経済評論家の上念司が、自民党の森山幹事長によるガソリン暫定税率の年度内廃止意向発言の裏側を解説する。この発言が単なる人気取りではなく、国民のインフレへの怒りをかわすための動きであると指摘。さらに、経済政策における「善悪二元論」の危険性や、日本の供給力不足に起因するインフレ問題の解決策について語る。
ガソリン暫定税率廃止の意向表明と国民の怒り
経済評論家の上念司は、「やっぱりやばいと思ったんですね」と、自民党が置かれた厳しい状況について言及する。その中で、自民党の森山幹事長が7月4日にガソリン暫定税率を来年3月までに廃止する意向を示したというニュースが報じられた。この発言は青森県での農家との意見交換の際に出たもので、「今年度で終わるためには12月の税制改正協議でしっかりと決めていくことが大事だ」と語ったという。
しかし、上念氏はこれに対し、「ツッコミどころいっぱい」だと指摘する。この暫定税率廃止の法案は、すでに先の通常国会で衆議院では可決されていたが、参議院で採決に至らず廃案になっていた経緯がある。そのため、森山幹事長の発言に対し、「いろんなところからいや、それは前から決まってた事じゃみたいなね、ツッコミ多数みたいな」状況になったという。上念氏は森山幹事長が「SNSとかも多分やってないでしょうし、そういう意味で見えてないのかもしれない」が、「国民の、このインフレに対する怒りっていうのは、相当なレベルに達している」ことを知るべきだと強調した。
経済政策における「二元論」の危険性
上念氏は、政治、特に経済政策において「二元論」で語ることの危険性を指摘する。「新聞も、消費税の減税やるかやらないかみたいな、二元論で言ってますよね。皆さんは是非、気をつけていただきたいのはこの二元論」だと警鐘を鳴らす。「政治ってそんなに単純じゃない」という。
一方で、「国家の、根幹に関わるところは二元論でいい」とも述べる。例えば、台湾防衛問題はその典型である。台湾が攻撃された場合に日本がどう関与するのか、という点については、「武力による現状変更は断固として反対だと。そういうのは許してはいけないと。アメリカと共に現状を回復するために務めるって言ったら、日本が参戦してくんじゃないのって習近平がビビるじゃないですか」と、明確な姿勢を示すべきだと主張する。台湾が中国に握られれば日本のシーレーンが脅かされ、「日本終わり」だと警鐘を鳴らす。「こういうのは、国家の存立」に関わる問題であり、「男系男子継承とか、こういうのは、二元論でいいのかな」と述べ、拉致問題なども同様に扱うべきだという見解を示した。
しかし、経済政策については「これなかなかちょっと難しいんですよ。善悪二元論ではいかない」と語る。
日本のインフレの根本原因は「供給力不足」
上念氏は、現在の日本のインフレの根本原因について「アベノミクス以降っていうよりも、特にこのコロナ以降、可処分所得をいくら増やしても実質的な所得が増えないという、不思議な現象が起こってる」と指摘する。これは、可処分所得を増やしてもそれ以上に物価が上昇し、結果的に実質所得が減少している現象だという。
この原因について上念氏は、「供給力がやっぱ足らないってところがネック」と明言する。デフレ期には可処分所得を増やせば消費が増えるという正の相関があったが、現在は「供給力がやっぱりネック」となっており、それが経済の「逆相関」を引き起こしていると説明した。
供給力増強こそがインフレ対策の本丸
上念氏は、インフレを抑制するためには、単に現金を給付したり減税したりするだけでは効果がないと主張する。「お金の量をこれぐらいに保ったまま供給力だけ増やすっていうのはできない」という現実を指摘し、「例えば、ビルとか、船とか、自動車を作る能力を、来月2倍にするとかっていうことは不可能」だと語る。
ガソリンの暫定税率廃止についても、「元々取っちゃいけないもんですからいい」としつつも、「結局、色々やっても、限定措置やっても、ボトルネックの供給不足ってところを、なんとかしない限りはこのインフレはどうにもなんねえ」という結論を述べる。
「インフレなんとかしてほしいから消費税負けてくれとか、インフレなんとかしてほしいから給付金よせとか」といった声があるが、「それやってももう全然効かないっていうのが、ここ5年間の傾向」だと断言する。「やっぱりだから物が無いっていうのはやっぱ一番大きい」のだ。
責任与党である自民党は、「この供給不足をなんとかしますって事を、ちゃんとメッセージで言わないと、それはあの経済学の理論でもちゃんと裏打ちされてる事で、正しい事なんですよ」と提言する。具体的な対策として、バターの供給不足における規制緩和や補助金カット、あるいは米の食管制度のような悪影響を及ぼしている規制の緩和などを挙げた。
責任ある経済政策の説明を
上念氏は、森山幹事長が「消費税を守り抜く」といった「言葉遣いが雑」な発言ばかりしていることを批判し、「なんでインフレになってるかってメカニズムの説明もなければ、それが無いから、この対策はこういう風に問題を解決するんですって説明もできない」と、自民党の説明不足を指摘する。
「安倍さんはやっぱ経済理論ちゃんと理解してましたから」と前総理の経済手腕を評価する一方で、「石破さんは、器じゃない」と石破総裁に対し厳しい評価を下している。
現在のインフレが「4%の状況でこれぐらいのもう苦しさが生まれてるわけだから、これが5%、6%、7%したもっと苦しくなる」ため、「インフレを抑制しなきゃいけないっていうところにちゃんとフォーカスして、そのための対策をA、B、C、D、E、F、G、これぐらいありますって言う風にやらないとダメ」だと主張する。しかし、現実として「一挙には解決できない」という。この現実を「国民にちゃんと伝える事が、私は与党の責任」だと結んだ。
まとめ 経済評論家の上念司氏が警鐘を鳴らすように、自民党は参院選を前に厳しい状況に直面している。森山幹事長のガソリン暫定税率廃止発言は、国民のインフレへの不満をかわす狙いがある一方で、根本的な経済問題の解決には繋がらないと指摘された。日本のインフレの真の原因が供給力不足にあるという上念氏の分析は、単純なバラマキや減税だけでは問題が解決しないことを示唆している。責任ある与党として、国民に対し、経済のメカニズムと現実的な解決策を丁寧に説明する姿勢が求められている。はたして、自民党は国民の信頼を取り戻し、難局を乗り切ることができるのだろうか――。
過半数割れカウントダウン!?進次郎&ガソリン暫定税率廃止で危機を脱せれるか!?供給不足解消によるインフレ対策と台湾有事へのビジョンをしっかりと持った政党を応援しましょう!!┃上念司チャンネル
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