経済評論家の上念司氏が自身のYouTubeチャンネルで、トランプ前大統領の「台湾侵攻なら北京を爆撃」という衝撃的な発言の真意について解説した。この発言が日本で大きなニュースとなったが、上念氏は「1年前の発言です」と指摘し、これが過去の報道の「蒸し返し」であることを明らかにした。その上で、トランプ氏が自身の政治資金パーティーで語ったとされるプーチン大統領や習近平主席とのやり取りの詳細を紐解き、その外交戦略の根底にある「力による平和」という思想を解説した。
衝撃発言は「1年前の蒸し返し」
上念氏によると、CNNが報じたトランプ氏の「台湾侵攻なら北京を爆撃」という発言は、昨日日本のメディアで速報として流れ、大きな話題となった。しかし、上念氏はすぐに「先に答え合わせをしておくと、1年前の発言です」と明かし、この発言が2024年の政治資金パーティーでの、支持者向けのものであったことを指摘した。これは「去年も1回報道されている報道の蒸し返し」であり、なぜCNNがこのタイミングで報じたのかは不明だという。
産経新聞などの報道では、「台湾侵攻なら北京を爆撃、トランプ氏習氏に伝えたと説明、献金者向けの会合の音声を」と伝えられていると上念氏は言及した。CNNの報道では、トランプ氏が就任前の2024年に開かれた献金者との非公開会合で、習近平主席に対し台湾を侵攻すれば北京を爆撃すると伝えたことを披露する音声が報じられたという。トランプ氏はその発言によって中国の台湾侵攻を抑止できたと強調し、自身の外交成果としてアピールしたとされている。
「他に選択肢はない」──トランプ流交渉術の片鱗
上念氏は、トランプ氏がこの会合で、ロシアのプーチン大統領や習近平主席とのやり取りを紹介したと説明した。「この話を紹介した」トランプ氏は、北京を爆撃すると脅したのに対し、習主席が「北京と聞き直し」、トランプ氏が「他に選択肢はない」と畳みかけたという。この時の様子を「We have no choiceみたいな感じで言ったみたいですね」と表現した。
トランプ氏は、習主席自身のことを「狂ってると思った」と語り、習主席はトランプ氏の言葉を「10%しか信じなかった、いや、5%でも十分だ」と述べ、台湾侵攻を抑え込んだと主張したという。同様に、ウクライナに侵攻したらモスクワを爆撃すると圧力をかけたことも参加者に披露したそうだが、上念氏は「現在爆撃は行われてませんよね」と述べ、その結果を指摘した。
CNNの元記事には、トランプ氏が「プーチン氏がウクライナを攻撃した場合、モスクワを爆撃すると警告していたことが2024年の資金集めのテープで明らかになった」と報じられているという。この時の発言は、「もしウクライナを侵攻したらモスクワをぶっ壊すぞ。他に選択肢はないんだ」というもので、これに対しプーチン大統領は「信じられない」と語ったが、「でも10%は信じてくれた」とトランプ氏は語ったという。
そして、今回の日本の報道について、上念氏は「同じ事を習近平にも言ってやったんだみたいな、北京爆撃みたいな感じの記事になったという事です」と、日本のメディアが文脈を切り取って報じた可能性を指摘した。
「力による平和」という現実と、日本の報道への警鐘
上念氏は、トランプ氏がこれらの発言を、自身が大統領であればウクライナやガザの紛争を回避できたはずだという「いつもの主張を繰り返した」文脈の中で語っていることを強調した。ニューヨークとフロリダで行われた資金集めパーティーでの録音テープは、複数の情報源から入手されたもので、トランプ氏の「より開放された一面」が映し出されているという。
トランプ氏は、強引な外交政策戦略だけでなく、学生抗議者の国外追放や、福祉関係者が民主党に投票するという自身の意見についても語っていた。最近では、プーチン氏の和平合意への不満を表明し、ウクライナへのパトリオットミサイルの供給再開を宣言するなど、その外交姿勢は揺れ動いている。
上念氏は、昔の資金集めパーティーで語っていたような「ビシっと言って戦争止めると言うことであれば、ある意味メイクアメリカグレートアゲインなんじゃないかなと」と述べ、現在のロシアに対する弱腰な交渉よりも、「ずっとマシなんじゃないかなと思いました」と評価した。
最後に、上念氏は「力による平和ね、色々異論あるかもしれませんけど、これが現実」だと語り、日本の報道が今回の発言を「煽りすぎかなと」感じたことを示唆し、冷静な情報分析の重要性を訴えた。
トランプ氏の「北京爆撃」発言は、その真意と文脈を読み解くことが重要だ。かつての資金集めパーティーでの「力による平和」を主張するトランプ流の外交戦略は、賛否両論あるだろう。しかし、それが国際政治の現実の一端を示していることは確かだ。
はたして、日本のメディアは、今後もこのような国際的な発言を、その背景を深く掘り下げずに報じ続けるのだろうか――。情報を受け取る側も、その真偽と文脈を冷静に見極める必要がある。
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