国際政治学者の藤井厳喜が、2024年6月下旬時点での国際情勢について解説する。イランとイスラエル間の停戦協定の進捗と、今後の核開発問題の行方を分析。さらに、名古屋に拠点を置く中国企業のフェンタニル密輸問題が日米関係に与える影響や、石破政権の外交姿勢への厳しい評価を語る。
中東和平の行方:停戦協定とイランの核開発
2024年6月28日深夜の時点で、国際政治学者の藤井厳喜は、イランとイスラエルの間で「なんとか停戦協定は成立しまして」と報告する。トランプ前大統領自身が発表したこの協定により、一時的に中東全体の和平への道が開かれたかに見えた。しかし、戦争が続いていた両国間では感情的な問題も残っており、停戦協定の即時実施は困難であったと藤井氏は指摘する。トランプ氏がイスラエルに圧力をかけ、爆撃を止めさせたことなどもあり、現在のところ停戦協定は守られているという。
しかし、アメリカ側の目的は、単に軍事作戦を終えることだけではない。「イランを非核協議に引き出してきて、とにかく核兵器開発、絶対にやらないと、そういう合意を得ること、これが一番目的」だと藤井氏は述べる。イランが核兵器開発を完全に諦め、ウラン濃縮も国内で行わないことが求められているのだ。アメリカ、特にトランプ政権は、イランが原子力発電を続けることは許可するが、自国でのウラン濃縮はやめるよう求めている。これは、イランが友好国であるロシアなどから濃縮ウランを購入すればよいという提案も含まれる。これが最終的な「落としどころになる」と藤井氏は見ている。
もしこれがうまくいかない場合、「一度成立した停戦協定が、なんとなく両方で攻撃を再開してしまって、不完全燃焼的な強度戦争と言いますか、そういったものがイランとイスラエルの間でしばらく続く」可能性も考えられるという。イスラエルのネタニヤフ首相はイランの体制転換(レジームチェンジ)まで望んでいるようだが、藤井氏は「そこまでやってしまうとイラク戦争の誤ちを繰り返すことになるので、アメリカの視点からすればそれは絶対にやりたくない」と語る。
また、ロシアのプーチン大統領もこの状況を理解しており、自身の役割はイランを抑え、アメリカにはイスラエルを抑えてもらうことで、中東での大規模な戦争を防ぐという合意がしっかりとできていると分析する。藤井氏によると、ロシアはイランに軍事支援を行っておらず、むしろプーチン大統領はイランのアラグチ外相に対し、「アメリカの案を早く受け入れないと本当にレジームチェンジになっちゃうよ」と諭した可能性が高いという。
さらに藤井氏は、イランの最高指導者ハメネイ師の命が現在トランプ氏によって守られているという驚くべき見解を示す。イスラエルはハメネイ師の殺害まで考えているが、ハメネイ師が宗教的最高指導者でもあるため、彼の殺害は宗教戦争に発展し、戦争が止まらなくなる可能性があるため、アメリカはこれを避けたいと考えているという。今回のB2爆撃「オペレーション・ミッドナイト・ハンマー」は、「中東の永久戦争を終わらせる」という大きな意義があり、大きな戦争への発展の危険性は去ったと見ている。
フェンタニル問題と悪化する日米関係
中東情勢から一転、藤井氏は日本の問題、特にフェンタニル問題に焦点を当てる。中国が原料を輸出していたフェンタニル問題において、「なんと名古屋に大元の拠点があって、これを日経が6月25日に書きました。調査報道でなかなかいい報道だった」と報じられたことを紹介する。武漢にある中国企業「ファースキー」が名古屋に子会社を設立し、そこを拠点に活動していたという。
駐日アメリカ大使のグラス氏は、この問題が中国政府の関与があることを指摘し、「日本も取り締まってもらわなきゃいけないって、もうはっきり言ってます」と述べているという。このフェンタニルが日本を経由してメキシコに送られ、メキシコのカルテルによって製品化されてアメリカに密輸されている現状に対し、メキシコの麻薬カルテルまで日本に進出している可能性が指摘されている。「日本は全く好きだらけ」であり、「石破政権、これではもう日本が国家の体をなしてません。アメリカにも叩かれます」と、石破政権の対応に厳しい評価を下す。「フェンタニル密輸、日本協力してたのかよっていうことですよね。ちゃんと取り締まってくれよと。まずそれやってもらわないと関税の話も貿易の話しもできません」と、日米関係悪化の懸念を示す。
NATO首脳会談と日本の外交問題
6月25日に行われたNATO首脳会談では、トランプ氏の「各国GDPの5%国防費に使い」という意見が通り、アメリカはNATO条約第5条の集団防衛体制を守ることを明言したという。しかし、スペインだけが同意せず、GDPの2%までしか増やさない姿勢を示したため、トランプ氏は関税問題でスペインを追い込むと話しているという。藤井氏は、「日本もそんなことになっちゃうじゃないですか」と、日本も同様の圧力を受ける可能性を示唆する。
また、日米間のコメ交渉が7回も行われているにもかかわらず、「話が全然つかない。一番初めに片付くはずだったんですけどね。全く石破内閣無能」だと厳しく批判する。
さらに、石破総理がこのNATO首脳会談に出席を「逃げました」と藤井氏は指摘する。これは「フェンタニル問題とかその他、やられると思ったんでしょうね。あるいは5%の圧力をかけられるということが嫌で逃げたんでしょうか」と、石破総理の欠席理由を推測する。「全く総理大臣としての職責には果たしておりません」と断じ、「これ日米関係今かなり悪くなってますね。最悪の状況にあると言ってもいいと思います」と警告する。藤井氏自身、50年近く日米関係を見てきた専門家として、「こんな最低の内閣はない」とまで言い切っており、アメリカが悪い部分もあるが、今回は「日本側が悪い」と、日本政府の対応に問題があるという見方を示している。
まとめ 国際政治学者の藤井厳喜氏が語るように、現在の国際情勢は複雑かつ多岐にわたる課題を抱えている。中東では一時的な和平の兆しが見えるものの、イランの核開発問題は依然として未解決のままだ。そして、日本国内で発覚したフェンタニル問題は、日米関係に暗い影を落とし、石破政権の外交手腕が厳しく問われている。NATO首脳会談での日本の立ち位置、そして経済・安全保障における国際的な圧力は、今後さらに強まることが予想される。はたして、日本はこれらの内外の課題に対し、いかに向き合い、解決策を見出すことができるのだろうか――。国際社会における日本の役割と、その舵取りが問われている時期なのかもしれない。
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