チームみらい党首の安野貴博が、汎用人工知能(AGI)が人間を超える未来に備え、国民を守るための具体的な6つの提案を提示する。AIの急速な進化がもたらすリスクとして、エネルギー需要の増大、雇用喪失、安全保障の不安定化、格差拡大、そして生きがいの喪失を挙げ、これらに対する教育、研究、社会保障、エネルギー確保、文化振興といった多角的なアプローチの必要性を訴える。
AGIがもたらす社会変革と潜在的リスク
チームみらい党首の安野貴博は、「AGIっていうものから国民を守るにはどうしたらいいのか」という問いに対し、他の政治家が「まともに考えている」者はほとんどいないと指摘する。AGI(汎用人工知能)とは「ざっくりAIのすごい版」であり、特定の領域で強かった従来のAIとは異なり、人間並みに「いろんなことができるようになる」知能を持つものであるという。AGIが実現すれば、「マジで世の中って大きな変化がある」と安野氏は強調する。
AGIはインターネットやSNSよりも「はるかに大きな発明」であり、産業革命における蒸気機関や電気と同等のインパクトを持つと安野氏は見ている。有史以来、「知能っていうものを低コストで調達できるったことってやっぱりなかった」ため、AGIの出現は社会に計り知れない影響をもたらすという。
もちろんAGIには良い側面もある。安野氏は、AGIの活用が進めば「人口が日本減っていっても経済をやっていける」可能性や、科学技術の進歩加速による生活の利便性向上を挙げる。例えば、「AIってのは新しい薬を発見してくれたりする」ため難病治療への期待が高まり、自動運転は「移動の自由をもたらしてくれる」だろう。また、「将来的には核融合っていうものを実現するのにも使える」ことからエネルギー問題の解決にも繋がり、ロボティクスによる人手不足の解消も期待できると述べる。
しかし、安野氏が今回焦点を当てるのはAGIの「リスク」である。
AGIが引き起こす具体的なリスク
安野氏はAGIがもたらす主要なリスクとして以下の5点を挙げる。
1. エネルギー問題
現在のAIは大量の電力を消費しており、AGIの普及により「今まで以上に電力っていうのが足りなくなるんじゃないか」と懸念する。海外のビッグテック企業がデータセンターの隣に発電所を建設したり、電力会社と独占契約を結んだりしている現状を挙げ、「エネルギーの調達電力をどう調達するかってことにものすごく集中している」と指摘する。電力消費の増大は大きなリスクである。
2. 雇用の問題
AGIによって「今まで人間がやっていた仕事っていうのがAIでもAGIでもできるようになる」可能性があるという。すでに北米のソフトウェアエンジニア業界ではこの影響が出始めており、特に「経験が浅いエンジニアの方がやっていた仕事っていうのがAIにポンとお願いすると30分くらいでやってくれる」状況にあると述べる。これにより企業が雇用を絞る動きが出ており、今後は翻訳やプログラミング以外の「弁護士の先生がやってる作業であるとか、会計士の先生がやってる作業であるとか」といったホワイトカラーの知的労働にもAIの影響が広がると予測する。「ホワイトカラーの仕事が一気になくなってしまう可能性がある」と警鐘を鳴らす。
3. 安全保障の問題
AGIを戦争に利用することで、電子戦や戦略そのものの「ゲームがかなり変わってしまう」可能性があると指摘する。核兵器による相互確証破壊(MAD)によって抑止されていた大国間の衝突リスクも、AIのような新しい技術の出現によって「論理的な抑止っていうのが働かなくなる可能性」があり、「大国同士の衝突リスクが高まるんじゃないか」と懸念を示す。
4. 格差の問題
雇用の問題とも密接に関連するが、AGIを持つ企業や個人は莫大な利益を得る一方で、持たざる者は恩恵を受けられないという「今までの格差よりも激しい格差っていうものが生まれうる」と指摘する。
5. 生きがい問題
「仕事に打ち込むみたいなことが生きがいになっている方っていうのもすごくたくさんいらっしゃる」が、AGIの出現により、人間よりもAIが圧倒的に優れた成果を出せるようになれば、そうした人々が「生きがいの喪失」に陥る可能性があるという。囲碁のイ・セドル氏がAIに敗れ現役を引退した例を挙げ、「アイデンティティクライシス」に繋がるリスクがあると警鐘を鳴らす。
AGI時代に国民を守るための6つの提案
AGIの到来時期については不確実性が高いとしつつも、OpenAIのサム・アルトマン氏など、AI開発の最前線にいる人々は「早ければ5年以内」(2030年まで)に来る可能性が高いと口を揃えていると安野氏は述べる。「これだけのめちゃくちゃ大きなリスクが発言するかもしれない」ことを踏まえれば、たとえ10%の確率であっても「国としてはそれに対して備えておくっていうことをやるべきだ」と強調する。
そこで、安野氏率いるチームみらいは、国民を守るための以下の6つの策を提案する。
1. AIで儲けた企業への課税
「AIで尋常じゃなく設けた企業に対する課税」が必要だと提言する。現在のビッグテック企業も異質に儲かっているが、AGI時代にはトップ0.001%の企業が「めちゃめちゃ巨大な富を生む」構造になると予測する。そうした企業から税金を徴収し、国を経由して再分配する必要があるという。現状でもビッグテックの実効税率は低い傾向にあり、タックスヘイブンなどを利用した租税回避を防ぐため、「国際強調できちっとこれくらいの税率にしていきましょうねって強調」し、さらに「対ビッグデック外交」として外務省などが企業との交渉窓口を持つべきだと提案する。
2. AIに関する教育
AIの使い方、リスク、情報リテラシー、ITリテラシーに関する教育を「急ピッチでやっていかないといけない」と主張する。海外、例えば北京では小学校からAIリテラシー教育が始まるという。AIの進化速度が速く、1年でIQが40も伸びるような状況では、「教育指導の改定っていうのは10年に1回しかありません」という日本の現状では対応が間に合わない。解決策として、10年に1回のメジャーアップデートを残しつつ、「1年に1回ちょっとずつ変えていくマイナーアップデート」を用意し、教育資料を電子化してすぐに反映できる状況を整備すべきだと提言する。
3. AIに関する安全性研究への投資
「AIの安全性、AIセーフティと呼ばれる分野」への研究投資が必要だと強調する。日本の研究者がAIのリスクを正しく把握し、安全性が担保されることは、産業界でのAI活用推進にとって極めて重要であるという。「このAIをこう使う分には大丈夫だってお墨付きがあれば」民間企業も安心してAIを利用できるため、政府が「AIセーフティ、AIの安全性に対する研究、それに対する投資はやっていかないといけない」と述べる。
4. 大量失業に備えた再分配の仕組み
AGIによる「大量失業が起きる可能性に備えて機動的に再分配する仕組み」を構築する必要があると提案する。具体的には、誰もが一定額を受け取れる「ユニバーサルベーシックインカム」や、所得が低い人ほど給付が手厚くなる「給付税額控除」のような仕組みを挙げる。これにより、社会の劇的な変化に対応できる柔軟な社会保障制度を整えるべきだという。
5. エネルギーの全力確保
AGIの普及による電力需要の増大に備え、「エネルギーを全力で確保していきましょう」と訴える。現在のエネルギー計画はAGI時代の電力需要を十分に織り込んでおらず、北米のレポートを日本に当てはめると「15%くらい電力足りなくなるんじゃないか」と推測する。電力不足は社会混乱や経済成長の停止、命に関わる問題にも繋がるため、火力発電所の最低限の維持、原子力発電所の再稼働、都市部の屋根への再生可能エネルギー導入などを提案する。また、信頼できる第三国でのデータセンター建設も検討しているという。
6. 文化振興への投資
「文化振興に投資する」ことの重要性を強調する。AGIによって「アイデンティティクライシス、生きがい喪失みたいなことに陥る可能性」がある中で、知的労働でAIに及ばなくなったとしても「生きがいを持って生きる必要」があるからだという。安野氏は、「仕事と生きがいが紐づく社会っていうのがここ数百年くらいの話」であり、人間は本来仕事がなくても生きがいを持てるとし、その際に「文化が豊かであることはものすごく重要なこと」だと述べる。AGI実現後の世界において、文化への投資は非常に重要だと語る。
安野氏は、「AIが人間より賢くなっていくかもしれないことの影響がものすごい甚大」であるため、今から準備できることは「やっていかないとまずい」と結論づける。
はたして、安野貴博が提言する6つの戦略は、AGIがもたらすであろう激変の時代から国民を守る盾となるだろうか――。彼の提言は、AIがもたらす技術的進歩だけでなく、それが社会構造や人々の生き方に与える影響まで深く見据えている。このような未来への準備は、一政党の取り組みに留まらず、国家全体、ひいては人類全体で取り組むべき喫緊の課題なのかもしれない。
チームみらい党首 安野貴博が提言する、AGI時代に国民を守るための6つの戦略
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