選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏は、来る参議院選挙で自民・公明両党の過半数割れが「95%」「ほぼ確実だと思ってます」と断言する。これは、これまでの予測を大きく上回る歴史的な大敗となる見込みであり、最大の焦点は「自民公明がそれぞれ過去最低議席を出すかどうか」に移っていると指摘する。投票率が上昇し「50%代後半に行く」と予測される中、立憲民主党や国民民主党、特に参政党の躍進が顕著だ。選挙後には石破総理の退陣と高市氏の次期総裁就任の可能性が高まり、多党化による政界の「カオス化」が進むことを示唆する。
自公、歴史的大敗へ――「過半数割れは95%」
来る参議院選挙は、自民・公明両党にとって歴史的な転換点となる可能性が高い。選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏は、自公の過半数割れの確率を「95%」「ほぼ確実だと思ってます」と非常に高く見積もっている。これは、1週間前の予測70%からさらに状況が悪化していることを示している。
鈴木氏の現時点での議席予測(中央値)は、自民党34議席、公明党7議席で、合わせて41議席だという。これは、自民党の過去最低議席数36、公明党の過去最低議席数9をともに下回る歴史的な大敗となる見込みである。かつては「自公過半数割れが最大の焦点」とされていたが、鈴木氏は「最大の焦点は自民公明がそれぞれ過去最低議席を出すかどうか」と、事態の深刻さを強調する。
このような状況の中、投票率は上昇し、「50%代後半に行く」と予測されている。「ネットメディアも含めた報道量」の増加と、「政権選択選挙だと言われている」という有権者の「1票の価値は極めて高い」という認識が、投票率を押し上げると見られる。
各党の動向と躍進――立憲、国民、参政に注目
自民党の落ち込みと相対的に、「立憲がかなり上に来てますね」と鈴木氏は述べ、30議席に迫る水準を予測する。
今回の選挙で「躍進するのが国民民主党と参政党」だとされており、特に参政党は前回の予測の最大レンジに到達する勢いを見せている。具体的な予測として「国民17議席、参政14議席」が挙げられ、両党の躍進が示唆されている。
比例代表と「投票先未定層」が鍵を握る
選挙結果を左右する大きな要因の一つが、比例代表制の仕組みと投票先未定層の動向である。比例代表では、全国の総得票率で約2%につき1議席を獲得する目安となり、今回の選挙では「110万票で一席ぐらいになる」と見込まれている。
世論調査では、電話調査とネット調査で支持率が大きく異なる点が指摘される。例えば、自民党は電話調査で28.6%の支持率に対し、ネット調査では14.2%と大幅に低い。これは、「ネットは投票先未定数が多い」ためだと鈴木氏は分析する。選挙ドットコムは、電話とネットの割合を6対4で見ているという。
ネット調査では「36.3%」が投票先未定と回答しており、この層の動向が結果を大きく左右すると見られている。この層の分析から、「内閣支持」の低さが際立っており、「強く支持とどちらかといえば支持で8.5%しかない」という状況は、自公への票の流入が少ないことを示唆している。
投票先未定層の属性を見ると、年代では「40代、50代、60代の現役世代が多い」。性別では「女性が圧倒的に多い」という特徴がある。鈴木氏は、「女性は直前まで悩むケースが多くて」と分析している。さらに、内閣支持層はわずか8.5%で大半が内閣を支持しておらず、92%が無党派層であるという。これらの属性分析から、投票先未定層は「自民党と公明党はほとんど伸びない」と予測され、「他の政党に振り分けられていく可能性がかなり高い」と見られている。特に「国民民主党と参政党に行く」可能性が高いと分析されている。
選挙区における「地殻変動」と参政党の影響
選挙区における「地殻変動」も今回の選挙の大きな特徴である。一人区(32議席)は、野党乱立パターン、共産党非立候補・立憲か国民に絞られたパターン、共産党非立候補パターンの3つに分けられる。これまでは共産党が出馬すると自民党が有利という「テンプレ」があったが、今回は「共産が立候補しても野党が乱立してない限り自公が負ける」状況になっている。特に真ん中の「共産立パターン」では「自民党はほぼ負けそう」と予測されており、鈴木氏は、自民党が一人区で獲得できる議席数を「4から8ぐらいしか取れない」と非常に厳しく見積もっている。
参政党の影響も大きい。参政党が「全選挙区に出してるのはすごいこと」であり、「この保守層の受け皿になってる」ことで、自民党が本来獲得できた票を奪っていると分析されている。複数区(43議席)もこれまで「ほぼ無風」で自民党と立憲民主党の指定席だったが、今回は「勝敗を分けるポイントになってる」と指摘される。
選挙後の政界の行方――石破退陣と高市総裁待望論
自公が41議席という大敗を喫した場合、石破総理の退陣は避けられないと鈴木氏は見る。自民党内の議員も「さすがに許容できない」可能性が高い。
次期総裁については、自民党が今回の選挙結果で「保守層を剥がしたら勝てない」という総括をすると予測されており、「小泉さんより高市さんを選択する議員が増えるんじゃないかなと」考えられている。これにより「高市さんの次期総裁の可能性が高まってる」と見られている。
連立政権の可能性も大きく変わる。今回の選挙で「40前後になっちゃうと」「自公の連立政権が終わる」と断言する。
新たな連立パートナーとしては、国民民主党が有力視される。一方で、日本維新の会は「維新を公明が受けれ入れられない」ため、連立の可能性は低い。「維新を割るっていう可能性もありえますね」と、維新内部の分裂の可能性も示唆された。
自民党が政権を手放す可能性は「ゼロではない」が、「自民党は非常に与党であることに対して強い拘り持ってる」ため、「可能性がある限り与党であり続けることは諦めない」と見られている。
国会運営も大きく変わるだろう。もし自公が過半数を割れると、国会は「ねじれる」とし、「2年とか3年とかそれで安定することはありえない」と指摘している。しかし、野党による法案可決の可能性も出てくる。「維新、共産、国民、れいわ、参政が全部乗る法案であれば全然通ります」と、野党間での政策合意があれば、政権を取らずとも法案を通せる可能性があることを示唆している。消費税減税などもその可能性に含まれる。
今回の選挙は「日本の政治史に間違いなく残る参院選になる」とされ、「良くも悪くもカオス化していく」と、政治の大きな転換点になることが強調された。
はたして、今回の参議院選挙は、日本の政治にどのような「カオス化」をもたらすのだろうか――。
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