評論家の江崎道朗氏が、参議院選挙の主要争点である外国人問題について解説した。江崎氏は、外国人問題が従来の地方参政権問題から、インバウンド増加、外国人労働者受け入れ、そして「中国から大体45兆円から50兆円」もの大規模な資金流入といった要因で大きく変化していると指摘した。その上で、「経済問題とかも大きいんですよ」としつつも、外国人問題は「国家の安全保障の問題」であり、「インテリジェンスの話」だと強調。アメリカの徹底した入国管理・監視体制を参考に、日本も「非常に怖い」現状を早急に改善すべきだと訴えた。
変化する外国人問題の背景──インバウンド、人手不足、そして「地下銀行」
江崎氏は、外国人問題が保守派の従来のテーマであった「外国人の地方参政権問題」から大きく変化していると指摘した。その背景には、第一次安倍政権以降のインバウンド政策による「外国人観光客が大量に来るようになった」こと、アベノミクスによる経済活性化とそれに伴う「人手不足になってきてる」こと、そして習近平政権による腐敗排除運動の結果、「財産を国外に投避させてる」中国共産党幹部らがいることを挙げた。
特に、中国からの資金流出については、「一昨年だけで、中国から海外に逃げたの資金が大体45兆円から50兆円」に上り、これは大阪全体のGDPに匹敵し、中国の国防費を上回る規模だと説明した。これらの資金の一部が「日本にも来ていろんなところの不動産を大量に買ったりとか」していると述べ、それが「全部地下銀行とかデジタル通貨、仮想通貨とか、あと不正経理とか、マネーロンダリングとか」を通じて流入している可能性があり、財務省も注目していると語った。
これらの要因により、日本における外国人の存在感が飛躍的に増し、国民が「どうなの」という不安を抱くようになっている現状を強調した。
参院選の主要争点──労働力、不法就労、地方参政権
今回の参議院選挙における外国人問題の争点は、大きく分けて以下の3点だと江崎氏は解説した。
- 労働力不足への対応(外国人労働者の受け入れ)
- 立憲民主党、公明党、日本共産党は、少子高齢化と人手不足を背景に「外国人労働者をどんどん受け入れるべきだ」と積極的な受け入れを主張し、「多文化共生」や「在留外国人の権利保障」を重視している。
- 一方、参政党や日本保守党は、外国人労働者の「制限を強化をしてあんまり入れるべきじゃない」と受け入れ制限を主張し、永住権・帰化要件の厳格化や社会保障利用への制限を求めている。江崎氏によれば、「外国人問題について厳しいこと言っている党が伸びている」傾向にあるという。
- 不法・違法就労問題(一部の外国人の問題行為への対応)
- 埼玉県のクルド人問題などを例に挙げ、犯罪や生活保護の悪用といった一部の外国人の問題行為への対応が問われている。
- 自民党は「違法外国人ゼロ」を掲げ、「在留管理制度の司令塔になる新組織作りますよ」と提案している。日本維新の会や国民民主党は、外国人による「土地取得の制限とか不動産購入の規制」を主張。東京などで不動産価格が高騰し、若者が不動産を購入しにくくなっている現状から、「日本の資産を買われてるみたいに思ってたけど」という懸念が国民に広がっていると述べた。
- 地方参政権問題
- 立憲民主党や日本共産党は、外国人の地方参政権を認めるべきだと主張している。
- これに対し、保守系の政党は否定的な意見を持つ。自民党内にも約3分の1が肯定的意見を持っているとされ、党内で意見が分かれている状況だと述べた。
国家安全保障の視点──アメリカに学ぶ徹底した監視体制
江崎氏は、外国人問題が単なる経済問題や人権問題に留まらず、「国家の安全保障の問題である」という視点を強調した。アメリカは9.11同時多発テロを経験し、テロ対策、マネーロンダリング対策、麻薬対策の観点から、入国する外国人を「徹底的に監視する仕組みを作んなきゃいけない」と考え、その代表例として「エスタ(ESTA)」を挙げた。
エスタでは、申請時に氏名、生体情報(目の生体情報、指紋)だけでなく、「特定の政治団体に属しているかどうかっていうことも全部報告しなきゃない」と説明。例えば「中国共産党員だったということを事前に申請しなきゃいけない」とし、虚偽申告には処罰があることを強調した。さらに、SNS(Facebook、X、Instagramなど)の「アカウントも全部登録するように言われてる」と述べ、これにより個人の思想信条や交友関係を把握している実態を説明した。
アメリカは「来てもいいけど監視はさしてもらいます」という姿勢で、「受け入れか排除かじゃなくて、やっぱりインテリジェンスの話」として、入国を許可しつつも徹底した情報収集と監視を行うことで、問題のある人物を特定し、行動を把握するシステムが重要であると説いた。
日本の現状と課題──情報共有の欠如と「日本版国土安全保障省」の必要性
一方、日本の現状について、菅・安倍政権以降、年間4000万人もの外国人観光客が来日しているにもかかわらず、「ビザ免除になってるから」「パスポートチェックしかない」と指摘。これにより、外国人に関する個人情報が十分に取得できておらず、「その人たちが日本で誰がどういう風に動いてんのかとかいうことに関する個人情報もないし、だから逆に言うと非常に怖い」と危機感を露わにした。
日本版エスタの導入は2028年を目指して進められているものの、現状では各省庁間での情報共有も不十分だと指摘。入国管理庁、警察、財務省、外務省など、外国人に関する情報を保有する機関が連携できておらず、「日本に入ってくる外国人の情報を共有していくという仕組みもないわけですよ」と述べた。アメリカが9.11後に「国土安全保障省」を設立し情報を一元管理しているのに対し、日本ではいまだそのような体制が整っていないことが大きな問題であるとし、特に「中国の人たちが大量に不動産買っている。その金の出所はどうなってんの」といった、資金の出所に関するチェック体制の不備も指摘した。
適切な政策的解決策の必要性──「不安だから出ていけ」ではないアプローチ
江崎氏は、外国人問題に対する日本の議論が「入れるな」「排除だ」といった感情的な排外主義と、「共生だ」「労働者を受け入れなければ経済が成り立たない」といった経済的側面のみに偏りがちであると批判した。政治家や行政機関が「国家の安全保障」や「インテリジェンス」という観点から政策を立案していないことが根本的な問題だと指摘している。
その上で、「日本版の国土安全保障省みたいなものを作って」財務省や法務省、厚生労働省、総務省といった各省庁が持つ情報を集約し、「犯罪がある人間とかを全部チェックしてそのような人間は申し訳ないけど戻す」べきだと具体的な解決策を提案した。
国民が外国人問題に不安を感じるのは、政府が外国人の動向を把握できていないことが一因だとし、「だから不安だから出ていけっていう風に言っちゃう」と述べ、適切な情報把握の仕組みを構築することが、排外主義的な言動を抑え、国民の不安を解消する上で不可欠であると強調した。また、ゴミ出しの摩擦など、文化的な違いから生じる地域住民の不安に対しても、感情的な「排斥」ではなく、政治が具体的な解決策を提示する責任があると結んだ。
評論家・江崎道朗氏の議論は、外国人問題が単なる経済的、社会的な側面にとどまらず、国家安全保障という極めて重要な視点から捉えられるべきであることを明確に提示した。アメリカの事例を参考に、入国管理と情報収集の徹底、そして省庁横断的な情報共有体制の構築が、日本の喫緊の課題であることが浮き彫りになった。
はたして、政府は感情的な「排除」や安易な「共生」の議論を超え、国民の不安を解消し、真の意味での安全と秩序を保つための情報管理体制を確立できるだろうか――。
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