経済評論家の三橋貴明氏は、相次ぐ選挙敗北にもかかわらず辞任を拒否する石破首相の姿勢を批判した。両院議員懇談会が「ガス抜き会」であったと指摘し、両院議員総会での総裁選前倒し決定は「間違いない」と見通す。その方式次第で高市早苗氏の総裁就任の可能性が大きく左右されると解説した。
石破首相の「辞任拒否」が招く前代未聞の事態
三橋氏によると、衆議院の過半数割れの後も辞任しなかった自民党総裁は、過去に例がなく石破首相が初めてだという(過去には羽田孜首相の例があるが、自民党総裁ではない)。現在、自民党は衆参両院で少数与党という「前代未聞」の状況に陥っている。
石破首相が辞任しない理由として、当初は「トランプとの関税交渉が国難である」や「首都直下地震や南海トラフ巨大地震に備えるため」と述べていたが、後に「日本の国益を守り、世界に貢献するため」と発言が変遷しており、「とにかく辞めない理由があれば何でもいい」という見方がされていると三橋氏は指摘する。
石破首相の辞任拒否と、自民党の国会議員たちの危機感の高まりを受け、森山幹事長らの執行部によって両院議員懇談会が開催された。しかし、この懇談会は「選挙の総括」を名目としていたものの、実態は石破首相に対する「ガス抜き会」であったと三橋氏は指摘する。
懇談会は28日に開催され、当初予定の2時間半を大幅に超える4時間半にわたる長丁場となったが、石破首相は意見を受け止める姿勢を示しつつも、辞任には応じなかった。
「リコール」秒読み?両院議員総会で総裁選前倒しへ
自民党には、事実上の総裁「リコール」手段として「両院議員総会」という制度が存在する。両院議員総会は、自民党の国会議員(衆議院議員・参議院議員)と、47都道府県の代表1人ずつによって構成される。総会の開催には、国会議員の1/3以上の要求が必要だ。
三橋氏によると、既に先週(動画収録時点の25日)の時点で、この1/3の署名は「余裕で集まっており」、現時点では半数に近づいている状況だという。反石破グループは、両院議員懇談会での石破首相の態度を見て、署名を提出し、両院議員総会を開催する方向で動いている。森山幹事長など執行部が署名の確認などで引き延ばす可能性も指摘されているが、開催自体は「間違いない」とされている。
両院議員総会では「重要事項の決定」が行われ、その中には「総裁選挙の前倒し」が含まれる。もし総裁選の前倒しが決定されれば、石破茂氏は「史上初めて『リコールされた自民党総裁』」となることになると三橋氏は解説する。通常、両院議員総会の開催日時が決定するか、総裁選の前倒しが決定すれば、現職の総裁は辞任することが通例だ。しかし、石破首相がその決定後も次の総裁選に立候補する可能性もゼロではないものの、「推薦人20人の確保は困難」であると見られている。
総裁選挙の方式が高市早苗氏の命運を分ける
総裁選挙には主に2つのパターンがある。
一つは「フルスペック」方式だ。これは党員による投票が行われ、その結果も加味して総裁を選出する方法だ。昨年(2023年)の総裁選はこの方式で行われ、党員票では高市早苗氏がトップだったが、決選投票で石破氏に逆転された。もし今回もフルスペックで行われる場合、党員票が再び高市氏に集まれば、「総裁となる可能性が高い」と三橋氏は見ている。
もう一つは「両院議員総会での選出」方式だ。これは党員票の投票は行われず、両院議員総会(国会議員と都道府県代表)によって選出される方法だ。この方式は「密室で決めるようなもの」とされ、この方式の場合、高市早苗氏が総裁になる可能性は「100%ない」と三橋氏は断言する。これは、高市氏が「日本の国益を考える保守的な積極財政派」であり、特定の勢力(中国やアメリカと深い関係を持つ議員など)にとって「都合が悪い存在」であるためと説明された。
自民党の凋落は止まるのか?
三橋氏は、現時点での自民党は「常識が通じない」「腐り切っている」状態だと認識しており、両院議員総会で密室的な総裁選出が行われれば、自民党の凋落は「さらに止まらなくなるだろう」と見通す。野党は、石破内閣のまま国会に突入すれば、内閣不信任決議案を提出する可能性が高いと分析されている。
結論として、現状の政治の混乱は「石破首相が辞任しないことに全てが起因している」という見解が示された。
相次ぐ選挙敗北にもかかわらず、辞任を拒否する石破首相。そして、その進退を巡って水面下で進む自民党内の動き。経済評論家三橋貴明氏が指摘するように、もし両院議員総会で「密室」での総裁選出が行われれば、自民党の信頼はさらに失墜し、国民の政治不信は深まるだろう。
はたして、自民党は国民の信を問う「フルスペック」の総裁選を実施し、真に国民に選ばれるリーダーを選出するのだろうか――。それとも、党内の都合を優先し、密室での決定を強行するのだろうか。日本の未来を左右する自民党の選択に注目が集まる。
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