自由民主党総裁の石破茂氏が、今回の参議院選挙で「極めて厳しい国民の皆様方のご審判をいただきました」と敗北を認め、公明党を含む与党の過半数割れを「痛恨の極み」だと深く陳謝した。しかし、国政の停滞を招かないことを最優先課題とし、公明党との連携を継続して政権運営に当たっていくことを確認。他党とも「真摯な議論を通じてこの国難を打破できる新たな政治のあり方について一点を見出していきたい」との意向を示した。
「謙虚に紳摯に受け止めなければならない」参院選の厳しい結果
石破総裁は、今回の参議院選挙の結果を「極めて厳しい国民の皆様方のご審判をいただきました」と述べ、公明党を含む与党の多くの候補者が当選できなかったことを「痛恨の極み」と表現し、深く陳謝した。この結果を「謙虚に紳摯に受け止めなければならない」とし、今後も国民の声に耳を傾け、責任を果たす姿勢を示している。
厳しい状況下で支援してくれた多くの国民、都道府県連、党職員、演説会場に足を運んだ人々に対し、熱い感謝の意を表明した。
選挙結果の重大な責任を感じつつも、「国政に停滞を招かない」ことを最優先課題とし、公明党との連携を継続して政権運営に当たっていくことを確認した。また、公明党以外の他党とも「真摯な議論を通じてこの国難を打破できる新たな政治のあり方について一点を見出していきたい」との意向を示した。
喫緊の課題と政策対応:米国との関税交渉、物価高、そして「戦後最も厳しい安全保障環境」
石破総裁は、日本が現在直面している喫緊の課題として、米国の関税措置、物価高、首都直下型地震や南海トラフなどの自然災害、そして「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」を挙げた。
米国との関税措置については、「我が国の国益を守り抜くこと」を大原則とし、8月1日という新たな節目を念頭に、関税ではなく「投資」という考え方を基盤に「日米双方にとって利益となる合意を実現」することを目指すと表明した。ブリンケン国務長官にも直接この話を伝えたとし、本日からは赤澤担当大臣が訪米協議を行うことを明らかにした。石破総裁自身も「できる限り早期にトランプ大統領と直接話をし、目に見える成果を出してまいりたい」と述べた。国内産業への支援として、中小企業への資金繰り支援など、必要に応じて追加対策を講じる方針だ。
物価対策については、「成長への投資を加速し賃上げを進めていくこと」が基本であるとしつつ、物価上昇を上回る賃上げが実現するまでの間は、「財政に対する責任も考えながら党派を超えた協議を呼びかけ結論を得たい」と述べた。「政治には一刻の停滞も許されない」という認識を示し、与野党問わず協力を呼びかけ、国難克服に向けて政策を推進していく姿勢を強調する。
続投への強い意思と党内外の議論への姿勢
厳しい選挙結果にもかかわらず、石破総裁は「いつまでという期限を今考えてるわけではございません」とし、上記の喫緊の課題解決に「全力で対応する」ことで続投する意思を示した。これは「自らのことを考えて判断をするということは全くございません。ただ国家国民のため、そしてまた頂いたご指示に対する責任をどう果たすかということを考えておるところでございます」と説明する。
現時点では「連立の枠組みを拡大する」考えはないとしつつも、「共に責任を持って優れた政策・法策を作り上げていける」他党との真摯な議論を継続する意向を示した。
人事については現時点では考えていないと述べ、「みんなで全身全霊、誠心誠意選挙に対応してまいりました。あるいは国会対応にも全力を尽くしてまいりました」と現執行部の努力を評価した。党役員の任期も念頭に置きながら、よく考えて対応していくと述べる。
党内から退陣を求める声があることについて、「党内にいろんなご意見があるということは当然のこと」と述べ、様々な機会を通じて丁寧に対話し、国民の声も聞きながら議論を深めていく姿勢を示した。その上で、「どういう議論が出て、どういうような方向に収斂をしていくのか、そういうことの推移を見極めながらその都度適切な判断をしていく」と述べるに留め、現時点での辞任の意思は示していない。
「衆院に続いて参院でも過半数割れという結果は総理が国民から信任を得られなかったということを示しているのでは」という問いに対し、先の喫緊の課題に責任を持って対応する必要性を強調し、自身の判断は「自らのことを考えて判断をするというようなことは全くございません」と述べた。
また、2007年の参院選敗北時に当時の安倍総理(第一次政権)に対し辞任を求めた自身の過去の発言について問われると、当時の発言は「なぜ続投なさるのかということについてお述べをいただき、国民の皆様方のご理解を得る必要があるだろうということを申し上げました」と説明し、自身の現在の状況も同様の認識で臨んでいると述べた。
自民党が支持を得られなくなった要因については、「政治改革の問題、あるいは物価高に対する対応、あるいは外国人の方々に対する対応、それ多岐にわたって要因はある」とし、特定することは難しいと述べた。幅広い国民政党であるゆえに、特定の分野に「アクセントを置いた政策を提示」する他党に対して、エッジの効いた政策を提示するのが難しかった可能性にも言及した。今後、党内で真剣に分析し教訓を得ると述べた。
野党との「真摯な議論」で国難を乗り越える
野党との連携について、「真摯で責任を共有できるような議論」が必要であると述べた。
年金などの社会保障改革について、財源となる税負担も含めて「与野党で早期に協議する場を設けるよう呼びかける」考えがあるか問われ、総理自身も「そういうような議論をする場というものは必要」だと述べた。特に、「事実認識に齟齬がある」と議論が成り立たないため、共通認識を持つ場が必要であると強調した。
立憲民主党の野田代表の給付に関する発言について、「お困りの方に早く手厚い形で支援をする」という点では「私どもが選挙中に主張してきたこととそういうものと重なる部分も多々あろうか」と認識を示した。「給付付き税額控除」については、「それは一つの解である」との認識を共有していると述べた。ただし、生活保護等の社会保障制度との整合性や資産把握の正確性など、議論すべき課題があることを指摘した。
消費税の減税や廃止を訴えた野党が議席を伸ばしたことに対し、「消費税は消費税法によって社会保障、つまり医療・年金・介護・少子化対策・子育て、それに充てねばならない」財源であることを強調した。減税や廃止が国民生活を支える社会保障制度に与える影響について、各党の主張がバラバラであると指摘し、「事実の認識を共有する」ところから議論を始めなければ収束しないと述べた。他国での消費税減税の事例や効果についても認識を共有する必要があるとし、国民にとって都合のいい話は「世の中にない」と述べた。減税による所得増加と、高齢化、介護、少子化、国民皆保険といった共通課題への対応を両立させる議論が重要だと強調した。
8月1日の米国関税交渉期限:国益を最大限に実現すべく「全力で対応」
米国の関税交渉期限が8月1日に迫っていることについて、総理続投の理由の一つでもあると改めて強調した。「お互いに国益となる形」での合意を目指し、「一方だけが得をして一方だけが損をするというようなことはそれは交渉の成果物として成り立たない」との見解を示した。米国が「世界最大の雇用創出国」であることを踏まえ、「関税よりも投資」という考え方を提唱し、理解を得るべく努力していると述べた。「そこの議論を赤沢大臣中心に政府挙げて行っておるところでございます。それの成果を得るべく国益を最大限に実現すべく全力を挙げておる」と述べ、現時点での進退に関する言及は避けた。
石破総裁は、参議院選挙での敗北を謙虚に受け止めつつも、国政の停滞を避けるため続投する意思を明確にした。喫緊の課題として米国との関税交渉、物価高、自然災害、安全保障環境への対応を挙げ、これらに全力を尽くすことを表明した。公明党との連携を維持しつつ、他党とも「真摯な議論」を通じて国難克服のための政策立案を進める方針を示している。特に、社会保障改革や物価対策における給付のあり方について、与野党間の共通認識形成と議論の深化を重視する姿勢が伺えた。党内の求心力や自身の過去の言動への批判に対しても、対話を通じて理解を求める姿勢を示している。はたして、石破総裁は厳しい国民の審判を受け、難局を乗り越えることができるだろうか――。
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