政治学者の藤井厳喜氏が、アメリカで社会問題となっている合成麻薬「フェンタニル」の脅威を解説する。フェンタニルの原材料が日本を「中継地点」としてアメリカに密輸されており、これが中国共産党による「間接侵略」の一環である可能性を指摘。日本側の「チャイナとの付き合い方の甘さ」がこの問題を引き起こしていると警鐘を鳴らす。
日本が「中継地点」に? フェンタニル密輸の衝撃
藤井氏は、日本経済新聞が2024年2月と6月に複数回にわたりフェンタニル問題の特集を組んだことに言及する。2月の特集では横浜が、6月の特集では名古屋が「フェンタニルの原材料密輸の中継地点」になっていたことが報じられた。特に名古屋では「中国人がファースキーという会社を設立し、密輸の中継会社として利用していた」という具体的な例も挙げられた。原材料の供給元は、主に中国の武漢にある会社だとされている。
この報道について藤井氏は、日本経済新聞が「親中国共産党的な新聞」であるとの印象を述べ、特に2月の特集では中国を擁護する「チャイナ用語」が使われていると指摘する。記事が「悲劇の責任を一つの国や組織に押し付けられない」とし、メキシコの犯罪組織、各国の政府・企業、そして「強欲資本主義というべきシステム」全体に問題があると結論付けていることは、中国の責任を回避しようとする論調だと批判した。
トランプ政権の視点:中国による「間接侵略」
トランプ政権では、このフェンタニル問題は中国共産党が「政治的な意図を持ってアメリカを弱体化させるために仕掛けたもの」と見なされていた。中国政府がフェンタニル原材料を製造する企業に補助金を出していた疑いも指摘されており、米中貿易交渉において、トランプ元大統領は中国に対しフェンタニルの取り締まりを要求した。
さらに藤井氏は、フェンタニル問題だけでなく、中国によるアメリカへの影響は多岐にわたると指摘する。2020年のアメリカ大統領選挙では、中国が投票機械、偽の投票用紙、偽の運転免許証などを大量に密輸し、バイデン氏や民主党に有利になるよう選挙介入を行っていた証拠が、FBIによって次々と暴かれているとされた。これは単なる選挙不正ではなく、中国が自国に厳しいトランプ氏ではなく、自国に緩いバイデン氏を応援した国際的な謀略であり、「チャイナゲート」と表現される。
フェンタニルの死者数が習近平が最高権力者になった2012年頃から増加していることから、これら一連の動きが計画的な間接侵略の一環である可能性が示唆された。
日本の甘さと今後の課題
日本がフェンタニル原材料の密輸の中継地点となっている背景には、「日本側のチャイナとの付き合い方の甘さ」があると藤井氏は指摘する。日本の「安全・安心な国」というイメージが悪用され、検査の目が緩い日本を経由してアメリカに密輸されるケースがあると考えられている。
日本国内でもフェンタニルに関連した死亡例が出ており、「日本でも被害が拡大している可能性」が示唆された。アメリカの日本大使もこの問題の重要性を日本政府に訴え、調査を促しているものの、日本側の対応は「表面的すぎないか」という懸念が示されている。
藤井氏は、アメリカが農地買収問題などで厳しい対策を取っているように、日本も他国の事例に学び、外国からの脅威に対する対応を強化すべきだと強調する。
フェンタニル問題は、単なる麻薬問題ではなく、中国による「間接侵略」という政治的な側面を持つ深刻な安全保障問題だ。日本の「甘さ」が、アメリカの国益だけでなく、日本の国益そのものを危険に晒している。はたして、日本政府はこの事実を直視し、中国との関係を見直し、「厳格な取り締まりと対策」を講じることができるだろうか――。
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