2025年7月25日夜、首相官邸前で「石破やめるな」デモが開催された。主催者発表で約1200人が参加し、石破総理の続投を求めた。しかし、このデモは単なる石破支持に留まらず、次期首相候補として浮上する高市早苗氏や、勢いを増す参政党への強い懸念が背景にあることが明らかになった。
「石破やめるな」デモに透ける「反高市・反参政党」の思惑
デモの参加者からは、石破氏に対して「なり得る人の中では一番マシ」という評価が聞かれた。特に、「関東大震災での朝鮮人虐殺があったことを前提に石破総理が話した」ことを評価し、「そういうことを認識しない人に政治の表舞台には立ってほしくない」という声があった。その上で、ある参加者は「極右系の人、例えば高市さんとかが参政党と組んだら最悪」とまで言及している。
別の参加者は、「高市さんは石破さんが辞めるとして手引いている感じだ」と語り、もし「参政党や国民民主党と連立すれば憲法改正に拍車がかかり、最悪の場合徴兵制になる」という極端な懸念を表明した。
これらの声から、「反自民」系の層が「石破やめるな」デモに集まり、「ファシズムに対抗したい」という共通の思いで結びついていることが示唆された。これは、かつて「安倍やめろ」デモに参加していた人々が、今度は石破氏の続投を求めるという形で現れている現象だ。
デモの時間帯、石破総理は軽井沢での会合出席のため官邸には不在だったが、主催者を通じて参加者へのメッセージを送った。主催者が首相からのねぎらいのメッセージを代読すると、参加者から歓声が湧いたといい、石破総理側とデモ主催者との間にコンタクトがあったことがうかがえる。山根氏は、デモの主催者が「そっちの人たち」、すなわち「左翼というか、極左と言ってもいい人たちではないか」と推測した。
次期首相候補支持率:メディアの分析は「甘い」?
FNNの世論調査によると、次期首相ランキングでは高市早苗氏が22.4%でトップに返り咲いた。小泉進次郎氏が16%、石破氏が10%と続く。しかし、自民党支持層に限ると、小泉氏が29.7%で首位、石破氏が20.1%、高市氏が17.8%と順位が入れ替わる。特に70歳以上の層では小泉氏が首位だ。
山根氏は、この結果から「メディアの分析が間違っている」と指摘する。メディアは「小泉氏で世代交代、フレッシュ感を出したら若者の票が戻ってくる、というのは違う」と考えているのだ。なぜなら、「若者も保守層も小泉氏の政策は両方カバーしていない」からだ。そして、「顔をすげるだけでフレッシュ感で勝てると思ったら甘い」と、現状認識の甘さを批判する。
実際に街頭演説を回った体感として、国民民主党や参政党の街頭演説には「来ている人の年齢層が国民民主党や参政党は若かった」という。一方で、自民党候補の演説には「聞きに来ている人は私より年齢が上に見える方がたくさんいました」と述べ、自民党が若年層にリーチできていない現状を憂慮した。
ねじれ国会を乗り切る連立の可能性と経済政策の争点
自民党が衆参両院で過半数を割るねじれ国会では、今後の国会運営において連立が不可避となる。
高市氏が首相になった場合、自民党・公明党に加えて参政党や国民民主党との連立が「正直可能」だと分析された。国民民主党の玉木雄一郎代表は「石破さんとは組めない」と明言しており、これは「高市さんなら組める」という裏返しだと解釈できる。高市氏、参政党、国民民主党はいずれも積極財政・減税を重視しており、「反財務省連合」の可能性が高い。公明党は高市氏を嫌っているものの、政権与党から抜けることはないと見られているため、連立に加わるだろう。
小泉進次郎氏が首相になった場合は、自民党・公明党に日本維新の会が加わる可能性が考えられる。小泉氏は「減税よりも現金給付」を主張するスタンスだ。
岸田文雄氏が首相になった場合も、自民党・公明党に日本維新の会が連携する可能性が高い。岸田氏も小泉氏と同様に「減税は絶対やりたくない。現金給付でなんとかごまかしたい」という姿勢だという。
石破氏が続投した場合は、「立憲民主党との大連立があり得る」と指摘されており、これは「最悪のシナリオ」と表現された。立憲民主党は表向き石破氏に否定的だが、内閣不信任案を出さないなど、石破氏との連携に前向きな姿勢がうかがえる。両者は夫婦別姓や同性婚といった社会制度改革に前向きな点で一致している部分がある。
経済政策に関しては、各候補者のスタンスが明確に分かれる。高市氏は「減税しかないでしょ」という減税派。小泉氏と岸田氏は、減税よりも現金給付を主張し、「本当はどっちもやりたくない」というのが本音だとされる。財務省は「消費減税だけは阻止したい」という意向が強く、恒久減税には強く反対しているという。増税が「誰かの手柄」になりやすい一方で、経済成長による自然増収は「誰の手柄か分からない」ため、財務省は増税をしたがる傾向にあると山根氏は分析した。
石破政権下の日本政治は、過半数割れという未曾有の事態に直面している。このねじれ国会を乗り切るための連立の可能性は、次期首相候補によって大きく異なる。特に高市氏が首相に就任した場合、積極財政・減税を重視する国民民主党や参政党との「反財務省連合」が形成される可能性は高い。
はたして、自民党は国民の支持を取り戻し、安定した政治運営を実現できるのだろうか――。そして、国民が真に望む経済政策は、どの勢力によって実現されるのだろうか。今後の政治動向から目が離せない。
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