作家の川口マーン惠美氏が、著作『ドイツの失敗に学べ』の内容を基に、ドイツが直面する移民政策の失敗とそれに伴う治安の劇的な悪化について警鐘を鳴らす。「ドイツに学べ」という従来の論調を覆し、メルケル政権下の無秩序な移民受け入れがもたらした現状を詳述。日本が同様の過ちを繰り返さないために、ドイツの「自業自得」から学ぶべきだと強く訴える。
メルケル首相の国境開放が招いた「治安の劇的な悪化」
川口氏は、従来日本で言われてきた「ドイツに学べ」という論調に強く反論する。2015年から2016年にかけて、当時のメルケル首相が国境を開放し、大量の移民を受け入れたことが、現在の問題の根源だと指摘する。当時、この政策に警鐘を鳴らした政治家たちは「差別主義者」「反人道的」と批判された。
しかし、その結果は悲惨なものだ。ドイツの治安は「劇的に悪化」し、夜間の外出が男女問わず危険な状況になっているという。暴力事件や殺人事件が増加し、特に違法に入国した人々が銃やナイフを所持し、抗争を繰り返すことで治安が悪化していると指摘。既存の犯罪組織に加えて、新しく入ってきた人々が引き起こす抗争が、一般市民にも被害が及ぶ「飛び火」の状況を生んでいると語る。
ドイツのメディアは、移民問題による犯罪を報じると「差別」とレッテルを貼られることを恐れ、問題を取り上げない傾向があった。しかし、犯罪件数が数字で表れるほどになった結果、国民の間で国境閉鎖を求める声が高まっている。
ドイツの現状とAfDの台頭
「ドイツのための選択肢(AfD)」党は、10年以上前から国境閉鎖を訴え続けてきたが、「差別主義者として叩かれていました」。しかし、最近になり、キリスト教民主同盟や社会民主党といった主流政党が、あたかも自分たちの発案であるかのように国境閉鎖の必要性を主張し始めたという。実際には数ヶ月前から国境での警察による取り締まりが強化され、多くの違法入国者が逮捕されている。
主流メディアからは取り上げられにくいAfDだが、近年その勢力を大きく伸ばしている。特に旧東ドイツの3つの州で行われた州議会選挙では、ある州で第1党となり、別の州では第2党ながら首位と僅差の成績を収めるなど、その影響力は著しい。
ドイツと日本の共通する課題と国際社会における立ち位置
AfDが訴える不法移民の排除、国境の閉鎖といった政策は、トランプ前大統領の国境の壁建設構想と重なる部分がある。トランプ氏の政策は当初批判されたが、バイデン政権も結局は同様の壁建設を進めている。同様の事態は欧米で進行中だ。
川口氏は、ドイツと日本は共に「ダメな国」として類似しており、アメリカに言いなりで自らの主張ができない点が共通していると指摘する。特にドイツは未だに中国への投資を精力的に行っており、危険な状況にあるとされる。
ドイツの政治家やメディアは、自国の失敗をこれまで「プーチン大統領のせいにし、最近ではトランプ前大統領のせいにし始めている」と批判する。これは現実逃避であり、自国の問題に直視していない姿勢だと指摘。来年1月にトランプ氏が大統領に返り咲いた場合、その影響はパリ協定を破棄する可能性もあり、菅政権時代に掲げられた日本のカーボンニュートラル政策にも影響が及ぶと懸念する。ドイツと日本は、この新たな世界的な潮流に取り残される可能性があると示唆された。
「ドイツの失敗」から日本が学ぶべきこと
川口氏は、ドイツの現状は「自業自得」の部分が大きく、日本も同様の失敗を繰り返さないよう、ドイツの失敗から学ぶべきだと強調する。国境を開放し、無秩序な移民を受け入れた結果、治安が悪化し、社会が不安定になるという道筋を、日本は反面教師とすべきだろう。
はたして、日本はドイツの「自業自得」から学び、移民政策や国際関係において賢明な判断を下せるだろうか――。このまま漫然と「自国をリベラル化して保守政治家を落とす」という状況を続けることは、日本の未来を危うくすることに他ならない。
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