2025年7月、参議院選挙の結果を受け、衆参両院で過半数を割った自民党は、厳しい国会運営を迫られている。文藝春秋PLUSのインタビューでは、現政権の動向と今後の国会運営について詳細な分析が展開された。
石破政権下の国会運営と「パーシャル連合」
石破総理は、記者会見で直接的な表現は避けつつも、今後の国会運営について「パーシャル連合」の方針を示している。これは、法案や案件ごとに協力相手を選び、柔軟に国会を運営していくという姿勢だ。例えば、秋の補正予算では、消費減税を阻止したい財務省の意向もあり、立憲民主党の給付金提案を取り入れる形で協力を模索する可能性が指摘されている。
自民党の国対関係者の間では、「意外とやっていけるのではないか」という意見が強いという。前回の衆議院通常国会も少数与党であったにもかかわらず、「自公が出してる法案、通ってる現実がある」ことから、自民党が長年培ってきた「政治のノウハウ」が国会運営を可能にすると見られている。
しかし、現段階で自民党が特定の政党と「がっつり組むことはありえない」との見方が優勢だ。特に衆議院選挙が近いと言われる中で、立憲民主党などと連立を組むことは、共倒れのリスクをはらみ、得策ではないと考えられている。
石破政権の命運を握る森山幹事長
石破政権において、自民党の森山裕幹事長の存在は極めて大きいと見られている。森山氏は「自民党のドン」と呼ばれ、立憲民主党の野田氏とも深いパイプを持つ。渡辺氏は、「石破さんとしても、森山さんなしにはなかなか政権運営できない」と語り、森山氏が「ダム」のように石破政権を支える存在だと表現した。両者の関係は「セット」であり、「どっちが上か分からない」ほどだが、この「セット」は「国民受けが悪い」と指摘されている。特に、森山氏が「消費増税守る」と発言したこともあり、政権は「どんどんジリ貧になっていく」可能性も懸念される。
野党の戦略と「対決」姿勢
野党、特に国民民主党の玉木雄一郎氏や参政党、日本維新の会は、自民党との「対決」姿勢を維持することが次の選挙にプラスに働くと考えている。そのため、当面は自民党に協力しないスタンスを取る可能性が高い。渡辺氏は、「対決の方が次の選挙にはプラスになる」と述べ、野党は自民党との距離感を保ちながら、来るべき衆議院選挙に向けて党勢拡大を図ると予測する。
自民党の「生存本能」と一本釣りの行方
自民党は衆議院で過半数を割った状況でも、「足りない議席を一本釣りしてきたり、抱き込んだりして票をかき集める」ことに長けているという。このような「人さらい」のような工作は、通常1年程度の時間をかけて行われるとされる。
具体的な「狙い目」として、参議院では、AIの専門家で若者に人気の高い「安野貴博」氏や、NHK党で唯一の議員となった「斎藤健一郎」氏が挙げられている。彼らが自民党からの「悪魔の誘い」に乗るかどうかが注目される。
しかし、衆議院では「立憲、国民、維新この3つがキャスティングボート握ってる」状況であり、参議院の運営も「参政党の動向いかんに参議院の運営はかかってる」と見られている。
参政党の独自性と「日本人ファースト」
参政党の神谷宗幣氏は、全国で「龍馬プロジェクト」という議員の勉強会を200人規模で開くなど活発に活動している。渡辺氏は神谷氏を「なかなか面白いやつだな」と評し、彼の「右寄りのイデオロギー」や「日本人ファースト」という思想は「昔からああいう思想」であり、「変わってない」と述べた。
また、参政党は「自民党とは違って背骨がある」と評される。さらに、「マーケティングが非常に得意」であり、神谷氏は「計算で炎上させることを言ったり」することもあると指摘されている。「相当数字にも細かい」タイプだという。
宮崎氏は、参政党の政治スタイルが「小泉さんが目指してるような政治スタイル」だと指摘する。従来の団体票に頼る政治ではなく、「B to C的な感じでやるべきだ」と小泉氏が語るように、有権者一人ひとりにメッセージを送る形での政治を参政党が「やっている」というのだ。これにより、参政党は「れいわ新選組や既存の保守層の票も取り込む」ことに成功し、小泉氏の再登板をもってしても「参政党の票が戻ってくるかは限らない」状況だという。
衆参両院で過半数割れという厳しい状況に直面する自民党は、「パーシャル連合」と長年の「生存本能」でこの難局を乗り切ろうとするだろう。しかし、国民の支持を失い、「じり貧」となっていく可能性も指摘される。一方、参政党のような新たな政治勢力が台頭し、旧来の政治スタイルに変革を迫る中、自民党はどのように国民の信頼を取り戻し、国会運営の主導権を維持できるだろうか――。森山幹事長の辣腕、そして野党の動向が、今後の日本の政治の行方を大きく左右することは間違いないだろう。
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