株式会社山猫総合研究所代表の三浦瑠麗氏が、参政党の躍進などで言われる「日本の右傾化」という見方に対し、異なる視点からその本質を読み解く。
「右傾化」ではなく「内向き化」が起きている
三浦氏は、日本で現在起きている現象を「右傾化」と呼ぶよりも、「内向き化」と表現する方が適切だと指摘する。この「内向き化」は、「外交面での孤立主義的傾向」や「内政面での『成長』概念の放棄」を特徴としている。そして最も重要なことは、人々が「今の自分の暮らしを守ること」を重視している点だという。
この内向き化の最大の原因は、日本が直面する少子高齢化であると分析している。人口減少は消費者の減少に繋がり、人々の行動を縮小させる。特に「高齢者は新しいものを欲しがらない傾向が強い」ため、国全体が「成長はもういいんじゃないか」という考えになりがちだ。
参政党の台頭と自民党の変質
この内向き化は、政治や社会の様々な側面で現れている。その一つが、参政党の台頭だ。彼らを支持するのは「ごく普通の市民」であり、社会的保守でありながらも、経済的には財政的な放漫主義を掲げている点が特徴だ。
また、自民党も変質している。安倍元総理の死去後、かつて推進していたグローバリズムに沿った政策から、地方の均衡ある発展といった概念に親しむようになっており、「『改革』という言葉も使われなくなって」きている。
さらに、合理的に解決できるはずの問題が「イデオロギー的な問題としてパッケージ化」される傾向も見られる。議員の帰化履歴問題などが典型例で、これはかつての日本が父系主義であった歴史的背景を無視し、「純血」のような議論に発展する危険性があるという。三浦氏は、この状況をハリーポッターシリーズに登場する「マグルと純粋な魔法族の戦い」のような危険な考え方と結びつけ、警鐘を鳴らしている。
「閉塞感」と「世代交代」への欲求
現在の日本社会で人々が感じているのは、成長がないことへの「閉塞感」だ。そして、この閉塞感を打ち破るための根本的な誘惑が「世代交代」であると三浦氏は分析する。
地方における自民党の支持層も世代交代を求めており、高齢化したリーダー層への不満が溜まっている。石丸慎司氏が東京都知事選で得た票は、石丸氏個人のポテンシャルだけでなく、「『世代交代』への期待が託されたもの」であると考察している。かつて蓮舫氏が喝采を浴びた「行財政改革」といったキーワードが、今では高齢層にしか響かなくなっていることも、この世代間の価値観の違いを反映しているという。
政治は、「何かを守りたいという気持ちを尊重し」つつも、新たな成長への期待を社会に提供する必要がある。内向き化は、人々の「絶望感」や「なぜなのか分からない」という気持ちに根差している。これを解決し、世代交代をアシストすることができれば、日本の内向き化は再び「外向き化」に転じる可能性もある。
政治がこの閉塞感を乗り越え、国民の期待に応えることができるか――
コメント