元海軍特殊部隊SEAL隊員のチャック・ファーラー氏は、ウクライナ戦争が4年目に突入する中、ロシア軍が「空っぽの抜け殻」と化している現状を詳細に分析する。壊滅的な人的損失、兵站の崩壊、無能な指揮官、そして士気の著しい低下が、ロシア軍を崩壊寸前へと追い込んでいると語る。
士気崩壊が引き起こす大規模な反乱と投降
ロシア軍の根本的な問題は、兵士の士気の著しい低下だ。これが戦闘能力の低下という深刻な症状として現れているとファーラー氏は指摘する。
チャシフ・ヤール近郊で発生した、ロシア第20諸兵科連合軍の小隊による反乱と集団投降は、士気崩壊の象徴的な事例だった。この部隊は、砲兵や他部隊の支援がないまま白昼の正面攻撃を命じられ、「将校を殺害してウクライナ軍に投降」した。
兵士たちは、食料、水、医療の欠如、自殺的な任務、そして戦争への理解の喪失を訴えている。西側軍隊では反抗とみなされるような公の不満が、ロシア軍では「日常茶飯事」になっているとファーラー氏は語る。
壊滅的な人的損失と兵站の崩壊
ロシア軍はウクライナ戦争で壊滅的な人的損失を被っている。ファーラー氏によると、ロシアは「毎日約1,000人の兵士を失っており」、これは2個大隊に相当する。
2025年上半期だけで、ロシア軍の死傷者は25万人に迫ると推定されている。プーチン大統領の「特別軍事作戦」における戦死者数は、第二次世界大戦以降のソ連・ロシアの全ての戦争における死者数の5倍に上るという。
また、ロシアのサプライチェーンは制裁と管理不足によって崩壊寸前だ。燃料、弾薬、スペアパーツが極度に不足し、前線部隊は孤立している。負傷兵は搬送手段がないために死亡し、部隊は「食料、燃料、水を自力で調達しなければならない」状況だ。
無能で腐敗した指揮官とずさんな作戦
ロシア軍の指揮官は、能力よりもクレムリンへの忠誠を重視する軍事文化の中で、驚くべき速さで失われている。将軍や大佐は、兵士を攻撃から免除する見返りに賄賂を要求したり、「死んだ兵士の給料を懐に入れたり」するなど、不正行為を行っている。兵士たちは、指導者たちが指揮するに値しない「詐欺師」だと見なしているのだ。
作戦計画もずさんだ。砲兵や航空支援がないまま歩兵がウクライナのキルゾーンに送られ、ドローンによって壊滅的な被害を受けている。ロシア兵は「車両のハッチを開け放してウクライナのドローンが容易に爆弾を投下できるようにする」ことで戦闘を回避しているという。
大規模な投降と脱走が示す崩壊の兆候
ロシア軍の崩壊は、具体的な兆候として現れている。2024年8月14日、ウクライナ軍はクルスク州で「102人のロシア兵(歩兵中隊全体以上)の投降」を受け入れた。これはウクライナ戦争におけるロシア軍の大規模な単一投降だ。
さらに、ロシア国防省の漏洩データによれば、5個師団分(5万人)以上のロシア兵が現在、部隊を放棄して逃亡している。これはクレムリン自身の数字であり、脱走が蔓延していることを示している。
また、ロシア軍は自らの装備を破壊したり、意図的に無防備な位置に配置したりすることで、戦闘を回避している。「S300対空システムが意図的に開けた場所に配置され、数時間で破壊された」例もある。
ロシア軍は「緩慢な大惨事」を経験している
プーチン大統領が期待した「72時間軍事作戦」は頓挫し、夏季攻勢はウクライナの国土のわずか0.25%しか占領していない。ファーラー氏は、ロシア軍は「緩慢な大惨事」を経験しており、崩壊寸前だと結論づける。
指導者に見捨てられ、システムに裏切られたロシア兵たちは、投降し、脱走し、自らの装備を破壊することで「足で投票」しているのだ。ロシアの士気と戦闘能力が低下するにつれて、ウクライナ軍はあらゆる弱点を利用する準備ができている。
ロシア軍は避けられない形で崩壊するだろう。
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