ジャーナリストの及川幸久氏が、現代社会、特に日本における「信仰心の希薄化と伝統的価値観の喪失」に強い危機感を表明した。パリオリンピック開会式が「多様性やジェンダー(性別の選択)といった最先端の西洋的価値観」を表現し、同時に「トランスジェンダー、近親相姦、性的倒錯」など宗教的に「禁忌」とされてきた事柄を是とするメッセージが込められていたことを指摘。これは「露骨なサタニズム(悪魔崇拝)の特性を帯びている」と分析し、日本の「家」や「結びの力」が破壊されつつある現状に警鐘を鳴らした。
パリオリンピックが示した「サタニズム」のメッセージ
及川氏は、日本の近代・近現代史が「西洋的な思想、経済、働き方などが次々と流入してきた歴史」であり、必ずしもそれが日本にとって良いものばかりではなかったと前置きする。そして、その象徴として、昨年のパリオリンピック開会式のパフォーマンスを挙げる。多くの人々に嫌悪感を抱かせたこの開会式は、「多様性やジェンダー(性別の選択)といった最先端の西洋的価値観」を表現していたという。
さらに踏み込んで、キリスト教の「最後の晩餐」をパロディ化し、伝統的なキリスト教の価値観を冒涜していると解釈された。フランス革命の歴史が取り上げられ、マリー・アントワネットの処刑(ギロチンでの首切り)が儀式的に「祝福」される形で表現されたことに対し、フランス革命は通常「人類史の偉業」とされるものの、実際は「武器を使った暴力革命であり、モラルや社会の崩壊に繋がった」という見方を示した。
この開会式のテーマは、「トランスジェンダー、近親相姦、性的倒錯」など、宗教的に「禁忌」とされてきた事柄を「信じていい」「問題ない」とするメッセージが込められていたと分析する。
2012年のロンドンオリンピック開会式では、病院のベッドと看護師、そして「巨大な悪魔が登場する演出」があり、これは後にパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症を予言しているかのようであったと語り、オリンピックがメッセージ伝達の場として利用されている可能性を示唆した。
「反グローバリズム」の思想:信仰を否定する「サタニズム」
及川氏は、反グローバリズムの台頭と、その背景にある「サタニズム」論を展開する。ロシアのプーチン大統領は、ロシア国内の悪魔崇拝協会を非合法化したことを挙げ、現代の西洋エリートの独裁は、人間を完全に否定し、信仰と伝統的価値観を否定し、自由を抑圧するものであり、「露骨なサタニズム(悪魔崇拝)の特性を帯びている」と分析しているという。これは、西洋社会が自由や民主主義を標榜しながらも、実際には信仰や伝統を否定し、人間性自体を否定しているという批判だ。
アメリカの国防長官ピート・ヘグセスは、トランプ政権の重要閣僚であり、「キリスト教福音派の熱心な信者」であると指摘された。彼は「今すぐ子供たちを公立学校から救い出そう」と主張し、アメリカの公立学校が「無神論者、マルクス主義者、社会主義者、あるいはヒューマニスト」によって教育されていると批判しているという。彼の言う「ヒューマニスト」とは、信仰そのものを完全に否定し、善悪や聖邪の中心を人間性におくことで、事実上キリスト教に代わる新しい宗教、すなわち「サタニズムである」と断じていると語った。これは、神の位置に人間自身が立ち、何が正しく何が間違っているかを人間が決めるという考え方だ。
若者の覚醒と「反グローバリズム運動」の広がり
反グローバリズムは単なる政治的な動きだけでなく、「共通の思想」を持っていると及川氏は述べる。昨年の大統領選挙では、キリスト教福音派だけでなく、「アメリカの若者層がトランプ支持に回った」ことが新たな動きとして注目されている。
若干31歳のチャーリー・カークは、10年前に「ターニング・ポイントUSA」を立ち上げ、全米の高校や大学で「もう一度原点に帰って信仰を持とう」と訴え、信仰に基づいてアメリカを変えるべきだと主張する運動を展開しているという。この運動は若者の間で広がり、キリスト教信仰を復興させ、その力で政治を変えることを目指している。現在では、1回に2万人もの若者(主に20代、30代)を集めるアメリカ最大の政治イベントとなっており、「トランプ氏の再選を大きく支援しました」。
日本の伝統的価値観「結び」と「家」の危機
日本には本来、「結びの力」という伝統的な精神があったと及川氏は語る。「結(ゆい)の精神」とは、例えば茅葺き屋根の葺き替えを地域コミュニティ全体で行うような、「人と人との助け合いや共同作業の精神」であり、これが日本の伝統を長く発展させてきた根源であると説明する。これは、現代の「孤独」の問題に対する解決策としても提示された。
しかし、「選択的夫婦別姓」の議論が、「日本の『家』という伝統を壊し、絆を断ち切ろうとしている」と強い懸念を示した。現行法でも「どちらかにすればいい」という選択肢があるにもかかわらず、「同性を強制するのは人権侵害」「女性差別」「アイデンティティの喪失」といった理由で別姓を推し進める動きがあることに対し、疑問を呈する。自民党内でも意見が割れる中、立憲民主党、公明党、国民民主党、共産党などが推進しており、労働組合が強く推進している背景も指摘された。この問題は、日本の強みであった家族の絆や共同体を壊すものとして、「日本の伝統的価値観が間違っているという前提に立っている」と批判した。
日本の精神は、西洋的な価値観で戦で勝った側が負けた側を皆殺しにするという発想があるのに対し、勝敗が決まった後に「負けた側を大切にする精神」があることが語られた。相撲は、その精神を体現する儀式化された戦いの一例として挙げられた。及川氏の家系が代々相撲取りであり、自宅に土俵があったというエピソードも披露され、相撲が持つ日本の精神性が強調された。
危機感の共有と行動への呼びかけ
現代において、伝統的価値観の喪失に対する危機感を持つ人々が増えており、アメリカやロシアではすでに具体的な行動に移されていることが示された。日本でもこの危機感を共有し、声を上げていくことの重要性が強調された。
及川氏は、現代の日本の信仰は重層的であり、手を取り合うことで「結びの力」を生むことができるという考えを提示した。宗教団体への距離感があるとしても、「シンプルな原点に帰る信仰心は全ての人が持つべき」だと訴えた。
パリオリンピック開会式が象徴するように、現代社会に蔓延する「サタニズム」とも呼べる西洋的価値観の浸透。それは、日本の「家」や「結びの力」といった伝統的価値観を静かに蝕んでいるように見える。及川幸久氏が訴える「信仰心への回帰」と「共同体の再構築」は、この危機的状況を乗り越えるための道しるべとなるのだろうか――。私たち一人ひとりがこの問題に真剣に向き合う時が来ている。
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