東京科学大学特任教授 西田亮介が解説する参議院選挙2025:投票率上昇の背景と各党の攻防

東京科学大学特任教授 西田亮介が解説する参議院選挙2025:投票率上昇の背景と各党の攻防 国内政治
東京科学大学特任教授 西田亮介が解説する参議院選挙2025:投票率上昇の背景と各党の攻防

東京科学大学特任教授の西田亮介が、2025年参議院選挙の結果を分析。前回の52.05%から大幅に増加し、58.51%を記録した投票率の背景と、参政党の躍進、自民党の苦戦、そして新たな政治勢力の台頭について解説する。

参政党の戦略と若年層からの支持

2025年参議院選挙は、事前の予測を裏切らない高い投票率を記録した。東京科学大学特任教授の西田亮介氏は、今回の投票率について「前回の52.05%から6.46ポイント増の58.51%という高い投票率を記録した」と述べ、専門家の予測とほぼ一致した結果だと分析した。近年の投票率上昇トレンドに「スパイスが加わった結果」と西田氏は指摘する。

今回の選挙で注目すべきは、参政党の躍進だろう。西田氏は、参政党が「外国人問題と独自の憲法改正案を隠し玉として掲げ」ネット上での話題を独占したと語る。これは「意図的に外国人問題と人気政策を組み合わせ」た「差別化戦略」だと評価している。

また、参政党は従来の少数政党とは異なり、減税や子育て支援、経済対策、外交安全保障まで含んだ「フルスペックの総合政策」を掲げ、「本格政党としての立ち位置を強調した」。ANNの出口調査では、10代から50代まで幅広い層で参政党が比例投票先で1位となった。西田氏は「既存政党への不満から参政党の打ち出し方が響いた」と分析する。

逆風にさらされた自民党と公明党

一方で、自民党は議席を大幅に減らし、石破総理の責任問題が浮上した。西田氏は、8月1日が期限とされる関税交渉があるため、石破総理の即時退陣は「国益に反する側面もある」と指摘する。次期総理候補については、現政権での「安定感」が求められると見られており、「岸田氏の再登板や、官房長官など政権の中枢にいた人物が有力視される」と西田氏は語る。

外国人問題への対応が「後追いの形になってしまった」ことも、自民党が支持を失った要因だと西田氏は分析する。

公明党もまた、愛知や神奈川などの選挙区で議席を落とした。西田氏は「自民党公明党に対する不満が噴出した」結果だと述べ、公明党が大きく議席を減らすのは「かなり久しぶり」であるとし、ダメージは「かなり長引く」と予測している。支持層の高齢化に加え、集団的自衛権の解釈変更を伴う平和安全法制をきっかけに、創価学会と公明党の意向が「やや離れ気味」になっていることも、比例得票減につながったと西田氏は見ている。

野党の明暗

立憲民主党は、自民党が議席を減らしたにもかかわらず、議席を伸ばせなかった。西田氏は「自公不振の受け皿に立憲民主党はなっていない」と厳しい評価を下す。将来的には国民民主党に野党第一党の座を奪われる可能性も示唆されたが、西田氏は地方議員の数や組織の強さから、現状で簡単に逆転することはないと補足した。

日本維新の会は、吉村代表のXでのコント動画が「ネットでバズり」、SNS戦略の成果が認知拡大に影響した可能性があると西田氏は指摘する。特に「社会保険料を年間6万円引き下げる」という政策は注目を集めた。しかし、影響力は「関西中心」であり、東京選挙区では議席を獲得できず、「厳しい状況」であると分析された。

国民民主党は着実に躍進した。西田氏は、参政党の「より極端な方向で打ち出し」が、国民民主党への票を流す一因となった可能性を指摘する。「手堅く手取りを増やす」といった政策や、玉木代表や榛葉幹事長といった「党の顔」の人気が、躍進の要因だと見られている。

その他の政党では、社民党が議席を守りきり「踏みとどまったことが大きい」と評価された一方で、共産党は大きく議席を減らした。

新たな政治勢力とボートマッチの普及

新たな政治勢力として注目されたのが「チーム未来」だ。雨宮氏の当選により、参議院で「新しい政治的な塊」が誕生し、場合によっては「キャスティングボートを握れるような状況になっている」と西田氏は注目する。自民党が取り込みたいと考える可能性もあり、デジタル大臣などの要職への抜擢も考えられるという。

一方、「再生の道」の石丸氏については、自身の人気や訴求力は健在であるものの、他の候補者の浸透が不十分だったため、議席獲得には至らなかった。西田氏は石丸氏に「ご本人が立候補しないということになんらかこだわりをお持ちのような印象がある」と語り、今後の活動に注目している。

有権者の意思決定ツールとして普及したボートマッチも今回の選挙で大きな役割を果たした。参政党のように、意図的に「外国人問題」をトレンドセッティングし、他の人気政策と組み合わせることで、「ボートマッチなどを通じて並んで示されることになると本格政党として見える」という差別化戦略が用いられた。しかし、選挙期間中に政策を頻繁に更新したり、政策に注目しなくて良いと主張する政党も現れており、西田氏は「有権者がどのように政治家や政党を選ぶべきかとても難しくなってくる」と課題を指摘する。有権者には、一度投票した政党や政治家の動向を「長い目でちゃんと見ていく」ことが求められるだろう。

今回の参議院選挙は、これまでの政治の常識を覆すような変化の兆しを見せた。既存政党への不満が噴出し、新たな勢力が台頭する中、有権者はどのように政治と向き合っていくべきなのだろうか――。今後の政治の動向から目が離せない。

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