ジャーナリストの及川幸久氏が、トランプ・プーチン両大統領によるアラスカでの会談について、その背景と目的を詳細に分析する。会談の日程と場所が持つ象徴的な意味から、ウクライナ紛争の解決策としての「領土売却」と、北極圏共同開発の可能性を読み解く。
会談の日程と場所が示す「隠されたメッセージ」
トランプ・プーチン会談の日程と場所は、単なる偶然ではなく、深い意味が込められていると及川氏は語る。
会談が設定された8月15日は、日本人にとっては終戦記念日という特別な意味を持つ。しかし、カトリック教徒にとっては「聖母マリアの被昇天の祝日」であり、「非常に重要な日」だという。さらに、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスを祝う「フェラゴスト」の祭典に当たり、このことから「トランプ大統領が現代のアウグストゥス皇帝に当たる」というメッセージが込められている可能性があると推測している。
会談場所であるアラスカも象徴的だ。アラスカはかつてロシア領であり、ロシア皇帝がアメリカに売却した歴史を持つ「象徴的な場所」である。この場所の選択は、これからウクライナで起ころうとしていることと同じであり、「領土を売却したその場所」という意味合いがあると指摘する。
ウクライナ紛争の「現実的な」解決策としての領土売却
及川氏は、ウクライナ紛争の解決策として、ウクライナ東部4州の領土売却案が浮上している可能性が最も高いと分析する。
この地域に住む住民の多くはロシア人であり、住民投票では「ウクライナよりもロシアに入りたい」と望んでいるとされる。この東部4州の問題が、これまでの和平交渉が進まなかった最大の原因だった。
そこで、トランプがプーチンに提案したと予測されるのが、ウクライナ東部4州を「350億ドルでウクライナがロシアに売却する」というディールだ。これは「かつてロシアがアメリカにアラスカを売却したように領土売却」にあたる。
この取引は、ロシアによるウクライナ侵攻で西側諸国に凍結された「350億ドル相当のロシアの資産」を、ウクライナが受け取ることで解決を図るというもの。この350億ドルは、ウクライナの「国の復興ができるから」という利点がある。
ゼレンスキー大統領がこのディールを受け入れるかについては疑問が呈されているが、及川氏は、もし彼が受け入れなければ「この政権は即座に打倒される」と予測する。ウクライナの最新の世論調査では「国民の70%が戦争の終結を望んでいる」とされており、国民がこの取引を受け入れるだろうと見ている。
北極圏共同開発と巨大インフラ計画
今回の会談の議題は、ウクライナ紛争だけではないと及川氏は推測する。トランプ大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏が、会談前にプーチン大統領の経済特使であるキリル・ドミトリエフ氏と「3時間にわたって」会談した。ドミトリエフ氏は、ゴールドマン・サックス出身の「アメリカの典型的なエリートのキャリア」を持つ人物であり、ロシアの政府系ファンドを率いている。
この会談は、「大型の投資プロジェクトを話し合っていたはず」であり、「アメリカ側は北極圏の共同開発をロシア側に提案したのではないか」という見方が「ものすごく広く言われている」。
北極圏は「大多数を占めているのがロシア」であり、トランプ政権は北極圏の開発に注目している。そのため、ロシアとの「共同開発」という話が出ているはずだと予測する。
さらに、ドミトリエフ氏は「アラスカとロシアの間、ベーリング海峡(約2km)の間にロシアとアメリカを結ぶ橋(トンネル)」の支持者であり、この巨大なインフラ計画も会談の焦点になっている可能性が高い。
はたして、トランプ・プーチン会談は「ウクライナの領土売却」という大胆な結論を導き出すのだろうか――。
コメント