ジャーナリストの西村幸祐が、「良いグローバリズム」と「悪いグローバリズム」を定義し、世界で台頭する反グローバリズムの潮流を解説する。その上で、安倍元総理暗殺事件以降の日本の政治の「危機的」状況に警鐘を鳴らし、皇位継承問題や戸籍制度の危機、そして「日本人ファースト」の国家戦略の必要性を訴える。
世界で高まる反グローバリズムのうねり
世界中で「反グローバリズム」の波が押し寄せている。ジャーナリストの西村幸祐は、グローバリズムには「良いグローバリズム」と「悪いグローバリズム」の二種類があると定義し、その違いを明確に示した。
良いグローバリズムとは、「人間として分かち合える価値、それは文化的なものが非常に多いですよね。例えばスポーツですとかね、音楽ですとか…そういったものの価値をどれだけ共有できるか」という考え方だ。国境を容易に超え、共有できる価値を大切にするものだという。
一方、悪いグローバリズムは、「世界は全部同じ価値なんだと…国境なんてなくたっていいじゃないか」という考え方だと西村氏は指摘する。これは個々のエスニシティやローカリティ、固有の文化、言語、伝統、習慣を否定し、統一を目指すものであり、「共産主義と同じ」だと西村氏は断言する。冷戦終結後もイデオロギーとして生き残っていると述べた。
西村氏は、トランプ政権の誕生や欧州での動きを例に挙げ、反グローバリズムが世界的な潮流となっていることを説明した。
トランプ政権の政策
トランプ政権の政策について西村氏は、「よくやってると思いますよ。革命みたいなことやってるわけですから。ターゲットはチャイナなわけですよね」と述べ、関税外交の真の狙いは中国共産党の支配するチャイナにあると指摘する。日本の政治家に対し、アメリカの意図を汲み取り、安全保障問題などで「弾を打ち返して」積極的に交渉する姿勢を求めている。
イギリスのEU離脱と移民政策
イギリスのEU離脱は「一つの反グローバリズム的な動きだった」とされ、EUが市場や金融中心で「固有の文化ってものを否定されちゃう」ことに違和感を感じた結果だと説明する。労働党のスターマー政権下でも、移民の永住権取得条件を厳格化(5年から10年への延長、英語能力の審査強化)したことを「素晴らしい」と評価し、これがトランプとの会談でも影響している可能性を示唆する。ロンドンにおける新生児の名前で、伝統的な英国名よりイスラム系の名前が多い現状に英国人が不安を感じていることも言及された。
フランスとドイツの動き
フランスでは、マリーヌ・ルペン率いる国民連合がEU議会で第1党になり、国内選挙でも支持を集めているが、マクロン大統領が連立を拒否している状況だと西村氏は説明する。さらにルペン氏が大統領選挙に出馬できないよう司法が「武器化」されている現状に対し、「フランスの左翼ですら怒っている」と述べ、国民連合が政権を担うのが「自然の流れ」だと見ている。ドイツでは、「極右」と称されるドイツのための選択肢(AfD)が支持率を伸ばし、総選挙で第2位となったが、キリスト教民主同盟などが連携を拒否している状況が語られた。
西村氏は、これらの国々で「若い政治家たちが活躍する背景」として「危機感をみんな持ってる」ことを挙げ、日本のメディアが「愚民化政策」で国民を「考えなくさせる」ことに問題意識を示した。
その他の欧州諸国でも、オーストリアでは反グローバリズム政党が政権を握っており、オランダでも「自国の農民が疲弊する」ことへの反発から農民運動が起きていること、ハンガリーのオルバン首相が「親トランプ」であること、ポーランドやチェコが過去の侵略経験から「自国語を大切にしよう」という意識が高いことが挙げられた。
日本における反グローバリズムと政治の現状
西村氏は、日本の政治状況に対し強い危機感を表明し、特に安倍元総理暗殺事件以降の変化を強調した。
安倍元総理暗殺事件の影響
2022年7月8日の安倍元総理暗殺事件以降、「全部変わっちゃった」と指摘する。翌日の全国紙・地方紙の見出しが共同通信配信の記事を使い「全部同じ見出し」だったことに触れ、「おかしかった」と述べ、「安倍さんが暗殺されてからね、おかしくなった」という見解を示した。
現政権への批判と対中姿勢
岸田政権移行「日本がどんどん埋没していく」状況にあるとし、特に外務大臣の北京訪問時に「党内手続きも取らずにビザ延長ですとか、そういうことをどんどんどんどん勝手に決めてる」こと、また「人民解放軍の統一戦線工作部のトップ」と会談し、「チャイナに対しての批判が多すぎるからそれをなくせと」という密約があった可能性を指摘する。現政権が「北京を向いて」政治を行っていると批判し、トランプ政権との外交ができていない現状を憂えている。
「反グローバリズム」という言葉が馴染みにくい人にも分かりやすく伝えるため、「自立した日本」や「日本人ファースト」といった言葉でその理念を浸透させる必要性を提案する。
外国人問題と安全保障についても、参政党が「外国人を別に排除しようということを言ってるんでありませんと…しっかりルールを決めて治安を守ることが大事」と主張していることを評価し、これを表に出している政党が少ない現状に疑問を呈する。安全保障問題と外国人問題は「きちんとやらないと」日本の生活に不安が生じると強調する。
皇位継承問題と戸籍制度の危機
西村氏は、日本の国体を守る上で極めて重要な問題として、皇位継承問題と戸籍制度の危機を挙げた。
皇位継承問題
今回の国会で旧皇族の皇籍復帰が本来決まるはずだったにもかかわらず、立憲民主党が拒否したことで法案が成立しなかったことを批判する。GHQによる皇室弱体化工作の一環として行われた「親戚降下」による皇族削減の狙いを指摘し、江戸時代に新井白石が「男系がなくなるだろう」という予測に対し、新しい宮家を創設し、そこから皇族が生まれた歴史を例に挙げ、「男系の女性天皇」の重要性を強調する。
「過去において女性天皇は何人かいましたけども、当然男系だったわけですよ。そうしないと先祖がね、大御神に行きつかないわけですよ」と述べ、皇位継承の伝統の重みを訴えた。
戸籍制度の破壊
「選択的夫婦別姓」は「強制的親子別を推薦してるのと同じ」であり、その先には「戸籍制度の破壊」があると指摘する。これは「今のチャイナや朝鮮半島と同じにしたいと思ってる」勢力が、経済活動のみを重視し、移民の流入を促進したいと考えていることと結びついていると警鐘を鳴らし、日本の伝統文化を守ることの重要性を強調した。
賛成党への期待
西村氏は、現在の日本の状況を変えるためには、参政党のような新しい勢力が伸びるべきだと強く期待を寄せる。
「トランプ革命は何を目指してるかっていうと、アメリカがこの20年間で非常に衰弱して、その一番の原因を今取り除いてるわけですよね。それを日本に移し替えたら何ができるかってことを考えるってことは大事」と述べ、トランプ政権の動向を日本の課題解決のヒントと捉える。
日本が「英国と同じようなポジション」に立つためには、「憲法を破棄するなり改正するなりして、とにかく九条をなくすこと」が重要であり、これにより「自由で開かれたインド太平洋ってものを日本が主体的に担うことができるんです」と強調する。これは「大東亜共栄圏と同じ」であるという歴史認識を示した。
参政党が「護憲でもなく改憲でもなく創憲」を掲げていることを評価し、「議席を取ってしていただきたい」と期待を述べている。
西村氏は、グローバリズムの負の側面に対する世界的な反発と、それに対応しきれていない日本の現状に警鐘を鳴らす。特に、固有の文化や伝統を守ることの重要性、移民問題や安全保障に関する毅然とした国家戦略の必要性、そして皇位継承や戸籍制度といった日本の根幹に関わる問題への深い懸念が示された。また、現在の日本の政治状況を「危機的」と捉え、変化をもたらす可能性のある反グローバリズムを掲げる勢力、特に賛成党への期待を表明している。はたして、日本の政治は西村氏が訴える危機感を共有し、必要な変革を断行できるだろうか――。
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