ジャーナリストの近藤大介氏が、参議院選挙を目前に控えた状況で、中国が石破政権に対して「選挙直前、石破政権に秋波。なぜだ」と、なぜか急接近している背景を分析する。2024年4月頃から中国が日本に対して様々な「カード」を切っている現状を解説し、その背景には中国経済の悪化やトランプ政権への対抗策に加え、「参院選」という、石破政権を援護射撃する狙いがあるという独自の視点を示す。特に、中国が「小泉進次郎、高市早苗」といった靖国参拝組の首相誕生を警戒している可能性を指摘する。
中国の突然の「秋波」──4つの「カード」が示す接近の意図
ジャーナリストの近藤大介氏は、参議院選挙を前にして、中国がなぜか石破政権に急接近している現象に注目する。「選挙直前、石破政権に周波。なぜだ」と問いかけ、その裏にある中国の意図を探る。
近藤氏によると、2024年4月頃から中国・習近平政権がにわかに日本に近づいてきたという。その具体的な動きとして、4つの「カード」を提示する。
- 日本人学校事件の犯人処刑: 2023年6月に蘇州の日本人学校で発生したバス襲撃事件(中国人女性案内係が日本人親子を庇い死亡)、同年9月18日(満州事変の日)には深センの日本語学校で日本人男子児童が死亡した事件の犯人が、2024年4月21日に「処刑しましたから」と日本側に伝えられた。中国はこれまで犯人情報を隠していたが、このタイミングで処刑を公表したことを「カードとして使ってきた」と近藤氏は見る。
- ブイ撤去: 2024年5月29日、林官房長官が「ブイ撤去」を確認したと発表した。これは、中国が日本の排他的経済水域(EZ)内に無断で設置していた海洋観測ブイが撤去されたことを指す。尖閣諸島付近のブイは2月に撤去されていたが、米国付近のブイも撤去されたことに「何があったの」と近藤氏は疑問を呈する。このブイは戦争にも利用できる海洋情報収集に使われていたという。
- 日本産水産物輸入再開: 2024年6月29日、中国外交部が「日本産水産物を輸入再開する」と正式に発表した。2022年8月の福島第一原発の処理水海洋放出を巡り、中国は「核汚染水である」と猛反発し、日本産水産物の輸入を全面禁止していた。今回の再開は「日本に近づいてきたなと」と感じられる動きだと近藤氏は指摘する。ただし、福島、群馬、栃木など10県の水産物は引き続き除外されており、特に群馬、栃木、長野、埼玉、東京、千葉といった海のない県の水産物が除外されていることに対して「わけわかんないよね」と疑問を呈した。
- 日本産牛肉輸入再開: 2024年7月上旬、中国の何立峰副首相が大阪を訪れた際、「日本産牛肉を輸入を再開する」と発表された。これは2001年のBSE(狂牛病)発生以来、中国が輸入を禁止していたものだ。安倍政権時代に一度口約束があったもののコロナ禍で延期され、今回ついに再開に至った。「もう4つもカード切ってきてるんですよ」と近藤氏は述べ、中国の日本への接近姿勢が顕著になっていることを強調した。
中国が「秋波」を送る2つの理由と「プラスアルファ」の参院選効果
近藤氏は、中国が立て続けに日本へ「秋波」を送る理由を2つ挙げる。
- 中国経済の悪化: 周知のように「中国経済非常悪化してる」と近藤氏は述べる。統計も悪化の一途を辿っており、貿易の活性化を通じて「なんとかその中国経済をV字回復させたい」という狙いがあると見る。
- トランプ政権への対抗: アメリカで「トランプ政権」が誕生する中、中国は「アメリカとの貿易戦争のため周辺国を味方にしよう」「特にアメリカの同盟国を中国側に引っ張ってこよう」という意図で、切れるカードを次々と切っていると分析する。
これら2つの理由に加え、近藤氏は「プラスアルファあるんじゃないか」と独自の視点を提示する。それが「参院選」だ。
2024年7月20日の参院選に向けて、中国が石破民党政権を「援護射撃してるんじゃないか」と近藤氏は推測する。4つのカードを切ることで「中国は敵ではないんだと」というメッセージを送り、石破政権を支えようとしているというのだ。
なぜ中国は石破政権を応援するのか。近藤氏は、「落ち目じゃないの」という問いに対し、去年の自民党総裁選の状況を振り返り、中国が特に警戒している2人の政治家の存在を挙げる。それは「小泉進次郎、高市早苗」だ。
近藤氏は、靖国参拝を行う彼らが首相になることを中国は「絶対にこの首相になって欲しくない」と考えていると指摘する。石破自民党が惨敗し彼ら「靖国参拝組」が出てくることを恐れているという。そのため、「まだ石破政権が続いてくれた方がいいと」考え、そのために今回の行動に出ているのではないか、と近藤氏は分析を締めくくった。
はたして、中国が石破政権に送る「秋波」は、日本の参院選、そして今後の政局にどのような影響を与えるだろうか――。
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