評論家の江崎道朗氏は、参議院選挙の主要争点である「外国人問題」が、従来の地方参政権問題に加え、経済と中国からの資産逃避によって複雑化していると指摘した。特に「国家の安全保障の問題」としての側面を強調し、日本が外国人の動向や個人情報を「把握できておらず、非常に危険な状況」にあると警鐘を鳴らした。
「受け入れか排除か」から「徹底監視」へ:9.11からの教訓
日本の政治において、今や無視できない大きな争点となっているのが「外国人問題」だ。評論家の江崎道朗氏は、この問題が単なる労働力不足や人権の問題にとどまらず、日本の「国家安全保障」の根幹に関わる重大な課題であると指摘する。従来の保守派が懸念してきた「外国人の地方参政権問題」に加え、アベノミクスによる経済活性化と人手不足、そして中国からの資産逃避という三つの側面から、問題はより複雑な様相を呈しているという。
江崎氏は、外国人問題が単なる経済問題ではなく、「国家の安全保障の問題」であると強調する。かつては「受け入れか排除か」という二元論で語られがちだったが、アメリカの9.11テロ以降、その考え方は「受け入れても徹底的に監視」へと大きく転換したという。無制限な受け入れではなく、入国する外国人の徹底した監視と情報把握が不可欠だと語る。
その具体例として、アメリカのESTA制度を挙げる。渡航費用が高額であるだけでなく、氏名、生体情報(目、指紋)、SNSアカウント(Facebook、Twitter、Instagramなど)の情報提供が義務付けられている。さらに、「特定の政治団体(例:中国共産党員)への所属も申告する必要があり、虚偽申告は処罰の対象」だ。これにより、アメリカ政府は入国者の個人情報を蓄積し、テロ対策、マネーロンダリング対策、麻薬対策などの観点から動向を監視しているという。
日本の「非常に危険な状況」:情報把握の不十分さ
一方、日本の現状はどうか。江崎氏は「情報把握の不十分さ」に強い懸念を示す。日本では、ビザ免除措置により年間4000万人規模の外国人観光客が訪れるものの、パスポートチェックのみで十分な個人情報が取得できていないという。これにより、日本国内にいる外国人の動向や個人情報が「把握できておらず、非常に危険な状況」だと警鐘を鳴らす。
アメリカからの要請もあり、日本も「日本版ESTA」を導入する方向で動き出しており、2028年(当初2030年)の導入を目指している。これは、国内の外国人の動静や個人情報を把握するための重要な一歩となるだろう。
しかし、江崎氏は日本の行政に根深く存在する「国家安全保障視点の欠如」を指摘する。日本の行政は、国家の安全保障やインテリジェンスの観点から政策を立案する能力が低いという。入国管理(法務省)、国内の治安維持(警察)、外交問題(外務省)など、「関係省庁間の情報共有の仕組みが整っていません」。米国が9.11の反省から、国土安全保障省を設立し、財務省、入国管理局、警察が持つ情報を一元管理しているのに対し、日本には同様の統合された組織が存在しない。これにより、外国人が大量に購入している不動産の資金源など、「深刻な問題に対するチェック体制が機能していません」と江崎氏は現状を憂う。
国民の不安を解消する「日本版国土安全保障省」の必要性
江崎氏は、外国人問題で苦労しているドイツやアメリカなど「他国の教訓を活かす」べきだと提言する。その二の舞を避けるだけでなく、現在日本にいる外国人のごく一部の「問題のある人物」を特定し、チェックする仕組みを構築する必要があるという。
その解決策として、江崎氏が提唱するのが「日本版国土安全保障省」の創設だ。財務省、法務省、厚生労働省、総務省、地方自治体などが持つ情報を一元管理し、テロ対策、麻薬対策、マネーロンダリング対策などを講じるための統合組織が必要だという。これにより、「問題のある人物を特定し、強制送還するなどの適切な対応が可能になります」。
最後に江崎氏は、政府が状況を正確に把握できていないことが国民の不安を煽り、「出ていけ」といった排他的な感情に繋がりやすいと分析した。政府が「状況把握のための仕組みをきちんと構築する」という政策的な解決策を提示することが、不安を解消し、適切な対応を実現するために不可欠であると結論づけた。
「外国人問題」は、単なる経済や人権の議論に留まらない、日本の安全保障を揺るがす喫緊の課題だ。政府が国民の不安に真摯に向き合い、他国の教訓に学びながら、早急に「日本版国土安全保障省」のような統合的な情報管理体制を構築できるだろうか――。この問題への対応は、日本の未来を左右する重要な試金石となるだろう。
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