国際政治学者のジョン・ミアシャイマー氏が、トランプ政権下の米国が「ならず者国家」と見なされている現状を厳しく批判する。また、ウクライナ戦争における西側主流派の言説に異を唱え、プーチン氏の行動、ロシアの軍事戦略、そして戦争後の地政学リスクについて独自の分析を展開する。
トランプが壊すアメリカの信頼
ミアシャイマー氏は、トランプ氏の予測不可能な外交を、「典型的なトランプ流で、その場の行き当たりばったりで行動し、あらゆる脅迫をしては撤回する」と批判する。この行動は、ロシアだけでなく、「インドも中国も、イスラエル以外の他のほとんどすべての国々が米国を見て、『これはならず者だ。これは信頼できない国家だ』と言わざるを得ない」状況を生み出した。
同盟国もまた、米国への不信感を募らせている。日本の外交官は、米国による貿易交渉での「ひどい扱いや、自分たちにとって確実に不利な取引への強制」について不満を述べているという。ミアシャイマー氏は、構造的リアリストとして、日韓が中国に地理的に近いことから米国との同盟にインセンティブがあることを認めつつも、「もし米国が引き続き悪行を働き、トランプ大統領が同盟国を叩き続けるならば、彼らはいずれ中国との何らかの協調を余儀なくされるだろう」と警告する。
プーチンの言動は「一貫している」
ミアシャイマー氏は、西側諸国の主流な見解に対し、プーチン氏の言動は「驚くほど一貫している」と反論する。彼は、「停戦は和平合意が成立するまで行われないことを、当初から明確にしている」と指摘。プーチン氏がトランプ氏に異なることを伝えたという「証拠は全くない」と断言する。
また、ロシアが民間人を標的にしているという西側の言説についても、「ロシアが民間人を意図的に大量に殺害しようとしている空爆を行っているというのは、単に真実ではない」と否定する。ロシアの攻撃は「軍事目標を排除すること」を目的としており、民間人の死は「巻き添え被害」だと説明している。彼は、ガザにおける民間人死者数(推定6万人以上)とウクライナ(1万3千人以上)を比較することで、この主張を補強する。
西側の「ロシア嫌悪」と長期的な敵意
ジョン・ケネディ上院議員がプーチン氏を「凶悪犯」「海賊」「信頼できない」と描写することに対し、ミアシャイマー氏は、これは「西側諸国の Russophobia(ロシア嫌悪)が度を越している」ことの証拠だと述べている。
彼は、ウクライナ戦争が「凍結された紛争」として終結したとしても、米国は敗北を受け入れず、「ウクライナから獲得した領土やより広範な東ヨーロッパにおけるロシアの立場を弱体化させるためにできる限りのことをし続けるだろう」と予測する。その結果、「予見可能な将来において、ロシアとの非常に敵対的な関係を持つことになるだろう」と見通しを語った。
さらに、ギングリッチ氏が主張する追加制裁と兵器供給が戦況を大きく変えるという意見を「ナンセンス」だと一蹴する。既に供給された「膨大な量のもの」が戦場で大きな影響を与えていないことを指摘し、ウクライナが直面している最大の問題は「人員」であり、これは米国が解決できない問題だと強調した。
トランプ政権の予測不能な外交は、米国を「ならず者国家」に貶め、同盟国との関係を悪化させている。はたして、この地政学的なリスクは、米国の国際的地位をどこまで揺るがすのだろうか――
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