オラガ総研代表・牧野知弘が警鐘!不動産アクティビストと外国人投資家が変える日本の国土

オラガ総研代表・牧野知弘が警鐘!不動産アクティビストと外国人投資家が変える日本の国土 国内政治
オラガ総研代表・牧野知弘が警鐘!不動産アクティビストと外国人投資家が変える日本の国土

オラガ総研代表の牧野知弘氏が、日本の不動産市場で猛威を振るう「不動産アクティビスト」の活動とその影響について語る。彼らの要求により売却される都心の一等地が外国人投資家の手に渡り、「日本のいいビルや家がどんどん外資系に買われていく」現状に警鐘を鳴らす。外国人による不動産購入と価格高騰の実態、そして「一般市民はもう東京は住めない」という懸念が示され、日本独自の不動産規制の必要性を具体的な提案とともに訴える。

「物言う株主」が日本の大企業を揺さぶる

オラガ総研代表の牧野知弘氏は、近年日本の不動産市場で存在感を増す「不動産アクティビスト(物言う株主)」の活動について解説する。彼らは、日本の大企業が「不動産の上であぐらをかいてるんじゃないかと」、あるいは「本業にもっと投資しなさいと」と提言しているという。

大企業が都心部に保有する不動産は、テナント収入を得られるため「一生懸命稼がなくても自分たちの給料出ますよね」という状況を生み出していると牧野氏は指摘する。アクティビストは、こうした不動産投資の資本効率が低い(都心部のキャップレートが3~3.5%程度に対し、世界的ベンチマークは8%程度)と指摘し、含み益を現金化し、本業への投資や株主への配当を求めているのだ。

その具体的な例として、恵比寿ガーデンプレイスの事例が挙げられる。サッポロホールディングスに対し、アクティビストはガーデンプレイスを含む不動産事業の「スピンオフ(本体からの分離)」を要求。これは、不動産事業を外部化し資本効率を高めることで、得られた資金を「本業に投資することによって本業の事業をもっと良くしようと」という目的があった。サッポロホールディングスはこの要求を受け入れ、現在入札が進行中(報道によると4000億~5000億円の価格がつく見込み)という。

また、大手町にある産経ビル(富士メディアホールディングスが保有)の事例も紹介された。坪単価4万円で、ビル1棟の価値は1500億~1700億円と評価されるこのビルに対し、アクティビスト(村上系ファンド)は株式の33%取得を目指し、産経ビルを中心とした不動産のスピンオフを提案した。「なんで産経新聞社が7階から14階まで使ってるのと、それだったら全然別の古いビルやもっと違うところでやればいいじゃないと」と指摘されているという。

アクティビストの要求は、企業が本業に集中し、不動産事業をプロに任せて収益を本業に再投資することで、企業価値を高めるというものだ。一部のメディア社長は「不動産収益があるから我々は収益に頭を悩ませることなく良い記事がかけるあるいは良いその番組が作れると」と反論するが、牧野氏はこの反論を「詭弁」とし、「本質的にいい仕事してないよねと」と指摘する。不動産を保有し続けることで「真面目に働かなくても家賃で飯食えるからまあいいやと」という状況になり、サボる方向にも使われかねないという。

「法人版の地上げ」:日本の不動産が外国人投資家に「食い荒らされる」

アクティビストによって企業が放出する不動産を「買っているのは外資」と牧野氏は語る。入札には日本のデベロッパーも参加するが、競争で「日本のデベロッパーが競争で負けちゃうんですね」。日本のデベロッパーが落札する場合でも、「デベロッパーが組んでいるパートナーは全部外資です」。

結果的に、「日本のいいビル東京のいいビルとかいい家がどんどん外資系に買われていく」。これは「法人版の地上げ」であり、「日本の不動産が外国マネーによって食い荒らされていると」いう見方ができると牧野氏は警鐘を鳴らす。

外資系ファンドは、日本人デベロッパーと共同で取得し、バリューアップして売却するなど、様々な戦略を組んでいるという。この現状に対し、牧野氏は「外国人の貸主のマンションで寝起きをし、出社するとデナントの賃料は外資系にお支払いする」という懸念を示している。

不動産価格の高騰と「一般市民は東京に住めない」現実

外国資本の流入により、日本の不動産価格は「グローバルな価格になる」と牧野氏は語る。その結果、日本の平均年収ではマンション購入が困難になっているという。「新築の70平米のマンションを東京都内で買おうとすると1億円を遥かに超えている」。これにより、「一般市民はもう東京は住めない」という状態につながっているのだ。

法人の場合も、家賃がグローバル価格に合わせることで企業の固定費が上がり、結果的に給料に充てられる余裕がなくなる可能性があるという。不動産業界全体で「家賃をみんなであげようと」「上げないと利回りが合わないんで家賃が上がるのは仕方がありませんと」という状況になっているのだ。三菱地所がオフィス賃料を消費者物価指数(CPI)に連動させる契約を結ぶなど、物価上昇分を賃料に反映させる動きもあるという。これにより、「持つものと持たざるもの」の格差が拡大する懸念がある。

三菱UFJ信託銀行のデータでは、都心(千代田区、港区、渋谷区)の新築マンションの20%~40%が外国人による購入とされているが、牧野氏は、デベロッパーへのアンケートでは5%~10%と回答されることが多いと指摘し、このデータが正確ではない可能性を示唆する。実態把握が困難な理由として、中国人が日本でペーパーカンパニーを設立し、法人として購入するため販売側は国籍を把握できない点や、日本人が外国人の代理として購入するケース、さらに中堅以下のデベロッパーがタワーマンションをまとめて購入し、それを外国人に転売する「転売ヤー」の存在が挙げられる。マンションの管理組合総会で、外国人の比率が想定以上に高い(4割~5割)ことが発覚し、コミュニケーションに支障をきたすケースも報告されているという。行政を含め、誰が不動産を購入しているのか実態を正確に把握できていないのが現状だ。

「緩い」日本市場と外国人投資家の動機

日本は、不動産の所有権が完全に保護され、日本人と外国人の間で「完全なイコールフッティング」が成り立っている点で「1番緩い」と牧野氏は指摘する。東南アジア諸国では、外国人による土地の完全所有権が認められない国が多い(例:タイでは現地資本を入れないと購入できない、コンドミニアムは全体の一部の割合までしか外国人が保有できない)。中国ではそもそも外国人は不動産を購入できない。スイスやデンマークでは、許可制を導入しているという。

日本は完全なフリーマーケットである上、「安全だし、街は綺麗だし、しかも香港とかに比べると割安」という点で、世界の富豪にとって非常に魅力的だ。さらに円安の影響で、「バーゲンセール状態」なのだ。

外国資本の流入は、売る側にとっては歓迎されるが、日本全体として見ると「国土の変わり用」や「人々のライフスタイルによる変化」への政治の鈍感さが指摘されている。不動産購入が安全保障上の問題(水源地や離島の買収など)にも絡む可能性も指摘されている。

不動産規制の可能性と「超短期譲渡税」の提案

日本政府・自民党は「国際協定があります」と、不動産規制に消極的な姿勢が見られるという。1994年に166カ国で結ばれたWTO(世界貿易機関)やGATS(貿易サービスに関する一般協定)において、日本は不動産分野を「留保事項」に入れていないため、協定を結んだ各国との間で「国民待遇」、つまり日本人と同じ待遇にしなければならないと解釈されているのだ。

牧野氏は、これは「役人的な発言」だとし、シンガポールのように「飲酒税」などで実質的な障壁を作るなど、制度改編の余地はあると指摘。政治家の仕事であると強調する。

比較的速やかに可能な規制として、「国防上あるいは安全保障上の理由」を挙げることができると牧野氏は語る。既に日本でも「重要土地規制法」が制定されており、原子力発電所や自衛隊基地周辺の不動産取引に一定の制約をかけることができるが、現在の法は「生ぬるくて」、調査や介入の要件が限定的だ。牧野氏は、これを「もっと拡大解釈して」離島や国境に近いエリアでの外国人購入禁止など、「このぐらいやっちゃってもいんじゃないかなと」と提言する。これはニュージーランドやオーストラリアの「原則禁止」型に近い。また、水源地の周辺や農地(食料安全保障上の問題)についても規制を検討すべきだと指摘する。

東京の都心部のようなエリアの価格高騰に対しては、国防上の理由ではなく「居住者」と「非居住者」で区別する政策が有効だと牧野氏は提案する。「在留外国人」として日本に住民票があり、働き、家族を持ち、税金を払っている外国人には日本人と同等の待遇を保証。一方、「単なる投資のためにマンションを買ってそのまま放置する」ケースに対し、税制で差をつけるべきだと主張する。

具体的な提案として、不動産取得税を日本人より高くすることや、シンガポールの「飲酒税(印紙税)」のように、不動産売買契約書に高額な印紙税を課す(シンガポールでは60%)ことを挙げる。これにより、取引の入り口で非居住者からの収益を確保できる。固定資産税の徴収が難しい場合、10年分をまとめて支払わせるなども有効だという。これにより、税金逃れをする非居住者を効果的に抑制できる。

国民民主党などが提案している「空室税」については、「どうやって空室って認定するのか」「事務コストが高い」などの課題を指摘し、非現実的と見ている。また、2拠点居住や多拠点居住を推進する国の政策と矛盾するとも指摘する。

さらに牧野氏は、物件引き渡し直後に高値で転売したり、物件引き渡し前に「購入権」を転売したりする「投資ゲーム」が横行している現状に言及する。「運用なんてめんどくさいことはしない」で、「キャピタルゲインだけを狙って」短期間で売買が繰り返されているのだ。購入権の転売は、登記も不要で不動産取得税も発生しないため、事実上「無税」で利益を得られるという抜け穴になっているという。

これに対し牧野氏は、「超短期譲渡税」の導入を提案する。昭和62年のバブル期にも存在した時限立法で、個人の所得税50%、住民税15%を上乗せする制度があった。これを導入すれば「即転売ヤーはあんまり利益が出ないわけです」。この規制は、投機的な動きを抑制し、市場を冷静にさせることで、全体的な価格を穏やかに下げる効果が期待できる。バブル崩壊時のような「劇的な譲渡規制」は、市場を大きく混乱させるため避けるべきだと強調する。

規制のインパクトと国民の利益

超短期譲渡税のような穏やかな規制であれば、「あんまり怒らないと思ってます」と、バブル崩壊のような大きな下落は起きないという見通しを牧野氏は示す。投機的な動きが抑制されれば、「全体的に下がってくると思うんです」。

現在、「年収700万円の人が今一生懸命住宅ローン借りて家買いますよね、で東京都内だと1億円します」という状況で、住宅ローン返済、固定資産税、管理費などで「年間で300万円」の負担があり、手取り年収550万円の人にとって「無理ですよね」。この「平均的なマンションすら届かないっていうのは異常なんです」。

牧野氏は、「東京の超都心の一等地がうんと高くなる。それは投資マネーがそこに入ってくるから全然構わんないと思うんです」とプロの投資家による市場は許容しつつ、その「一般の市民が巻き込まれちゃってるっていうところに問題がある」と指摘する。一般市民が住宅で「法外な利益を得る」のは、投資マーケットに巻き込まれているだけであり、市場の変化に「めちゃくちゃ脆弱」だと語る。不動産を既に保有し含み益がある人にとっては、価格が下がっても実態は変わらない(元々含み益だったため)ため、過度な懸念は不要だという。

全体的な国民の利益としては「値段下げていった方がいい」。ただし、「人為的にやるとハレーションがものすごいんで、これをどうやってソフトランディングさせるか」が重要だと強調する。

3年から5年以内に何らかの規制がかかる可能性は結構高いと思います」と牧野氏は予測する。しかし、「やらないでしょうね」とも予測する。その理由は「やっぱり都合が悪いから」であり、「売る側からすればそんな規制やられると外国人が買ってくれない相場が下がる」。政治家にとって、票は増えても「お金は入らない」ため、規制導入のインセンティブが低いという。しかし、野党にとっては「チャンス」であり、「野党共通に使える」政策であると牧野氏は語った。

日本の不動産市場は、不動産アクティビストの活動と外国人投資家の流入により、大きな転換期を迎えている。企業の非効率な不動産保有が改善される一方で、日本の主要な不動産が外国資本の手に渡り、都心部の住宅価格は一般市民の手が届かない水準まで高騰している。国際協定や既得権益の壁は大きいが、牧野氏が提唱する居住者と非居住者の区別、印紙税による課税強化、そして超短期譲渡税の導入といった具体的かつ合理的な対策は、日本の不動産市場を正常な姿に戻し、国民の利益を優先するための真剣な検討がなされるべきだろう。政府が国民の生活と安全保障の観点から、適切なバランスを見極め、ソフトランディングを図るような政策を策定することが不可欠だ。

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