氏はその「裏」を読み解く必要性を訴える。7月3日の電話会談の内容や、トランプ氏のウクライナへの武器提供に関する発言などを詳しく分析し、西側メディアの報道だけでは見えない「本当のことが分からない」国際情勢の深層に迫る。
「トランプ・プーチン友好関係は破綻」報道の裏側──西側メディアの「強調」に疑問符
政治学者の及川幸久氏が、日本のマスコミではあまり報じられていないものの、西側メディア、特にアメリカのメディアが盛んに報じる「トランプがプーチン大統領に対して非常に不満を持っている」という報道の真偽について深く掘り下げた。及川氏は、一時期強調されていたトランプとプーチンの「友好関係」によって、米露関係が「手を組んで新たなことをするんじゃないか」という期待感があったものの、「なんかもうガラっと変わってしまった感じ」だと述べた。
しかし、その一方で「西側のメディアがそこをやたら強調してる」点を指摘し、「西側のメディアって正しいのか」と疑問を投げかける。及川氏は、「西側のメディアは信用しちゃいけないというのが常識になりつつある」ため、「西側メディアがやたらこれを強調するんだとしたら何か裏がありそうだ」と、深読みの必要性を訴えた。
ウクライナ停戦を巡る意見の相違──トランプの失望とロシアの目標
及川氏は、7月3日のニューヨーク・タイムズの記事を引用し、トランプとプーチンの電話会談で「ウクライナ戦争は進展なしと表明」され、トランプが「失望した」と報じられたことを紹介した。また、その翌日の記者会見でトランプがプーチンから「沢山の出鱈目を投げつけられた」と発言し、ロシアへの制裁についても「検討してる」と述べたことを伝えた。
この意見の相違について、プーチン大統領は「この戦争を始めた目的がある」ため、その目的が達成されるまでは停戦に応じない姿勢だと説明した。一方でトランプ大統領は「とにかく無条件で停戦してくれ」と要求しており、両者の意見が「全く違う」ことを強調した。この意見の相違が7月3日の電話会談でも現れ、トランプの失望につながったと、西側メディアは報じている。
パトリオット追加配備と共同生産の真偽──トランプ発言への疑念
西側メディアは、トランプがゼレンスキーとの電話会談で「それまでにない姿勢」を示し、さらに「ウクライナへのアメリカのパトリオットミサイルを追加配備する。さらにはパトリオットの共同生産も検討する」と述べたと報じている。
しかし、及川氏はこの報道に「本当かと疑ってしまう」と述べた。その理由として、まずパトリオットの追加配備は可能性はあるものの、トランプが口で言っているだけなら法的な拘束力はない点を指摘した。さらに、パトリオットの共同生産については「これは無理だろう」と断言する。共同生産には「数年かかる」が、ウクライナは現在「ロシアから大規模ミサイル空爆を受けてる最中」であり、「待ってられない」と、時間的な余裕がないことを強調した。
また、ロシアの超音速ミサイルが既にパトリオットミサイルを「回避してウクライナにガンガン着弾してる」現状や、「パトリオットの発射台を破壊する能力」をロシアが証明していることから、パトリオットが現在のロシアの大規模ミサイル空爆に対して「防衛システムにはならない」ことが分かってしまっていると述べた。
「冷酷な策略」を老してるのか?──サリバン氏の寄稿と武器提供停止の疑惑
及川氏は、トランプ政権の国防長官であるヘグセス氏が「ウクライナの武器提供を停止」していたというNBCのスクープに言及した。これは公式には発表されていなかったが、トランプを支持する人々からは「なんでトランプ政権は未だに武器を提供し続けてるんだとおかしいだろう」という声があったという。
この動きに対し、バイデン政権の国家安全保障担当補佐官だったジェイク・サリバン氏がニューヨーク・タイムズに「トランプはウクライナに対して冷酷な策略を仕掛けてる」というタイトルの論説を寄稿したことを紹介した。サリバン氏は、トランプが「マスコミの前ではロシアに新たな制裁を課すと脅すが全然実行しないじゃないか」と批判し、ウクライナへの「追加支援を検討する」と言いながら、裏では「約束されていた物資の供給を停止してるじゃないか」と、トランプの発言と行動が「逆じゃないか」と指摘している。サリバン氏は、トランプが「ロシアに戦争を終結させるよう圧力をかける意思がない」、「つまりウクライナを見捨てた」と結論付けていると及川氏は説明し、「ジェイクサイバンはトランプの本心を見抜いてるのかもしれない」と分析した。
ロシア側の公式発表──ウクライナではなく「イランの核問題」が中心
及川氏は、西側メディアの報道とは異なるロシア側の公式発表に注目した。プーチン大統領の側近であるユーリ・ウシャコフ補佐官が、ロシア大統領府のホームページでトランプとプーチンの電話会談の内容を詳しく発表していることを紹介した。
それによると、会談の中心は「ウクライナ戦争ではなかった」とし、「イランの核問題だったんだ」と述べた。両首脳が「イランの核をどうするかってことを話し合ってた」と説明し、イランの核問題を「外部の監守体制に戻す」ことや、「アメリカとイランの対立を根本的に解決する」ことについて話し合っていたという。「まさに世界平和の1番重要なところをトランプとプーチンが電話会談で話し合ってる」と強調した。
さらに、今後もこの問題について「連絡を継続しよう」ということが公式に発表されているという。また、エネルギーや宇宙分野を含む「数多くの有望な経済プロジェクト」の実現についても話し合われ、トランプがこの提案に「印象的だった」と反応したことも明らかになった。
及川氏は、ウクライナの停戦についても話し合われたものの「何も変わらなかった」一方で、それよりも「もっと重要なことを話し合ってる」と指摘する。そして、2月に一度止まっていた米露関係正常化の交渉が「再開することが合意された模様」だという情報に触れ、「トランプにとってロシアとの関係正常化の方がウクライナの停戦を巡る意見交換よりも重要なんだということがどうも真相のよう」だと結論付けた。西側メディアの報道だけを鵜呑みにせず、多角的な視点から情報を見極めることの重要性を強調した。
及川幸久氏の分析は、西側メディアが報じるトランプとプーチンの関係破綻説の裏側に、より複雑で重要な動きがあることを示唆している。ウクライナ問題での意見の相違は確かにあるものの、それ以上にイランの核問題や米露経済協力といった「世界平和の1番重要なところ」での議論が進んでいる可能性を指摘した。はたして、西側メディアの報じる「破綻」は、真実の一部に過ぎないのだろうか。そして、メディアの報道だけでは「なかなか本当のことが分からない」という国際情勢において、私たちはどのように情報を見極めていくべきだろうか。
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