経済評論家の三橋貴明氏が、「三橋TV」において「お金の正体」と「国家の貨幣の真相」について解説し、これまで多くの国民が信じてきた「財務省は日本国民の銀行預金を政府が借りてまして説明してましたからね国際発行によって」という「貨幣プール論」は誤りであると力説した。特に、2020年度に実施された特別定額給付金10万円を例に挙げ、政府が国債を発行することで、国民の銀行預金が増えるメカニズムを詳細に説明。「税金なんかついてないね」「どこにもどんとこに税金なんです」と、政府支出と税の関係に関する一般的な認識を覆す見解を示した。
特別定額給付金でわかる「貨幣創造の真実」
三橋氏は、特別定額給付金の10万円がどのようにして国民の手に渡ったかを次のように解説した。まず、「日本政府が国債を12兆円発行しました、市中銀行に」そして「日銀当座預金を12兆円借りました」。その後、政府は国民の銀行口座に直接振り込むことができないため、「銀行に対して振り込み指示をします。国民1人当たりの、お預かり金額のデータを10万円増やしてですね。それで増やしましたと」と説明した。
その結果、「日本国民は何もしてないんだけど、10万円預金が増えました」と強調。最終的な着地は、「政府は12兆円の国債発行したから12兆円の赤字になりました。そして同時に国民が12兆円の黒字になりました。日銀も銀行もプラマイゼロだ」と述べ、政府の国債発行が国民の預金を増加させる仕組みを明らかにした。
さらに、三橋氏は「実際はお金動きませんデジタルデータが変わるだけなんですよ」と、貨幣が物理的に動くのではなく、銀行のシステム上でデジタルデータが変化するに過ぎないことを指摘した。このプロセスには「税金なんかついてないね」と断言し、政府の支出が税収に依存するという誤った認識を正した。
財務省の「貨幣プール論」は「ずるい嘘」
三橋氏は、財務省が長年国民に植え付けてきた「貨幣プール論」を厳しく批判した。この考え方では、どこかに「お金のプール」があり、政府が国債を発行することでそのプールからお金を借り入れ、国民の預金が減るというものだ。しかし、三橋氏は「しかもこれ、完璧の嘘じゃないんだよね。嫌な話だけど」と述べ、個人(家計やNPO)が国債を保有する割合が約1.63%に過ぎず、この部分だけは銀行預金が国債に変わっていることを認めた。しかし、残りの大半は日銀当座預金であり、国民の預金が増加しているのが実態であることを踏まえ、財務省の説明は「ずるい」と批判した。
「国の借金1300兆円突破とかやってんだけど、その1300兆円分、皆さんのここに銀行預金が行ったという履歴に過ぎないんだよというのが真相なんですよ」と三橋氏は断言し、政府の国債発行残高は国民に供給された銀行預金の残高に過ぎず、返済の必要はないと主張した。
貨幣の本質は「貸借関係」──ゴールドスミスの事例が示す銀行の預金創造
貨幣の歴史と本質を解説するため、三橋氏はロビンソン・クルーソーの物語と17世紀ロンドンの金細工師(ゴールドスミス)の事例を引用した。ロビンソンとフライデーの例を通して、「貨幣って関係だから貸借関係だから」と、貨幣が信用と約束に基づく貸借関係の証であることを説明した。そして、ゴールドスミスが預かった金貨の預かり証(金象手形)を貸し出し始めたことで、現代の銀行システムが誕生したと解説した。
特に重要な点として、ゴールドスミスが金貨そのものを貸し出すのではなく、「なんとゴールドセスミスはお金貸してくれって言ってくる人に金匠手形を貸し出し始めたんだ」と指摘。これは、現代の銀行が顧客から預金を集めてそれを貸し出すのではなく、信用供与(与信)に基づいて「キーボードを打つ」だけで預金(貨幣)を創造していることと同じだとした。「これが銀行預金の正体だ」と三橋氏は強調し、現代の銀行預金(貨幣)が生まれる方法は、企業や個人が銀行から借りる場合と、政府が国債を発行する場合の二つしかないと結論付けた。
貨幣の「消滅」と税の役割
貨幣は創造されるだけでなく、消滅することについても言及された。三橋氏は「借りたら生まれるんだよ。返したら消えます銀行預金」と述べ、企業が銀行に借金を返済すれば、その分の銀行預金が世の中から消滅することを説明した。
そして、政府の税の役割について「政府の税なんですよ 政府が我々から100万円調税してそれで何やるかと言うと別にあの貨幣のプールに溜め込むわけじゃなくて、国際の相殺で消してしまうから」と解説した。つまり、政府は国債発行で貨幣を供給し、徴税でそれを消滅させているのであり、「帳消しなんだ」と強調した。
財務省のレトリックの「劣化」と国民啓蒙の重要性
三橋氏は、財務省が国民の無知に付け込み、誤った情報を広めている現状を強く批判した。「今時ギリシャとか言い出す」と、財務官僚のレトリックが劣化していると指摘し、真実が知られてきた現代において、これまでの嘘が通用しなくなっているという認識を示した。
最後に三橋氏は、国民が貨幣の本質を理解し、財務省のプロパガンダに対抗する必要性を訴えた。これは、国民が正しい知識を身につけ、この戦いに参加するための「ご協力いただければと思います」という比喩で表現された。この知識の橋頭堡を築くことが、「財務省の崩壊もノルマンディ上陸作戦が成功に終わった後はやっぱり早かった」のと同様に、今後の日本経済を健全に発展させる上で不可欠であると強く訴えかけた。
三橋貴明氏が喝破した「お金の正体」と、財務省が国民に植え付けてきた「貨幣プール論」の虚偽は、日本の経済政策の根幹に関わる問題だ。はたして、国民は貨幣の本質を正しく理解し、財務省の誤った言説に対抗するための「知識の橋頭堡」を築くことができるだろうか――。
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