BBCニュースは、「米国と日本が『史上最大の貿易協定』に合意したとドナルド・トランプが語る」と報じた。トランプ大統領はこの協定を「史上最大の貿易協定」と称し、日本製品にかかる関税が大幅に引き下げられ、特に自動車産業にとっては「32%から15%になるのは非常に良い取引だ」と強調した。モンクス・グループ・ジャパンの専門家、ジャスパー・コール氏は、「日本の視点からは非常にウィンウィンに見える」と評価する。しかし、スルジャナ・トゥワリ氏(アジア・ビジネス・ハブ)は、協定の「実施」が今後の問題であると指摘し、「これまで多くのいわゆる協定が、実際には単なる枠組みであり、まだ署名されていない」と述べ、楽観視しすぎないよう警鐘を鳴らした。
「史上最大の貿易協定」の衝撃とウィンウィンの評価
BBCニュースは、ドナルド・トランプ大統領が「史上最大の貿易協定」と称する日米貿易協定の合意について詳細に報じている。この合意は、来る8月1日の関税期限に先立つ最も重要な取り決めだと強調されている。
トランプ大統領は、今回の協定を「史上最大の貿易協定」と豪語している。この合意により、日本製品にかかる関税は25%から15%に引き下げられることになるという。特に注目すべきは、自動車産業に対する関税だ。脅威とされていた32%から15%への大幅な引き下げが実現したのだ。モンクス・グループ・ジャパンの専門家であるジャスパー・コール氏は、「15%の関税は25%よりもはるかに優れている。自動車産業にとって最も重要なのは、実際の脅威が32%だったことだ。だから、自動車産業にとって32%から15%になるのは非常に良い取引だ」と評価し、この取引が「日本の視点からは非常にウィンウィンに見える」と述べている。
また、米国経済への5500億ドルの投資と、日本市場における米国製品(自動車、米、その他農産物を含む)の開放が合意された。コール氏は、トランプ大統領がアジア太平洋地域における「アメリカにとって最も重要な同盟国」である日本に対して寛容さを示したと指摘する。さらに、日本車メーカーは、米国が「メイド・イン・チャイナ」の自動車を米国市場から排除する限り、15%の関税を中国製競合からの保護の代償として喜んで支払うだろうとも述べられている。
金融市場の好反応と残された課題
この合意のニュースを受けて、日本の金融市場は好意的に反応した。日経平均株価は「3.73%と約4%上昇」し、特にトヨタ自動車の株価は「13%も上昇した」とスルジャナ・トゥワリ氏(アジア・ビジネス・ハブ)は述べている。ホンダや日産自動車の株価も大幅に上昇を見せた。韓国のヒュンダイの株価も同様に上昇し、韓国も米国との類似の取引を期待していることが示唆された。
しかし、この協定には全ての項目が含まれているわけではない。防衛取引は除外されており、「鉄鋼とアルミニウムに対する50%の関税」は維持されたままだ。これらはトランプ大統領が交渉を望んでいたが、達成できなかった2つの項目だとトゥワリ氏は指摘する。「交渉が進められたかったが、達成されなかった2つの項目として、防衛取引もそうだが、鉄鋼とアルミニウムに対する50%の関税が残っている」と述べている。
さらに、スルジャナ・トゥワリ氏は協定の「実施」が今後の問題であると強調する。「重要なことは、この貿易協定をまとめ上げたことだ。問題は実施だ。なぜなら、これまで多くのいわゆる協定が、実際には単なる枠組みであり、まだ署名されていないのを見てきたからだ」と述べ、今後の進展を慎重に見守る必要があることを示唆している。
地政学的な文脈と日本の政治への影響
今回の合意発表のタイミングも注目に値する。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が日本を訪問し、その後中国に向かい貿易交渉を行うタイミングでこの合意が発表されたのだ。コール氏は、トランプ大統領が「分割統治」が可能であることを示し、米国に対する同盟関係の形成を許さないことを示唆していると述べている。
協定発表後、日本の首相が辞任するとの憶測が流れたが、これは否定されている。首相は最近の選挙で党が議会の支配権を失った後、政治的資本を回復すると見られていたものの、そのリーダーシップには依然として疑問が呈されているという。
また、フィリピンとの「枠組み」合意、および前週発表されたインドネシアとの合意の詳細も言及されており、この地域の新興経済国間の競争力を維持するための関税水準(約19%)が示されている。
BBCニュースの報道からは、日米貿易協定が両国、特に日本にとって大きな経済的恩恵をもたらす可能性がある一方で、その真の価値は今後の「実施」にかかっていることが示唆される。自動車産業への朗報、金融市場の好反応といった明るい側面がある一方で、鉄鋼・アルミニウム関税の維持や、地政学的な駆け引きといった複雑な要素もはらんでいる。はたして、この「史上最大の貿易協定」は、日米関係、そしてアジア太平洋地域の貿易情勢にどのような影響を与えるのだろうか――。
コメント