選挙ドットコム編集長の鈴木国正氏が、参院選2024の情勢を詳細に分析した。最大の注目点として「自公が過半数割れするかどうか」を挙げ、「日本の政治政局は多分大きく動く」と予測する。各政党の議席予想に加え、投票率の誤解や無党派層の重要性、そして各党の支持基盤の変化を深掘りし、今回の参院選が日本の政治に与える影響について解説した。
参院選2024:自公過半数割れの「ゴブゴブ」情勢と「無党派層」の動向
選挙ドットコム編集長の鈴木国正氏は、今回の参議院選挙の最大の注目点を「自公が過半数割れするかどうか」であると強調した。前回の参院選で合計75議席を獲得した自民党と公明党が、今回の選挙で50議席を下回る49議席以下となれば過半数割れとなり、「日本の政治政局は多分大きく動く」と予測する。この可能性は「現実的にある」とされ、鈴木氏は自公合計で過半数を維持できるかについては「ゴブゴブだと思ってる」と述べ、「4割ぐらいの確率で多分50を下回ってしまう」と分析する。
投票率については、一般的に言われる「投票率が上がると与党に不利」という見方を鈴木氏は否定する。「基本的に投票率上がると例えば自民党とか公明党の特票数も増えます」と述べ、必ずしも新興政党に有利になるとは限らないとした。また、期日前投票の増加により、投票日当日の影響力は低下しているとの見方を示す。日本の開票作業の信頼性は「極めて高い」と評価しつつも、将来的には電子投票のようなデジタル化の推進が望ましいとも語った。
各党の議席予想:自民・公明の苦戦と国民民主・参政党の躍進
鈴木氏による主要政党の議席予想は以下の通りである。
自民党(36-43議席):過去最低議席数(36議席)に近づく可能性があり、「自民党にとって厳しい選挙」と認識している。特に1人区での立憲民主党や国民民主党との接戦が議席数の幅に影響を与える。
公明党(10-13議席):都議選での予想外の議席喪失を受け、「地盤がその党本部が思ってるよりもより急速に進んでいる」と分析。比例票も前回からさらに落とす可能性があり、「政党としてのその危機になり得うる選挙」と厳しい戦いを予測する。
立憲民主党(25-31議席):1人区での自民党との競り合いが議席数を左右する。「かなりの躍進」が期待され、「相当増やせるんじゃないかな」と予測する。しかし、共産党との候補者調整が「限定的」であるため、「本当に大勝できるような構図にはなってない」と述べた。
日本維新の会(5-8議席):現在の6議席から「小さい方に割と寄ってる」と見られ、5議席に近いと予測。大阪での2議席確保も新候補への交代で票の分散リスクがあり、「楽観視はできない」とした。維新の支持層が都民ファーストや国民民主党、参政党に流れていることから、「草刈り場になっていて」支持層が流出している状況にあると分析する。
日本共産党(4-5議席):選挙区で議席を獲得できるのは「おそらく東京選挙だけ」とされ、比例票も前回衆院選から減少する可能性を指摘。都議選では「落ち込みが想定をはるかにやっぱり超える」状況であり、特に「都内全域の得票数でもかなりやっぱり厳しい結果になっている」と分析。高齢化が進む支持層と若い層への浸透不足が課題である。
国民民主党(16-20議席):現在の4議席から「ほぼ4倍」の躍進が期待され、目標の16議席達成は「いけるんじゃないかな」と見ている。都議選で無党派層の受け皿となったことが要因であるとし、自民党が1人区で苦戦するほど、国民民主党の議席が「20に近づく」と予測する。「与党を1番脅やかしているのは…国民民主と参政党の勢いはやっぱり想像以上」と評価し、「立憲民主党よりも無党派の受け皿によりなる可能性が秘めてるんで、非常に手ごい相手」であると認識する。
れいわ新選組(3-4議席):前回の衆院選の比例票から3議席は獲得できる見込み。しかし、都議選で無党派層の受け皿になれなかったことから、東京選挙区での議席獲得は「微妙な情勢」である。都議選での苦戦は、「都政における存在意義を示せなかった」ことや、「山本太郎さんが選挙活動は全面には入られなかった」ことが要因だと分析する。
社会民主党(0-1議席):政党要件をかけた戦いとなり、議席がゼロになれば国政政党でなくなる。比例票は「90数万票」とされ、100万票に届くかどうかが勝負の分かれ目となる。
参政党(3-5議席):「非常にその躍進が期待される党」であり、都議選で「我々が1番その参政に関しては予想を外してしまった」と語るほど、予想を上回る結果を出した。都議選での躍進は、「確実に無党派の受け皿になってる」証拠である。比例票は「大きく伸びる」と見られ、「300万は射程圏内」と予測する。「我々の予想を超えていく可能性すらあって」「ここは一番ちょっと私は怖いところ」と、その勢いを警戒する。地方議員が多く、ネット戦略に加え、「地上戦を組織的にやっている」ことが強みであり、代表の神谷氏の「党運営を上手にやられていて」「地域単位での活動、地上戦のうまさ」が他の新興勢力と比べても「かなり抜けている」と評価した。
無所属(6-9議席):参院選では野党が候補者を一本化して無所属候補を推薦することで、一定程度の議席を獲得できるケースがあるとし、今回も「そういう構図ができているケース」があり、「有力な方もいらっしゃいます」と予測する。
無党派層の多さと投票行動の決定要因
全国的に無党派層が「4割いる」「4割5分ぐらいまで上がってる」とされ、この層の投票行動が選挙結果を大きく左右すると鈴木氏は強調する。自民党の支持層が必ずしも自民党候補に投票するとは限らず、都議選では「自民党支持をしている人の中で、自民党候補に入れた人って6割を切ってる」と述べ、厳しい見方をする有権者が増える中で、「支持層ですら自民党候補に入れない」ケースが指摘される。
無党派層の受け皿については、都議選で都民ファーストが「無党派の受け皿」として圧倒的な支持を得たが、今回の参院選では都民ファーストが存在しないため、その票が「自民党にも入れるし、立憲とか国民にも入れる、維新にも入れる」と分散すると見られている。無党派層は「投票行動がその時の事象によって割と変わってくる」ため、選挙戦終盤まで態度を決めない傾向があると分析した。特に「女性の無党派から指示されやすい政党が後半に伸びてくる」という特徴を挙げた。
今回の参院選では、参政党の台頭により「保守の方も分裂してる」状況が指摘される。参政党が「本来自民党とか公明党に入れるはずだった票が参政党に流れる」ことで、自公の得票が減る可能性がある。共産党が立憲民主党の票を削り、参政党が自公の票を削ることで、「それぞれ…ラインが下がるので結果的にかなりいい勝負になってる」選挙区が多いと分析した。
有権者の投票の決め手は、「政党」「政策」「人物」の3つに大別される。参院選では「政党単位でのその特票になりやすい」傾向があるとしつつも、「おそらくその政党と完全に一致することは無理」であると認める。しかし、「自分に近いところに表を託していくしかない」と述べ、有権者が自身の考えに近い政党を選ぶことの重要性を説いた。
今回の参院選は、自公の過半数割れの可能性が現実味を帯びるなど、日本の政治が大きく動く転換点となるかもしれない。無党派層の動向、特に国民民主党や参政党の躍進が、選挙結果を大きく左右する要因となるだろう。有権者は、一票の価値だけでなく、選挙を通じて社会の構造や政策の動きを理解し、「解像度も上がってくる」機会として捉えることが求められている。
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