山猫総合研究所代表の三浦瑠麗氏が、参院選を前に都議選の結果を分析し、日本の政治状況が票の分散化、有権者の関心の変化、特に憲法や安保といった「大文字の政治」への関心の低下、そして世代交代の進行を示唆していると解説した。また、各政党の政策的立ち位置を経済軸と社会軸で分析し、「参政党」の台頭とその思想的特徴に焦点を当てている。
都議選に見る「票の分散」と「有権者の変化」
今回の都議選では、自民党や公明党の弱体化、立憲民主党が守りに入っている状況がうかがえる一方、「参政党が議席を複数獲得し」た。れいわ新選組や維新は議席を獲得できなかったという。三浦氏は、この「分散してるっていう現象がまさに今の日本政治をあの映し出してる鏡みたいな感じ」だと分析する。
票が分散している理由として、第一に「そもそも自民党をマイルドに支持していた」人々が、この1~2年で自民党に「飽きが来ている」ことを挙げる。しかし、彼らの明確な受け皿がないため、票が様々な政党に分散していると説明する。
第二の理由として、かつて自民党と立憲民主党の共通の強みであった「憲法や安保を巡る対立」が薄れてきていることを指摘した。特に安倍長期政権を支えた「安全保障でやっぱり現実的で責任ある政党にお願いしたいよ」という層が離れている現状は、自民党が安保問題でうまくやれていないからではなく、有権者が「安全保障とか国際政治とか憲法とかあんま関心ないよ」という状態になっているのではないかと推測する。
世代交代の兆しと世論調査の課題
三浦氏は、国民民主党の支持層の分析から、日本の有権者層に世代交代の兆しがあると述べた。国民民主党の支持は「30代までが圧倒的に強く」、「60代から上がいない」という特徴があると指摘。49歳以下と50歳以上で国民民主党の支持率を比較すると、49歳以下では「乱高下」する一方、50歳以上では比較的安定していることが明らかになった。これは「いよいよ世代交代が進みつつある」証拠だという。
高齢者層の投票率と関心の変化についても言及し、一般的に投票率が高い高齢者層も、70代がピークで80代になると投票率が下がるとした。これにより、「今の50代とか40代ぐらいが政治を巡る話の中心になってくる」と予想する。かつて「憲法と安保の問題に」高い関心を持っていた60代・70代・80代の層が、人口動態の中で影響力を減らしていることを強調した。
世論調査の方法についても課題を指摘し、従来の固定電話中心の調査では高齢者や主婦層に偏りが出ていたため、「補正をかけないとやっぱり実態を反映できなく」なってきていると述べた。朝日新聞が携帯やインターネットを活用した新しい調査手法を取り入れたことで予測精度が高まった例を挙げつつも、若年層の意見が強く反映されすぎる傾向があること、また政治への関心度が低い層の投票行動は依然として不確かであるとした。
メディアの報道姿勢についても批判的だ。メディアが「政党が言ってることをそのまま報じると恥だと思ってるみたい」な傾向があり、政党が発表する公約の中から「トップ3つにすら乗ってないこと」を報じたり、独自の論点設定(例:消費税)で各党を評価する傾向を「メディアの罪」であり、有権者への情報提供という役割を「吐き違えている」と厳しく指摘した。
各政党の政策的立ち位置と「賛成党」の特異性
三浦氏は、経済軸(大きな政府/小さな政府)と社会軸(リベラル/保守)の2軸で政党の立ち位置を分析した。
- 自民党: 経済的にも社会的にも保守のイメージで、「経済保守、社会保守」だという。かつては「中道にどっかり座り込んで経済的には、まあ左から右のことまで全部やってばらまいて公共事業やって、つまり大きな政府でありながら大企業も優遇したりして」いたため、成長を支持しない保守層も取り込んでいたとした。
- 公明党、立憲民主党、れいわ新選組、共産党: 「両方リベラル」(経済的に大きな政府、社会的にリベラル)の象限に多くの政党が「ごちゃごちゃと込みすぎてる」と指摘した。
- 維新: 「改革重視」で、「経済成長で、中道まで含むんですけども社会的にはリベラルな支持者がたくさんいます」。これは「都市無党派改革支持層」にあたると分析する。
- 国民民主党: 「自分たちの立ち位置を見定められずグラグラ動いてます」としながらも、大塚耕平氏の例から「経済的にはより成長重視の小さな政府より、でもまあ中道です。で社会的にはリベラル」と位置付けた。
特に注目したのは参政党だ。唯一「経済的にはより大きな政府リベラル、社会的には保守」という象限を「大っぴらにこの場所を占めてる」政党だと分析する。この層は人口比的には「一番ちっちゃい」という。
参政党の特徴として、スターが不在で「グラスルーツの王道のですね、新しい政治運動を起こそうとする時は王道のやり方」で支持を集めていると評価した。また、「内紛報道が出ない」ことも強みだと述べた。
政策思想については、「成長に背を向けても守りたいものがある」という感情を代表する層だとし、無農薬有機農業の推進などがその具体例だと挙げた。しかし、これは「結果として貧しくなるでしょうけどね」という現実的な課題も指摘する。三浦氏自身は、こうした「成長に背を向ける」考え方自体は尊重すべきとしつつも、人口減少局面においては社会保障制度の維持が困難になる可能性を指摘した。極端な保守思想は、「自分は財産を持っているとか、自分は畑を持っているとか、自分には介護をしてくれる優しい娘や息子がいるとか、まあそういう持ってる人の論理であることも確か」であると批判的に言及した。
投票方針と有権者への提言
三浦氏自身は、参院選に向けて「本質的な改革を言ってくれる政党に投票しようかな」と考えているという。それは「目先の物価高対策」ではなく、「長期的な成長を可能にするような成長戦略とか、あるいは社会保険の改革プランを持っている政党」を応援したいと述べた。
有権者に対しては、メディアの選挙報道に頼るのではなく、「しっかりと各党のページに行って公約見てください」と強く促した。YouTubeやX(旧Twitter)、FacebookなどのSNSも参考にしつつも、あくまで公約集を読んでから、その内容を深掘りするために動画などを活用するのが良いと提言している。
三浦氏は、都議選の結果から日本の政治における票の分散化と有権者層の変化を指摘した。特に、憲法や安保といった「大文字の政治」への関心の低下、そして若年層の政治参加が活発化し、世論調査にも影響を与えている世代交代の進行に注目すべきだと述べた。メディアの報道姿勢にも課題がある中で、有権者は自ら政党の公約を確認し、長期的な視点での政策を重視する姿勢が求められていると言えるだろう。
三浦瑠麗 いよいよ参院選!都議選で惨敗の与党は過半数獲得なるか?各党の政策的立ち位置を解説します【lullych るりチャンネル】
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