2022年参議院選挙の結果は、「日本にとって『最悪』、ロシアにとって『最高』」なものだと国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏は分析する。新ポピュリスト政党である参政党が躍進し、自民党が議席を減らす一方で「親露派の議員はしっかりと当選」した。この結果、日本の国会は「ロシアにとって隙を与え、入り込みやすい状況」となり、今後のロシアによる対日工作がさらに強化されると警鐘を鳴らす。
ロシアにとって「最高」の選挙結果
2022年の参議院選挙は、日本の政治に大きな波紋を広げた。国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏は、この選挙結果をロシアの視点から分析し、日本が直面する危機について警告を発する。新興政党の躍進、与党の弱体化、そして親露派の発言力増加が、日本の安全保障に深刻な影響を与えかねないという。
グレンコ氏によれば、今回の参議院選挙の結果は、日本にとって「最悪」、ロシアにとって「最高」なものだという。その理由として、まず新ポピュリスト政党である参政党の大躍進を挙げる。比例代表では長年の野党である立憲民主党を抜いて3番目の得票率を獲得し、選挙区でも議席を獲得。合計14議席を得るという、新興政党としては異例の躍進だった。
また、与党である自民党は全体的に議席を大幅に減らしたが、その中で「親露派の議員(鈴木宗男氏、西田昌司氏など)はしっかりと当選」したと指摘する。国会全体の勢力図としては、与党が過半数に届かず、中規模政党が乱立する状態となり、意思決定が困難で、国会運営が滞る可能性が高い。この状況は、ロシアから見ると「親露派の躍進、与党の弱体化、中規模政党の乱立により、日本の国会はロシアにとって隙を与え、入り込みやすい状況」であると分析する。今後、ロシアによる対日政治工作や情報工作がさらに強化されると想定されている。
参政党は「ロシアのプロパガンダ」を繰り返す
グレンコ氏は、参政党が自身は親露派ではないと主張しているものの、その言動から「明確に親露的であると見なされています」と断じる。神谷代表は「日本でロシア人が差別されている」「日本はウクライナだけでなくロシアにも支援を行うべき」と発言。他の幹部も「ロシアによるウクライナ戦争はウクライナに原因がある」「この戦争はヌーランドが引き起こした」など、「ロシアのプロパガンダを明確に繰り返しています」と厳しく批判する。
また、参政党の幹部や議員は、自身がロシアのために行動しているとは思わないかもしれないが、「ロシアを甘く見ており、『ロシアと仲良くすることが日本の国益』と考えている」のが事実だと指摘する。彼らの地政学レベルは高くないと評価されており、ロシアの高度な謀略や接触に非常に弱いと考えられている。ロシアの工作員や協力者が「これは日本のためになる、日露友好関係に良い」と促せば、参政党の議員がそれを日本の国益だと信じて実行する可能性が高いと想定されている。
躍進の背景にあるロシアの情報工作
参政党が直接ロシアの工作組織であるという根拠はないが、「ロシアの工作に利用される可能性が非常に高い」とグレンコ氏は語る。日本の情報空間に親露的な陰謀論や、結果的にロシアを利する情報が広がることで、「歪んだ情報空間が作られ、陰謀論を主張する勢力が伸びる状況が生まれています」。今回の参政党の躍進は、「ロシアの情報工作の結果である側面が間違いなくあります」と断言した。
一方で、参政党支持者の全てがロシアや陰謀論に興味があるわけではないことも認めている。単純に保守的な考えを持ち、外国人問題やジェンダー問題、行き過ぎたリベラル政策への反発から支持している人も多数いる。しかし、「愛国心があるとしても、ロシアのプロパガンダに乗せられて、意図せず日本の安全保障を危うくしている可能性がある」ため、注意が必要だと警告する。
自民党の最大の懸念:親露派の発言権増加
参政党も問題だが、政権与党であり続ける自民党こそが最大の問題だとグレンコ氏は指摘する。自民党が全体的に議席を減らしたにもかかわらず、親露派の鈴木宗男議員や西田昌司議員は当選しており、「相対的に親露派の発言権が増す事態になりかねない」と懸念を表明した。
鈴木宗男議員の当選は14万票だったが、「彼の擁立によって自民党に投票しなかった人の方が間違いなく多い」と推測する。彼は当選後すぐに首相官邸を訪れ、石破総理の責任を擁護する発言をするなど、強い発信力と影響力を持っている。石破総理には、自民党の大敗と親露派議員の当選について責任があり、辞任が適切だと述べ、今回の失敗の責任は現在の幹部にあり、「幹部の刷新が喫緊の課題」だと強調した。
民主主義の弱点と国民への提言
今回の参政党の躍進は、「民主主義の弱点の一つ」であるとグレンコ氏は指摘する。独裁国家では起きないような、誤った情報が広まり、それを利用して支持を伸ばすポピュリストが現れる現象だという。
このような状況に対応するには、「『一人一票』の原則が変わらない以上、正しい、正常な言論活動を粘り強く続け、より多くの国民が正常な認識と常識を取り戻し、現実に基づいた判断ができるよう啓発活動を続けるしかない」と提言する。この国会構造は少なくとも6年間続くと見られており、今後、ロシアによる工作への警戒と対抗策が不可欠だ。
2022年の参議院選挙がもたらした日本の政治的混乱は、単なる国内問題にとどまらない。グレンコ・アンドリー氏が指摘するように、それは日本の民主主義の脆弱性を露呈し、ロシアによる工作を容易にする危険を孕んでいる。はたして、私たちはこの危機を乗り越え、日本の正しい道へと回帰することができるだろうか――。
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