評論家 近藤大介が語る「中国の抗日キャンペーン」:習近平が欠席した80周年記念式の不可解

国際政治

評論家の近藤大介氏が、毎年7月から9月にかけて行われる中国の「抗日キャンペーン」について解説する。今年は「抗日戦争勝利80周年」にあたり、特に大規模なキャンペーンが展開されている。しかし、これまで抗日関連イベントに熱心だった習近平国家主席が、今年の7月7日の記念式典を「不可解な欠席」をしたことに、近藤氏は注目する。

習近平政権が主導する「抗日」の強化

中国では、毎年7月7日から9月18日まで、大規模な「抗日キャンペーン」が行われる。盧溝橋事件が起きた7月7日と、満州事変のきっかけとなった柳条湖事件の9月18日を「忘れるな」というメッセージが、このキャンペーンの根底にある。

近藤氏は、中国国内に100近くある抗日記念館が、習近平政権になってから大規模に改装され、社会科見学の「必須場所」となったと指摘する。これらの記念館の展示には、3つの特徴があるという。1つは「日本がいかに悪いことをしたか」、2つ目は「共産党がいかにこれに立ち向かったか」、そして最も重要な3つ目は「習近平政権がいかに抗日の革命精神を受け継いでいるか」だ。特に3番目は、習近平の顔写真が大きく掲げられるなど、彼が「全面的な正義を受け継いでいる」と見せかける内容になっているという。

10年前の70周年記念式典には、習近平主席が共産党のトップ7の常務委員全員を引き連れて出席し、長時間の演説を行った。しかし、今年は80周年という節目にもかかわらず、習近平主席の動向に不可解な点が見られる。

不可解な欠席と憶測を呼ぶ習近平の動向

今年の7月7日、習近平主席は抗日戦争記念式典に姿を現さなかった。代わりに演説を行ったのは、共産党序列5位の蔡奇(さいき)氏だった。さらに、同時期にブラジルで開催されたBRICS首脳会議にも、例年出席していたにもかかわらず「異例の欠席」をした。

これらの行動について、近藤氏はいくつかの憶測を述べる。習近平がBRICSを欠席したのは、7月7日の記念式典を優先するためではないかという憶測があったが、実際には式典にも出席しなかった。新華社通信は、7月7日に習近平が山西省を視察したと報じたが、その日のCCTVのメインニュースでは「習近平の映像は流れず」、翌朝のニュースでも全く報じられなかったという。この不可解な欠席の背景には、ブラジルとは既に頻繁に首脳会談を行っているため、李強首相に任せたという見方や、体調が優れないため「地球の反対側への移動が困難だった」という憶測も出ている。

日本にとって「暑い夏」の始まり

中国の抗日キャンペーンは、今後も様々なイベントが予定されている。抗日をテーマにしたドラマや映画が大量に放映され、7月31日を中心にハルビンにある「731部隊記念館」でのキャンペーンも展開される予定だ。8月15日の終戦記念日には大規模なイベントが、9月3日には北京で軍事パレードが開催される。

そして、9月18日の柳条湖事件の日には、毎年、瀋陽で「1000万都市の全ての車が停止し、3分間クラクションを鳴らす」などして日本への抗議を表明している。今年はさらに大規模になる可能性があるという。この一連のキャンペーンは、日本にとって「動向を注視すべき」暑い夏であると近藤氏は結論付ける。

習近平主席がBRICS首脳会議と抗日記念式典という重要なイベントを相次いで欠席したことは、単なる偶然なのだろうか――。その裏に隠された真の意図は、今後の中国の動向、ひいては日中関係の行方を大きく左右するかもしれない。

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