自由民主党総裁の石破茂氏が、参議院選挙公示日の7月3日、神戸での第一声で、日本が抱える喫緊の課題に対し、具体的な解決策を提示した。阪神・淡路大震災の記憶を胸に「世界一災害に強い国を作ろう」と決意を述べるとともに、加速する人口減少や物価上昇への対応、そして社会保障の持続可能性について熱弁を振るった。
阪神・淡路大震災の教訓から「災害に強い国」を
石破総裁は、演説の冒頭で30年前の阪神・淡路大震災を振り返り、「あの日5時46分、私は選挙区の鳥取市の自宅におりました。まだ国会が始まってなかったんで、家族と一緒にいました。本当に何が起こったのか。急いで妻と子供たち、安全なところに言うことからやりましたが、大変なことが起こってるに違いない」と当時の衝撃を語った。そして、「神戸壊滅」という新聞の見出しを忘れられないとし、「これを解決するために、災害に強い町を作っていかねばならない。」と、防災への強い思いを表明した。
日本が「世界有数の災害大国」であるからこそ、「世界で最も災害に強い。そういう国を、この神戸から、兵庫から、何が何でも作っていかねばならん」と決意を述べ、その実現に向けて「防災庁の設置」を目標に掲げた。阪神・淡路大震災で犠牲となった人々への追悼の意を表し、その思いを決して忘れることはないと強調した。
人口減少社会の危機感:神戸から「若者と女性が選ぶ町」へ
日本の喫緊の課題として、石破総裁は人口減少問題を挙げた。「日本人、今1年に何人減っていますか。89万人。香川県の人口とほとんど同じ。1年間に90万人近い人たちの人口が減っているのが日本であります」と深刻な現状を訴えた。この問題は地方に限らず、兵庫県で年3万人、神戸市でも人口が減少していると指摘。特に「次の時代のお子さんを産んでくださる若い女性の方。全体の人口は2割減るだけだが、若い女性の方は3割減る。これを止めていかねばなりません」と、若年女性の減少に強い危機感を示した。
そして、この神戸から「若者と女性が戻ってくる。若者、女性が選ぶ。そういう神戸を作っていきたい」と述べ、世界の人々が憧れるこの神戸を、若者と女性に選ばれる魅力的な都市にするべく尽力する考えを示した。
物価上昇を上回る賃金上昇とGDP拡大
物価上昇への対応についても言及し、「森谷コロッケ」の値段を例に挙げながら、原材料費の高騰が物価上昇に繋がっている現状を説明した。その上で、自民党が目指すのは「物価上昇を上回る賃金上昇」であると明言し、「これを何としてでも実現したい」と力強く語った。
過去10年間で企業の売上が7%増、利益・配当が140%増であったにもかかわらず、賃金が2%しか上がらなかった「デフレの正体」を指摘し、昨年33年ぶりの賃金上昇率5%を記録したことを歓迎した。そして、「今年はそれをさらに上回る賃金上昇です。来年はもっともっと賃金を上げたい」と意欲を見せた。
企業の売上から働く人への分配を増やし、「コストを削る型の経済から、価値を増やしていく」経済への転換を主張。給料の引き上げ、設備投資の増加、関連会社への支払いの拡大を通じて、「今600兆円の日本のGDP。1000兆円まで必ず我々は拡大をする」と、経済成長への強いコミットメントを示した。
「ばらまきではない」困窮者への給付金と消費税の役割
物価上昇の影響で生活が苦しい人々に対しては、「早く給付金を届けたい」と述べ、「来年とかそんなことではいけません。今年中には生活苦しいね。そういう方々にお金が行き渡るようにいたします」と迅速な対応を約束した。さらに、収入が低い家庭や食べ盛りの子どもがいる家庭に「重点的にお支払い」を行うとし、「それが給付金であって、決してばらまきでもなんでもありません」と、その性格を明確にした。
消費税については、「医療であり、年金であり、介護であり、子育てであり。そのための貴重な財源。それが消費税です」と、社会保障を支える重要な財源であると強調した。導入時の苦労を振り返りつつも、「これからの先の高齢化社会。段階ジュニア世代って言いますね。1971年から74年まで。そういう方々が今50代です。そういう方々高齢者になっていく。その時に日本の医療、介護、年金、必ず残していかねばならない。発展していかねばならない。その財源を傷つけるようなことがあってはならない」と、持続可能な社会保障制度のために消費税が不可欠であるとの認識を示した。
国益を守る関税交渉と平和への貢献
国際的な経済問題として、関税交渉にも言及し、「我々は国益を守っていかなければなりません。自動車であり、造船であり。国益を守るために安易な妥協はいたしません」と述べ、日本の産業を守るために毅然とした態度で交渉に臨む姿勢を示した。
最後に、日本が中東に石油の9割を頼っている現状に触れ、「どうやってあの地域に平和をもたらすか。そのために日本は何ができるか」と問いかけ、平和への貢献の重要性を訴えた。
そして、国を動かすのは「偉い人ではありません」と述べ、「いつの時代も国を変え歴史を変えるのは地域であり地方であり、1人1人の庶民が国を変え歴史を変える」と、国民一人ひとりの力が日本の未来を創ると締めくくった。
石破茂氏の第一声は、災害大国日本の課題から人口減少、経済、社会保障、そして国際貢献に至るまで、多岐にわたる日本の課題に対し、自民党としての具体的なビジョンと解決への決意を示すものであった。はたして、その訴えは国民の心に響き、来る参議院選挙で支持を集めることができるだろうか――。
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