政治ジャーナリストの鮫島浩が、内閣支持率の続落、自民党内からの退陣要求、そして元総理たちとの密談を経て「完全孤立」に追い込まれた石破総理の現状を分析する。その延命戦略と今後の政局シナリオを詳述し、真夏の権力闘争の行方を読み解く。
元総理3人との密談:石破の延命戦略
石破総理は、内閣支持率の続落に加え、自民党内からの退陣要求、総裁リコールを目指す動き、さらには立憲民主党の野田代表からの突き放しにより、「完全孤立」の状態にあった。衆参両院で過半数を割り込み、日米関税協議の合意も完了したことで、政治ジャーナリストの鮫島浩氏は、石破総理が「総理にこだわる理由もなくなった」と見ている。秋の臨時国会を乗り切ることは不可能であり、「退陣に追い込まれることは誰の目にも明らか」だった。
1月23日午後、石破総理は自身の「政局の節目」となる会談に臨んだ。麻生太郎、菅義偉、岸田文雄の元総理3人と森山幹事長同席のもと、自民党本部で80分間にわたり行われた会談だ。会談直前には「毎日新聞は石破退陣へとし、読売入りは号外まで出しました」と、石破総理が退陣を表明するとの観測が広まった。しかし、会談後、石破総理は記者団の前で「辞任報道を前面否定」し、28日に両院議員懇談会を開き、衆院選の敗北総括のための組織を立ち上げ、来月中に結果を公表すると述べた。
鮫島氏の分析によると、石破総理の「辞任否定」は、実際には「今すぐはやめませんけれども、8月中には退陣表明、ポスト石破を選ぶ自民党総裁戦へ突入します」という認識に基づいている。敗北総括で時間を稼ぎ、8月末に退陣を表明することで、最終的な辞任を9月末頃まで引き延ばし、「在任期間を1年に届かせ」て「格好をつけたい」という意図があった。また、総理として「やりたいこと」として、戦後80年の検証と平和へのメッセージ発信、日米首脳会談による日米関税協議の最終確認、そして8月20日のアフリカ開発会議(TICAD)を「最後の花道」と位置付けていた。
会談内容に関する「嘘」と信頼失墜
しかし、この会談内容を巡って、石破総理は記者団に対し「私の出処進退については一切話に出ていない」と「嘘」をついた。これに対し、麻生氏、岸田氏らは退陣を明言しなかったものの、「自ら身を引くように強く促して」おり、森山幹事長でさえも「総理の出所進退を巡って意見が交わされたことを否定しませんでした」。
鮫島氏は、この公然の嘘について「よほど追い込まれていたんでしょう」と分析し、「総理の言葉をもはや誰も信用しません。この総理、この日をもって事実上終了です」と結論付けている。
元総理たちの思惑
会談に同席した元総理たちの発言には、それぞれの思惑が透けて見える。
麻生太郎氏は、昨秋の総裁選では高市氏を支持し、石破政権下では反主流派に転じていた。会談では石破総理に対し、「石破政権では選挙に勝てないことが明らかになった、早急に対応すべきだ」と述べた。これは直接の退陣要求ではないものの、「明らかな退陣要求」と鮫島氏は解釈する。
岸田文雄氏は、総裁選で石破氏支持に回り、石破政権の「生みの親」とされた。しかし、政権初期は旧岸田派が優遇されたものの、その後の政権運営で「大切にされなかった」ことが不満の原因であった。特に官房長官との不仲が最大の要因だとされる。会談では石破総理に対し、「選挙の検証も大事だが、その後のシナリオも明らかにすべきだ。そうでなければ党内がもたない」と述べた。これも直接的な退陣要求ではないものの、「敗北の総括が終われば退陣すると約束しろ」という「迫り方」であったと鮫島氏は指摘する。
現職の副総裁である菅義偉氏は、会談では「自民党内で総裁リコールの動きが広がっていることを指摘し、党の分裂に強い危機感を示した」とされる。これは「どちらとも取れる中立的発言」であり、石破氏の動きを抑えるよう促したとも、自ら身を引くよう促したとも解釈できる。しかし、重要な点は「副総裁の菅さんでさえ石破総理をはっきり擁護できなかった」ことであり、これは「石破総理の退陣は誰の目にも不可避な情勢になっていた」ことを示唆している。
石破総理の末路と真夏の政局
鮫島氏は、元総理たちの進言を無視し、公然と嘘をついた石破総理を「もはや裸の王様」と評する。残りの1ヶ月間も「この総理に従う人はもはや誰もいないでしょう」。退陣後は「誰にも相手にされない孤独な政治家生活が待っています」と断言する。
自民党内ではすでに「事実上のポスト石破レース」が始まっている。麻生氏は早速高市氏と会談し、岸田氏は林芳正氏の出馬を抑え込み、自らの「再登板に意欲満々」。菅氏も今回も小泉進次郎氏を担ぐか注目されている。「真夏の政局はいよいよ炎上モード突入です」と鮫島氏は締めくくり、石破総理の退陣を機に、自民党内の権力闘争と連立拡大に向けた動きが本格化すると予測する。
石破総理の退陣は、日本政治の大きな転換点となるだろう。混迷を深める政局の行方は、はたしてどうなるのだろうか――。新たなリーダーシップのもと、日本政治は安定を取り戻せるのか、あるいはさらなる混乱に陥るのか。今後の動向から目が離せない。
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