ジャーナリストの須田慎一郎氏が、本日公示された参議院選挙の序盤戦情勢を分析した。自民党の支持率低迷は深刻であり、与党が目標とする「50議席」の確保も危ぶまれる状況だと指摘する。国民の声が響く中、東京選挙区では「あの候補者」の出馬で大荒れが予想されるという。
自民党の苦境:止まらない支持率の「下げトレンド」
参議院選挙が本格的にスタートし、与党(自民党・公明党)は過半数維持のため「50議席」を勝敗ラインに設定した。しかし、須田氏の分析によると、自民党は内部調査で「下げ止まりがその止まりません」と、支持率低下が続く状況にある。現状での獲得予想議席数は「43程度」であり、公明党の約12議席と合わせても辛うじて50議席を上回る可能性があるものの、この「下げトレンド」が続くことへの懸念は大きい。
須田氏は「もっと下がってるだろうというところが予想されます」と語り、投票日である7月20日までにさらに支持率が低下する可能性を示唆する。今回の選挙戦の最大の焦点は「どこで下げ止まるのか」にあると指摘した。
サプライズなき選挙戦と「投票率低下」戦略
選挙戦が事実上始まっているにもかかわらず、「サプライズがもう予想できません」と、国民の関心を惹きつける要素が欠如している点を須田氏は強調する。このような状況で、自民党が唯一期待できるプラス材料として、「投票率を下げていくというこの戦略は、ま、今から考えてみると唯一プラスの材料になってくるのかな」と述べる。3連休の中日である7月20日を投票日に設定したことで、組織化されていない無党派層の投票率が低下し、それが自民党に有利に働く可能性があるというのだ。
幹部の「不用意な発言」が招く不満と支持率低下
自民党が直面する支持率低下の主要因は、党幹部やトップの「不要意な発言」にあると須田氏は指摘する。現場の議員からは、「自分たちが一生懸命やってもですね、やっぱり、自民党の執行部ないし、幹部トップがですね、不要意な発言をするたびに、その度ごとに私を下げてるんではないかという不満がもまさに充満してる」という不満の声が上がっているという。
具体的な例として、石首相の消費税減税に関する発言を挙げた。石首相が「消費税減税は富裕層にとってメリットのある減税だと」述べたことに対し、須田氏は「消費税というのは逆進性の高い税制、所得が低い人ほどその税負担が、税負担が強く出る税制なんだ」と反論し、この認識のズレが支持率低下を招いていると分析する。
さらに、自民党ナンバー2である森山博幹事長が「消費税を守る」と発言したことに対しては、「消費税を守る前に国民生活を守れというような総突っ込みが出て、これもまたですね、支出が下がる大きな要因原因の1つとなっております」と批判し、こうした発言が出るたびに「下げトレンドは止まりません」と語った。
大激戦の東京選挙区:鈴木大地と武見敬三の苦戦
東京選挙区は定数7(補欠選挙含む)に対し12人の候補者が出馬する「大激戦」となっている。中でも注目されるのは、12番目の候補者として出馬した「山尾さん」の存在だ。山尾氏の出馬は国民民主党の候補者に影響を与える可能性が指摘されている。
自民党からは鈴木大地候補と武見敬三候補の2人が出馬しているが、ともに苦戦を強いられているという。オリンピック金メダリストである鈴木大地候補は、当初トップ当選が有力視されていたものの、「不良いの発言もあって減らしている」と須田氏は語る。一方の武見敬三候補は、「到落線上をギリギリのところを今推移している」状況であり、「これ以上自民党に対する批判が強まってくるとですね、落選という状況にもなってくるんではないかと思われております」と、厳しい見方を示した。
自民党本部は、鈴木候補に回るはずだった組織票の一部を武見候補に集中させることで、武見候補の当選を必死に図っているというが、「果たしてそういう組織票が素直にシフトしてくるのかどうなのかというところも1つ大きく注目です」と疑問を呈した。
物価高騰対策と各党の政策:自民党の「給付金一本やり」は不評
今回の選挙戦における最大の争点は「物価高騰」への対策だ。野党各党が「消費税減税などの減税政策を打ち出している」のに対し、自民党は「給付金1本やり」の政策で臨んでいる。具体的には「国民1人に対して2万円。そして、住民税非課税世帯の大人に対してはプラス2万円」という内容だ。しかし、この給付金政策は「とにかく不評」であり、「なかなかこれでは、回復には結びついていかない」と須田氏は断言する。
国民民主党の玉木代表が日経新聞のインタビューで「今の賃金の状況を見てみると消費税や減税をするタイミングではない」と発言したことがクローズアップされているが、須田氏は「これは自民党に行くわけじゃありません。自民党に上乗せするわけじゃなくて、他の政党に流れていく傾向になっていくんではないか」と分析し、自民党にとっては「上がり見が全くない」状況だと指摘した。
今後の展望:過半数維持は困難か?
須田氏は、自民党が今後、組織を引き締め、票の流出を防ぐことが焦点となると述べる。しかし、「果たしてどんな出現が出てくるのか、どんなミスが出てくるのかというところが1つの注目ポイント」とし、さらなる不用意な発言やミスが出れば、支持率の低下に拍車がかかると警告する。
現状の「下げトレンド」が続けば、7月20日の開票を待たずとも過半数維持が困難になる可能性が高いと須田氏は見ている。「私は難しいんじゃないかなとそんな風に見ております」と締めくくり、今後の選挙戦の展開に注目が集まる。
果たして、自民党はこの逆風の中、過半数を維持することができるだろうか――。須田氏の厳しい分析は、与党の苦境を如実に物語っている。
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