自民党選対委員長の木原誠二氏が、選挙ドットコム編集長の国か氏との対談で、参院選の現状と自民党の主要政策について語る。今回の選挙は、有権者が「細かく中身まで、政策の具体策まで判断をされる」点が20年前と異なるという。木原氏は、物価高対策として現金給付の重要性を強調し、消費税減税には「タイミングがちょっと遅い」と指摘。外交・安全保障においては「日米同盟」と「日本も自らの国を自らで守る」ことの重要性を説く。さらに、外国人問題では「日本人自身が安心をして信頼をできない限り、共生社会はできない」とし、自民党が「違法外国人ゼロ」を掲げる理由を説明する。
「いつも通り厳しい」参院選情勢──自民党が掲げる政策浸透への手応え
選挙ドットコム編集長の国か氏との対談で、自民党選対委員長の木原誠二氏は、参院選の序盤から中盤にかけての選挙戦について語った。自民党は「全選挙に候補者出してますんで」と述べ、候補者たちが「首相と一斉に訴えをして、そして沢山の人が聞いていただいている」ことで、「我々の政策が浸透してきている。手応えは感じています」と現状を分析する。
各社の情勢調査で「過半数を維持できるかどうかが微妙な情勢」と報じられていることについては、「今まで楽だった選挙一度もないので、そういう意味ではいつも通り厳しいな」と率直な感想を述べる。しかし、候補者や支援者が「ものすごく頑張ってるし」、「かなりの人が聞いてくださっている」ため、自民党が主張する経済成長、賃上げ、年金引き上げ、物価高対策、そして「違法外国人ゼロ」といった政策が「だんだん浸透してきてると思うので、手応え感じてる」と語った。
物価高対策の肝は「スピードとタイミング」──現金給付と消費税減税の比較
今回の参院選で有権者の最大の関心事となっている物価高対策について、木原氏は「ものすごくポイントだと思います」と語る。長年のデフレ脱却を経て「お金が回り始めた」今、物価高を乗り越えることが国民生活の豊かさにつながると強調した。
自民党が進めてきた物価高対策として、2年連続史上最高の「賃上げ」、ガソリン価格の「暫定税率よりも深掘りして、ずっと引き下げてきている」こと、7月からの電力・ガス料金引き下げ、昨年の定額減税、そして「103万円の壁を引き上げた効果で、これから5600万人、2万円から4万円の定額減税になる」といったパッケージ施策を挙げた。これに加え、夫婦2人、子供2人の世帯に「12万円お配りをすると言ってる」給付金を「スピーディーに行う」ことが重要だとし、この秋にも公金受取口座を活用して実施する意向を示した。特に「子育て世帯ものすごく苦労しているので、困ってるところに重点的に給付をしよう」と語った。
野党が掲げる消費税減税に対しては、木原氏は明確な見解を示す。まず、タイミングが重要だとし、賃上げや各種減税策を経て、秋には春闘の賃上げや最低賃金の引き上げが本格的に反映される時期を迎えるため、このタイミングでの給付が「物価高を乗り越えていくのは大切だ」と強調する。一方、消費税減税は「システム改修がある」ため、実施はどう頑張っても「来年になってしまう」と指摘し、「タイミングがちょっと遅い」と述べた。
さらに、消費税減税は「一回ぽっきり」と主張する政党もあるが、システム変更に中小企業で数十万、大企業では数十億といった「何千億と民間にお金をお願いをして、また戻すというのが本当にいいのか」と、経済的な負担が大きいことを問題視する。
自民党が目指すのは「一回ぽっきりではなくて、この一回をブースターにして、この後は常に賃金が物価を超えていく、そういう状況を作っていきたい」という好循環だ。消費税は社会保障の貴重な財源であり、「医療介護が増えていきます」と、恒久的な消費税減税は医療介護の不安を増す可能性があると語った。「給付で乗り越えた上で賃金が常に向上していく、そういう好循環に持っていくのがふさわしい」と、給付金戦略への自信を見せた。
「国難」の時代における外交・安全保障──自民党の強みと「トランプ税」への対応
外交・安全保障の厳しい現状についても木原氏は言及する。トランプ氏の関税問題(トランプ税)については、「世の中に誤解があると思う」と前置きし、現状でアメリカと正式に合意できているのはイギリスとベトナムの2カ国のみであり、日本は「交渉のテーブルにつき言いたいことを言って、そして相手からいろんな要求受けてるけど、基本的には突っぱねて国を守っている」状況だと説明した。日本が遅れているという印象は「全く実態と違う」と強調し、政府は「頑張っている」との認識を示した。
これから1、2ヶ月が「勝負」の時期であり、政治の安定が交渉において非常に重要だとし、参院選が「国難の時には日本の政治は少しでも安定をしている中で交渉ができるように持っていきたい」と、今回の選挙の意義を強調した。
自民党の外交面での強みについては、「これまでの日米交渉、それからTPP交渉、CPTPPの交渉」といった「経験蓄積は他にはないものだ」と語る。また、「各国と議員間の交流というのも自民党は非常に深いものがある」と、そのネットワークの広さを強調した。
安全保障に関しては、中国、北朝鮮、ロシアを「武力行使を辞さない国々だということをしっかり認識する必要がある」と現状認識を明確にする。日本が「最もホットスポットにいる」状況において、「アメリカにとって不可欠な存在である」という認識を持つことが重要だとし、「日米同盟」の強化と「日本も自らの国を自らで守る」意思を持つことの二点を挙げた。
野党の憲法観や日米安全保障観が一致していない現状では、「安全保障面で、きちっとした統一的な安全保障政策を持てるのか」と疑問を呈し、「我々は責任を持ってこの選挙を勝たないといけない」と述べた。自民党は平和安全法制を通して「限定的ながらも集団的自衛権」を確立し、「防衛力の抜本強化、GDPの2%まで」に取り組んできたと、その実績を強調した。
外国人問題と「違法外国人ゼロ」──共生社会の実現には「日本人の安心」が不可欠
参院選で注目を集める外国人問題についても木原氏は言及する。海外生活が長く「外国人がたくさんいる社会というのを経験をしてきて」いることから、日本がその状況に「近づきつつあるな。だからちょっと怖いなという感じは私は思ってます」と率直な感想を述べた。
そして、「日本人自身が安心できない限り、共生社会はできない」と語り、自民党が「違法外国人ゼロというのを掲げています」と明言した。「法令は遵守してもらわなきゃいけないし、制度は悪用してもらったら困るし、どういう人がどういう目的で例えば土地を買ってるのかとか、そういったことは透明でなければいけない」と、その背景を説明した。
参政党が掲げる「日本人ファースト」との違いについては、参政党の真意を詳しく知らないと断りつつも、「まず日本人が安心をする、それから信頼をするということが重要だ」という点では共通しているだろうとの見解を示した。外国人労働者の受け入れについては「必要だと思います」としながらも、その前に「もっと働きたいと思ってる日本の方もいる」ので、まずはそうした日本人に働いてもらうための制度作りが優先であると述べた。
ネット選挙時代の挑戦──有権者の「質の向上」と「ジミたん」の役割
木原氏は、20年前と比べて「多くの有権者の皆さんが政策の具体策まで判断をされる」ようになったと、有権者の「質が上がってる」ことを実感しているという。「皆さんが自分で検索できるし、それぞれ党がいろんな主張するので比べられる」ようになったことが背景にある。
自民党に関するYouTube動画にネガティブなものが多い現状については、「ネガキャンを超えられるだけの肯定的な情報を我々はどれだけ出せるか」が重要だとし、自民党の「努力不足」を認めつつ、正確な情報発信に努める意向を示した。
また、自民党の公式キャラクター「じみたん」に言及し、有権者が「一次情報を求めている」中で、スーツ姿の政治家が話すよりも、「親しみやすく分かりやすくそしてタイムリーに話してもらう」ことで情報が伝わりやすくなると期待していることを明かした。
自民党選対委員長である木原誠二氏の言葉からは、今回の参院選が自民党にとって「本当の正念場」であり、「国難」の時代を乗り越えるための重要な選挙であるという強い認識が伺える。物価高対策や外交・安全保障、外国人政策といった多岐にわたる課題に対し、自民党は独自の戦略とこれまでの経験で臨む構えだ。特に、有権者の「質の向上」を実感し、ネットを活用した情報発信に力を入れる姿勢は、変化する選挙戦への適応を示している。はたして、自民党は今回の参院選で過半数を維持し、安定的な政権運営を継続できるだろうか。
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